まとめ12 三日目・4
君はフィンに自身にとっての思い出の品を渡すことを決めた。
そして金属製の串と小太刀を持ったミルクを見て、自身の体を覆い隠すほどに巨大な盾を持つココアを見た。
「決めたみたいだね。良かったね3人とも、彼……君たちを鍛えることを決めたようだよ」
ネコの言葉に彼女たちは顔を見合わせる。
君はネコの言葉に何とも言えない気分を味わいつつ、武器の代金と……練習用の武器を作るための木材を購入する。
「毎度あり! 頑張りなよ君たち」
「ありがと、ネコ」
「あ、ありが、とな……」
「ありがとうございます、ネコさん」
親指を立てて応援するネコへと3人は礼を言う。
君は彼女たちを連れて家へと戻ると、先ずは食料を分類して保冷加工のされた貯蔵庫と入れていく。
それが終わると倉庫へと赴いてから彼女たちを連れて、庭へと出た。
庭に出ると君は一定距離の地面へと案山子を突き立てる。
そして彼女たちへと選んだ武器を使い、それへと攻撃するように言う。
「あたしが、さいしょ」
そう言ってミルクが前へと出ると、小太刀を構え……駆け出した。
タタッと素早く前へと出ると同時に彼女は前方の案山子へと懐から金属串を投げ付けた。
……が、何時ものように投げた結果、金属串は彼女が思っていた箇所とは違う場所へと刺さったようだった。
「……?」
どうしてそうなったのか分かっていないのか、ミルクは小さく首を傾げつつも行動を忘れては行けないと感じて小太刀で案山子を切る。
だが力が無いからか、小太刀はある程度の辺りで動かなくなった。
「にゅ? うにゅ……にゅ」
抜こうとするミルクへと君は、これで他の者に捕まり死んだと言う。
案山子から小太刀と金属串を抜き取り、ミルクへと差し出すと彼女は受け取るのだが、不服そうな顔だった。
「次はオレだな! いくぜ! ……って、盾でどうすりゃいいんだ?」
次にココアが盾を持ちながらふらふらと前へと出たが、君を見ながら首を傾げる。
君は盾を持って自由に動けるか尋ねる。
「自由に動けるか? らくしょーだ! 見てろよ、ごしゅじん!!」
ココアは自信満々に君に言うと、盾を担いで動き始める。
だが、本人は真っ直ぐ進んでいるつもりなのだろうが、斜めに進んでいた。
盾の重さにふら付いているのに気づいていないようだ。
「ぜ、ぜひー、ぜひー……ど、どうだ!」
ある程度動いてから、ココアが君を見る。
そんな彼女へと君は首を横に振り、戦いだとそれを30周以上繰り返すものだと言う。
「さん、じゅ、っしゅう……わふぅ……」
その言葉に疲れていたであろうココアが倒れる。
君は最後にフィンを見ながら、買ってきていた虫糸を渡す。
「あの、ご主人様? これは……」
練習用なら手頃な木の枝を使って、作ることが出来るだろうと君はフィンに告げる。
「それぐらいなら、問題はありませんが……いえ、今は良いです」
エルフの練習用の弓はそう作るということを知っている君にフィンは尋ねたそうな顔をするが、言葉を呑み込む。
そして彼女は弾力性の高い弓に最適な木を見つけていたらしく、君に使っても良いか尋ね、君は頷く。
君の許可を得て、フィンは選んだ木の枝を折らせてもらうと手早く虫糸を弦にして弓を創り上げる。
そして君が差し出した矢を受け取り、具合を確かめるように数回撃つ。
初めはミスばかりだった。
しばらく撃ってなかったブランクと弓にした木が馴染んでいないからだろう。
そう思いながら君は見ていると、その予想は正しかったようで段々と案山子に当たりはじめる。
「おおー」
「す、すげぇ……」
彼女の弓矢捌きにミルクとココアも驚いているのか声を漏らす。
そして彼女は矢を撃ち終えた。
「あの、どう……でしたか?」
顔の汗を拭いフィンは不安そうに君を見る。
どうやら上手く出来ていたか心配しているようだ。
なので君は十分だと言って頷く。
「あ、ありがとうございますご主人様!」
褒められた彼女はうれしそうだった。
君は弓を構える姿に、かつて見た姿を思い出す。
君は小さくあることを呟くと、彼女たちに待つように告げて部屋へと向かう。
部屋に入ると君は壁にかけられたそれを手に取ると彼女たちの元へと戻り、君はフィンへとそれを差し出した。
「あ、あの、これは……弓、ですよね?」
差し出したそれ、何の変哲もない弓を見ながらフィンは君へと尋ねる。
君は彼女に使うように言うと、彼女はそれを受け取り……弦の様子を確かめる。
そんな彼女へと君は案山子を射抜くように促す。
「わかりました。……あの、矢は?」
矢が差し出されないことに対して疑問を抱きつつ、フィンは君へと尋ねる。
引けばわかる。君は彼女にそう言う。
「引けば……? …………っっ!?」
君の言葉に従い、フィンは弦を引き案山子を狙う。
すると引かれた弦へと何時に間にか半透明な矢が番われており、それを見た彼女は驚きに眼を見開いた。
だが、君に言われたのをやめるわけにはいかない、そう考えたのか彼女は君に言われるがままに矢を放った。
半透明な矢は放たれ、グングンとスピードを上げ……案山子の体に刺さるのではなく、貫いた。
「お、おぉー!?」
「わ、わふぅ!?」
その光景にミルクとココアも驚いているようで尻尾をピンと立てている。
一方で矢を撃ったフィンは固まっていた。……が、すぐに君へと視線を移した。
彼女が君に向ける視線、それは疑惑と怒りだった。
「ご主人様……、何故……何故あなたがこれを持っているのですか……?」
何のことだと君はフィンに言う。
「誤魔化さないで答えてください! これは、この弓は……わたしの、わたしの……母の物ですよっ?!」
認めたくない事実を自分で叫び、フィンはポロポロと涙を零し始める……。
その様子にミルクとココアが心配そうに見るが、彼女の気配から近づこうとはしない。
だから2人は不安そうに君を見る。
それを見ながら、これ以上は無理かと呟き、フィンを見ると君は口を開く。
自分はフィンの母親、ルーナと知り合いであったと告げる。
そして彼女の銀色の髪以外がそっくりだったフィンが彼女の娘であることに気づいていたとも言う。
「だから、あんなにも……ご主人様はわたしのことを……」
エルフの生態を知っていて、自分に優しくしてくれていた。その理由に彼女は気づく。
「最後に……母と、ご主人様はどんな関係、だったのですか? まさか、ご主人様はわたしの……」
彼女が何を言いたいのか。それが理解出来る。
だから君は何も言わず、ゆっくりと口を開く。
自分とフィンの母であるルーナとの関係、それは……。
冒険の相棒だった。
→初恋の人だった。
→命の恩人だった。
→結婚相手だった。
君はフィンへと告げる。
自分にとって彼女、ルーナとは……命の恩人であり、初恋の人であり、そして……最愛の妻だったと。
「っ!! ま、さか……本当に、ご主人様は……わたしの?」
フィンの戸惑うように尋ねてくる言葉に、君は首を横に振り……自分はフィンの父親ではないと言う。
君の言葉に、フィンはホッと安堵した表情と同時に寂しそうな表情を見せた。
「そ、う……ですか。あの、母は……どうなったのですか?」
そう言ってフィンは母親の無事を君に尋ねる。
だが君は首を振り、分からないと言った。
そして、自分にとってルーナは、そういった対象だったが……彼女は。
彼女の本心はどう思ってたかは分からない。
と、フィンへと言う。
それを話す君の表情は寂しそうであり、辛そうに見えた。
そんな君を心配そうにミルクとココアが見つめており、フィンも気まずい表情となる……だがすぐに君を見た。
「ご主人様、迷惑でなければ……母との思い出を、聞かせてください」
来るだろうと思っていたフィンの言葉に君は頷き、君は口を開こうとする……。
だが、長くなるだろうと考え、彼女たちへ中に入ってお茶しながらにしようと言う。
「わかりました。……わたしの知らない、母の話を聞かせてください」
そう言ってフィンは家の中に入り、ミルクたちも入っていく。
それを見ながら、君も中へと入り……お湯を沸かし始める。
そしてポットに茶葉を入れ、沸いたお湯を注ぎ蒸らし、カップに注いでいく。
室内にお茶の香りが満たされ、木皿へと菓子としてのクッキーを置いてテーブルに置いてから、君は語りはじめる。
自身とルーナとの出会いと別れの物語を……。
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