まとめ17 三日目・6

 彼女に向けて、君は美味しいよ。と口にした。


「そう、ですか……。そう言ってもらえて嬉しいです」


 君の言葉にフィンは嬉しかったのか、頬を染めつつ微笑む。

 そんな彼女の表情に君はどきりと胸が昂るのを感じた。

 いくら女に餓えている生活を送っているとしても、彼女を大事にしようと決めていた。

 だからそんな風に彼女を見てはいけない。

 そう思いながら、君は頭を振る。


「あ、あの、どうかしましたかご主人様?」


 突然黙った君にフィンが心配そうに尋ねる。そんな彼女へと君は何でもないとごまかしつつ、ハンゲショウのツインテールを食べていく。

 すると君が食べて安心をしたのか、ココアとミルクもハンゲショウのツインテールを食べ始める。


「へんなしょっかん……おもしろい」

「んー、オレはもうちょっとかみごたえがほしいなー」

「懐かしい味です……」


 モキュモキュと食べていく彼女たちを君は微笑ましく見ている。

 だが、何というか……彼女たちの一挙一挙の動作を目で追ってしまう。

 ツインテールから零れたスープがミルクとココアの胸元を濡らし、彼女たちの肌へと張り付くのを見てしまうし、ちゅるちゅると食べるフィンの口元を見てしまう。

 ……興奮、そう興奮しているのだ。そう君は理解してしまう。

 その証拠に君はちょっと立つに立てない状態となっていた。

 だが何故こんなことになったのだろうか? そんな疑問を抱きつつ、原因であろうそれのことをフィンに尋ねることにした。


「え? これがどんなときに出たのか、ですか? えっと、里の催しで出ていましたよ?」


 キョトンとしながら、フィンは君に返事を返す。

 そして気づいたが、両隣で食べていたはずのココアとミルクの君を見つめる視線が何というか色気を感じていた。

 きっと彼女たちも頬を染めて、目をトローンとさせているに違いない。

 見てしまったら君はきっと我慢できないだろう。

 そう思いながら、君はフィンに具材の違いがないか尋ねる。


「ぐ、具材の……んっ、ちが……っい、ですか……ぁ?」


 彼女も自分の体に違和感を感じ始めているのだろう、言葉の端端に耐える声が洩れ始める。

 彼女の顔も赤くなっていて、何処か蕩けているに違いない……。

 そう思っていると彼女は語る。


「た、しか……、わたし……んやっ、子供や……はぁ、独んんっ……! のひとはぁ……、こんなぐざ……ぃ、でした……ぁ!」


 彼女が語る具材、というよりもトッピングを聞き、それが組合せで鎮静作用を促す効果があることを思い出す。

 それを理解し、新婚や恋人たちにはこんな具材だったかと聞く。


「はぁ、はぁ……は、い……。こんにゃかんじ、でしたぁ……♥」


 何というか本当に呂律が回らないくらいになりながらフィンが君の問い掛けに答える。

 ……君が言った組合せ、それは組合せによっては受精確率を高める効果が期待される物だった。

 君はハンゲショウのツインテールの効果作用を理解した!

 一言で言うならば媚薬と呼ばれる物だった。

 体が興奮してしまうのだから、凍えた体を温めるとかいい効果もあったりするだろうが、基本的な効能は男女の性交の手助けなのだろう。

 つまり彼女がこれを食べていたという催しは、夫婦や恋人同士が子作りをするための前段階の祭りだったのだ。

 当然、同じ物を食べるけれどそれについている具材をきちんと食べれば、ちょっとポカポカするぐらいだったのだろう。

 そしていま君たちはそんな具材も無い、ハンゲショウのツインテールを食べ……悶々としてしまっていた。

 とりあえず鎮静剤自体は乾燥した薬草が倉庫の中にあるから創ることは可能だ。

 けれど立ち上がった場合、君は彼女たちに見られるだろう。

 そしてそれを見た瞬間、理性のタガが外れかけてる彼女たちは何をするか分からない。

 だが、動かなかった場合も彼女たちが何をするか分からない……。

 正直お手上げだった。

 しかも君の中の男が襲っちまえよ。と囁いてもいる。

 色んな意味でやばいと君は思った。

 動いたら襲われる。動かなくても襲われる。

 歳の差で君は自制をしているが、もし襲われた場合……止めることなんて厳しいだろう。

 それどころか襲ってしまいそうだ。

 そう思いながら君は彼女たちの様子を見る。


「あるじ、好き……♥ すき、すき、すき……♥」


 ふーふー、と荒い息を吐きつつ、ミルクは君をジッと見つめながら飛びかかろうとしている。


「ごしゅじん、ごしゅじん、ごしゅじん……んっ♥」


 両手を挟んだ内股をもぞもぞと擦り合わせながらココアがモジモジしている。


「ご主人様、おとうさん、ぱぱ……♥」


 とろんと目を潤ませながら、フィンが君のことを呟く。

 彼女の中で君はどんな立ち位置なのだろうか?

 そんな疑問を抱きつつ、君は思考する。

 ここから倉庫まで逃げて、薬草を調合して飲んでも大丈夫だ。

 諦めて彼女たちの体に溺れるのもありだろうか……。

 それとも彼女たちと自分に眠りの魔法をかけて、効果が切れるまで眠るか?

 きっと翌朝まで眠ったら、効果が切れるに違いない。

 そんな期待を抱きつつ君は……、


   倉庫まで逃げて、鎮静剤を作る。

   欲望に負けて、彼女たちを味わう。

  →全員に眠りの魔法をかけて、朝まで眠る。


 眠りの魔法を使って強制的に眠らせることを考えた。

 考えたからには即実行、そう思いながら君は意識を集中させて魔力を高める。

 そんな君の様子など露知らず、発情している彼女たちは椅子に座り目を閉じている君へと群がってきた。


「あるじ……、しゅき♥ すごくしゅき♥ だからえっちしよ」

「ごしゅじん……オレ、意地っ張りだからすなおになれない。けど、いまならいっぱい好きだっていえる……! ごしゅじん、ごしゅじん、ごしゅじん……♥」


 甘い声を上げながら、君の両隣……というよりも両腕に抱きつくようにして、ミルクとココアが自身の体を摺り寄せる。

 やわらかくいい匂いがする。

 ぷにょんぷにょん、ふにょんふにょんと君の左右の腕にやわらかおっぱいの感触が上下左右する。しかも、彼女たちの甘い吐息付きのだ。

 集中が乱れそうになる。

 だが自分を見失っては行けない。

 そう君は自分に言い聞かせ魔力を高める。

 そんな中、股に息が感じられ……若干嫌な予感を感じながら、見た。

 テーブルの下を潜り抜けたフィンがはぁはぁと荒い息を吐きながら、君の股の間に顔を出していた。

 当然、君は丁寧な口調で何をしてるのかをフィンに尋ねる。


「ぱぱの、いいにおい……♥ あのゲスよりも、ずっとずっといいにおい……はぁはぁ♥」


 彼女は君の声を聞いちゃいなかった。

 瞳の奥に見える瞳孔がハートな形を創っているように見えて、君はルーナが冗談交じりに言ってた言葉を思い出した。


『性に興味が無いエルフなんだけどね、興奮し過ぎて頭の中がエロ一色になってたら、エルフっていうよりもエロフよねー。あはは♪』


 あのときは笑い合っていたが、アレは的を得ていた。

 今のフィンはまさしくエロフ! エロの権化エロエルフ略してエロフだ!!

 これはマズい、そう考えながら君は必死に魔力を高める。

 その証拠にフィンは君のズボンの結び紐を外し、ずり下ろそうとする。

 だが、椅子に引っ掛かり上手く下ろせないようだ。


「ん~……ぱぱぁ、ズボン切っちゃうねぇ?」


 そう言って、フィンは君の穿いているズボンを先ほど買ってもらったナイフで切り始める。

 ナイフは君のズボンの股間部分をあっさり切り裂き、興奮具合が分かる物が自由を得たように高々とそそり立――それをフィンが確認するよりも速く君は高め終えた魔力を一気に開放し眠りの魔法を唱える。

 すると君を中心に家の中へと眠りの魔法が発動した。


「にゅ……うにゅぅ……」

「わふ? わ、ふぅ~~……」

「はぁはぁ、ごしゅじんさま……ごしゅじんさま……ごしゅじんさ……ま……」


 ミルクとココアはあっさりと眠りに落ちたのだが、フィンはエルフという種族のため抵抗が高かった。

 眠りに落ちた彼女たちを見てホッと一息を吐きつつ、自身にも襲いかかる急激な眠さを感じ……君は逆らうことが出来ずに眠りへと落ちていった。

 ……こうして、今日という日は終わったのだった。

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