まとめ19 四日目・2
練習武器作りから始めることにした。
彼女たちの体力作りを行うことにした。
→彼女たちの勉強を行うことにした。
君は先に彼女たちの勉強を行うことにした。
それをココアとミルクへと言うと、彼女たちの反応は両極端だった。
「べんきょー? すわってする? うぇ~~……オレいやだー!」
「お勉強? もじを覚えれるの? だったらする、あるじ教えて」
ウェ~という表情を浮かべるココア。
表情は変わっていなくても青い瞳をキラキラと輝かせるミルク。
そんな2人を見ながら、君は昨日ネコの店で購入した読み書きの道具を取り出す。
それは書いた文字を魔力によって消すことが出来る板で、付属品の読み書き帳を見ながら文字を覚えるという物だった。
君はそれを2人に説明する。
ココアは興味が無いのか頬杖をつきながら、速く外に出たいという雰囲気をかもし出している。
ミルクは前から学びたいと言ってたことを表すように真剣に君の話を聞いていく。
そして話を聞き終わりミルクは読み書き帳を一枚開く。
「あるじ、これが初めの言葉?」
彼女の言葉に君は頷く。
君の言葉を聞き、ミルクは初めて握る炭棒を布越しにギュッと握り締めながら、書かれている文字を板に書いた。
書かれた文字はたどたどしく、大きさも均等ではない。
けれど彼女が初めて書いた文字だ。
だから君は、良く出来たねと声をかけながら頭を撫でる。
「にゅう…………」
撫でられたミルクは褒められて撫でられた嬉しさ半分、上手に書けなかったことに対する悔しさ半分といった表情を浮かべつつ、複雑そうに君に撫でられる。
「ほ、ほら、ごしゅじん! オレも書いてみたっ! どうだっ!?」
突然、ココアもやる気を出し始めたのか板に書いた文字を君に見せる。
多分だが褒められて撫でられるミルクを見て羨ましく思ったのだろう。
そう思いながら君は彼女が書いた文字を見る。……が、急いで書いた上に適当に書いたのがまるわかりな物だった。
君は微笑みながらやり直しを言う。
「ごしゅじん、なんでほめねーんだよっ! ちゃんともじ書いたんだぞ!?」
やり直しを言われ、ココアは犬歯が見えるほどに大きく口を開けながら吠える。
どうやら彼女は適当に書いて褒められると思っていたようだ。
そのことに君は気づき、怒りそうになるのを堪えて褒めない理由を言う。
「え? もじがちゃんと書けていない? ……ちゃんと書いたら、褒めてくれるのか?」
きょとんとしながらココアが尋ねると、君は頷く。
すると彼女はコクンと頷き、椅子に座りなおしてから頑張って始まりの文字を書いていく。
隣ではミルクが同じ文字を上手く書けるように練習しているのが見える。
丁寧に丁寧に書こうとしているのが伝わってくる。
「ごしゅじん、これで……いいか?」
そんなミルクを見ていると、隣のココアが書き終えたようで不安そうに君を見る……。
君は彼女が書いた文字を見た。拙いながらも今度はちゃんと文字として分かるように書いてあった。
彼女の文字に君は頷き、そのふわふわな髪に手を置き優しく撫でる。
「わ、わふぅ……♪」
撫でられる彼女は嬉しさと恥かしさが交じり合いつつも笑顔となった。
けれど嬉しいようで、尻尾はブンブンと左右に揺れている。
そんな彼女たちが文字の書き取りをしているのを見つつ、君はこの間に練習用の武器を創ることにした。
君はフィンに2人を見ていることを頼み、庭へと出る。
出て行く君をミルクとココアが行かないで欲しいのか、ジッと見ているのが見えたけれど……少し我慢してもらおう。
そう思いながら君は庭の隅に造られた材木置き場へと向かう。
むき出しの柱に庇が伸びているだけの場所。そこには冬の暖炉用の薪にするための材木が大量の置かれている。
その中で君は練習用の剣を作るのに適した木材を見繕う。
硬く折れ難い木、それを探すとあっさり見つかった。炭用に用意していた木材だ。
君はその中からミルクの小太刀に近いサイズの物を見繕い、加工を始める。
八分割に切り、そこから折れたとき用の替えとして数本作る。
君はそう考え、行動する。
手早く八分割し、分かれた木を小太刀の大きさに削り取っていく。
君は持っている技術と魔法を駆使して、割られた木を刃の形に変えていきツルツルに磨いていく。
最後に割れないように液体を塗って乾燥させる。
自然乾燥を行うために立てかけられた木刀を見ながら君は頷く。
上出来だ。
君はそう思いながら、若干自画自賛しつつ盾を造り始めようとする。……だが、アレを持ったまま運動させたほうが良いのではないだろうか?
そんな考えが君を襲うが、ココアに何も用意しないのは可哀想だ。
というよりも絶対にごねる。
それを理解しているから、君は大盾を作る。
木を数枚貼り付けていく、あの大盾の半分の重さの木の大盾だ。
それをブンブン振り回せるようになったら、あの大盾も上手く扱えるようになるだろう。
そう思いながら君は創り上げる。
……そういえば基礎体力はあるのだろうか?
君は不意にそんなことを思い始めた。
体力が無くなったら色々と困る。
……ふと、昔ルーナが君を鍛えるときに行った体力作りを思い出す。
それは重量のある物を担がせて走るというものだ。
だがそれを彼女たちに行っても良いだろうか? 君はそんな疑問を抱きながら考える。
彼女たちに、それを行わせるべきかどうかを……。
君は……
→体力作りを行う。
体力作りを行わない。
彼女たちの体力作りを行うことにした。
けれど重い物を持たせながら歩かせるなんて、色々と酷い図に見えるだろうし……自分も気になってしまう。
君はそう考えつつ、どうにか出来ないかを考える。
…………ふと、君はかつて共に冒険をしたパーティに居た細工師のことを思い出した。
その細工師はパーティの装備を調整する鍛冶師とコンビを組んで、仲間の手助けを行っていた。
鍛冶師が作った装備に付与魔法を取り付けて、従来の防御力を更に底上げしたり、耐性を付けたりしていた。
君はその付与魔法というものが興味深かったので、少しだけ細工師にやりかたを教えて貰った。
『いいかい? 付与ってのは簡単なんだよ。例えばこのイヤリングには防御力向上の効果を付けてある。見てみてよ』
そう細工師は言って君にイヤリングを見せ、そこに描かれた表と裏の記号を見せる。
『これはね、表には『防御力』裏には『魔力』と付けてあるんだ。
つまりは魔力を消費する代わりに防御力を向上させるって言うことなんだよ。
少しの魔力を消費してその効果を与えるっていうわけ。わかる?』
それを聞きながら、そのときの君は細工師の言葉に頷いていた。
そして細工師にレクチャーをしてもらってあるアクセサリーを作った。
それは『魔力』を消費して『気配を薄くする』という、偵察には打って付けのアクセサリーだった。
そのあとも君は度々やりかたを教えてもらい、細工の手伝いをしたりしていた。
……鍛冶師の視線に負けて、彼の手伝いもしたりもした。
とりあえず、鍛冶設備がないので鍛冶で何かを造るのは無理だ。
……というよりも手伝いしかしていないし、何年も打っていないので素人同然だろう。
そう思いながら、君は周囲を見渡す。
……木材しかない。いや、木材がある。木材を使って、付与魔法を使えば良いのでは無いか?
君がそう考えるとあとはもう簡単だった。
手早く木材を削り出し、腕輪を3つ作る。
それへと記号を刻み込み、付与を行う。
『消費魔力』に応じて、『重量』が『増加』するという付与を。
試しに君は腕輪を付けて、魔力を少しだけ込めてみた。
すると君の思惑通り、体が重くなるのを感じた。
今度はいま現在彼女たちが出せるだろう魔力量と同じくらいを込めてみる。
先程よりも体が重くなるのを君は感じ、それの倍ぐらいの魔力を込めてみたら……木の腕輪は壊れた。
その瞬間、君の体は軽くなるのを感じた。
……とりあえずは彼女たちが練習をする前に庭を走ってもらおう。
その際、この腕輪を付けてもらってが良いだろう。
君はそう納得しながら、腕輪を作りなおす。
出来上がった腕輪3つを持ち、彼女たちの元へと戻ると君に気づいたミルクとココアが文字が書かれた板を手に近付いてきた。
「あるじ、どう? うまくなった?」
「ごしゅじん、どうだ! じょーずになっただろ?!」
褒めて欲しい、そんな感情が伝わるように尻尾がブンブンと振られる。
それを見ながら君は文字を見ると、何回も書かれた文字が見えた。
君は2人に、頑張ったねと言って優しく頭を撫でる。
「うにゅぅ……♥」
「わ、わふぅ……♪」
撫でられる2人は嬉しそうに表情を緩める。
そんな2人へと、君はそろそろ外に出ようかと尋ねると彼女たちは頷いた。
体を動かしたかったのだろうと思いつつ、君は彼女たちと共に庭へと出ると彼女たちへと腕輪を差し出す。
「ご主人様、これは……付与、ですか?」
フィンは刻み込まれた記号にピンと来たのか尋ねてきた。だから君は頷くとフィンにも付けるように言う。
君の言葉に従い、彼女たちは腕輪を嵌めた。
それを見てから、彼女たちに魔力を放出するように言った。
「ん、わかった。…………っ!?」
「まりょくを? わかった! はぁ~~……ふぎゃんっ!?」
「これは……、体が重く感じますね……」
突然圧し掛かった重量に耐え切れず、ミルクは膝をつき……。
ココアは地面に這いつくばった。
3人の中で魔力を扱えるフィンは慎重に行動をしたのか、体に来る重さに表情を顰めるだけで済んだ。
君はそれを見届けながら、膝をついたミルクと這いつくばるココアを見る。
……ワンピースが捲れて下着が丸見えだった。ああ、運動用の代えのきく服を買わないと。そう君は考える。
「あるじ、立てない……」
「ごしゅじん……。お、おもい……」
君に助けを求める2人の声を聞きながら、君は魔力の放出を止めるように言う。
君の言葉を聞いて、2人が魔力の放出をやめると2人はゆっくりと立ち上がった。
そして君を見ながら、ムスッとしていた。
「あるじ、ひどい……」
「ごしゅじん、ひどい!」
「ご主人様、魔力を込めるとどうなるかぐらい言っておいて欲しいです。一気に込めたら酷いことになりますからね?」
ニコニコと微笑みながら怒るフィンを見て、ココアたちを見て……君は頭を下げた。
次からは気を付けよう。君はそう心に誓う。
それから君はきちんとこの腕輪を作った理由を彼女たちへと説明する。
彼女たちは君の言葉に納得し、頷く。
「ご主人様、いい考えだと思います。これは体力作りだけではなく、魔力の放出を調整するのに最適でしょう。……ですが、初めは本当に難しいと思いますよ?」
フィンの言葉に君は納得する。
次に作るときはもう少し考えて作るべきだろう。
そう思っていると、ミルクとココアが君をジッと見て……決意したように2人が顔を見合わせてから頷く。
「あるじ、あたしはこれが良い。はじめはつらいとおもうけど、なれれば問題ない」
「オレもだごしゅじん。こっちのほうがいい!」
そう言って、ミルクとココアは魔力を放出したのか、重さに体を沈ませる。
それを見たフィンが止めようとするけれど、君は制止する。
「むずかしいし……つらい。でも、うまくなるのがわかる」
「ああ、軽くなっていったら魔力が上手くつかえてるんだろ……? だったら、これがいい……!」
彼女たちの言葉に困ったようにフィンは君を見る。
君はわかったと口にし、しばらく地面に座り込む彼女たちを見ていた。
けれど時間が経っていくと練習時間も無くなるし、彼女たちの魔力もすぐに底をつくだろう。
だから君は一度止めるように言って、彼女たちと共にこれからいつも走る道を歩く。
屋敷から庭の外周を回る道。
距離にして二キロほどの道のりを君たちは歩く。
フィンは通い慣れているのか、庭や畑をチラチラと見ている。
ミルクとココアはここまで来たのは初めてだからだろうか、キョロキョロと視線を動かし続けている。
君は彼女たちに、これから走る道だともう一度言う。
「ん。きれい……」
「あ、おいしそうな実がなってる!」
「ココアちゃん。途中で食べちゃダメですよ?」
「わ、わかってる!」
彼女たちの会話を聞きながら、君たちは途中休憩を挟みながら道を回り終えた。
出発点となっていた庭の入口まで戻ると、君は彼女たちに初めの頃は半分で抑えるよう言う。
半分、つまりは庭と畑の間に区切られた道を通ってこちらへと戻れば良いと君は言っているのだ。
君の言葉にココアは不満そうに口を膨らませるけれど、彼女はすぐに気づくだろう。
あの重さでこの全周を走るのは無理だということに……。
とりあえず現状は重さを増した状態で走ることだ。
君はそれを考えながら彼女たちを見る。
同時に君は不安を抱く。
……彼女たちは強くなるのだろうか?
いや、強くしないと行けないのだ。
そう思いながら君は改めて彼女たちを見て、静かに決意したのだった。
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