まとめ38 閑話・異界にて

 異界への扉をくぐってから、どれだけの月日が経ったのでしょうか?

 数日? 数ヶ月? 数年? 分かりません。

 当たり前です。戦い続けないとわたしたちはそこに生息しているモンスターたちに呆気なく倒されてしまうのですから。

 初めは怖く震えていましたが、今では……。


「フィンねぇ、獲物」

「ありがとうございます、ミルク。ココア、ご飯ですよ」

「ごはんっ、あー腹へったぁ!!」


 ミルクが狩ってきた獲物を手早く調理(とはいっても塩や香辛料を振って焼いただけ)をしてココアを呼びます。

 呼ばれた彼女はお腹を擦りながらこちらへと来ます。

 とりあえず、2人の姿を見て……数日ではないのは確かだと改めて思いました。

 あと、数ヶ月でもないか……もしくは子供特有の急成長か……。

 そんなことを思いながら、わたしたちは今日の食事である骨付き肉に車座になって噛み付きます。

 食べ物を選べる自由なんてもうとっくにありません。


「もぐもぐ……そういえばさ、フィンねー」

「食べながら喋るのはダメですよ」

「もぐもぐ……ごくん。それでさ、フィンねー」

「なんですか?」

「オレたちって何時帰るんだっけ?」

「……そうですね。マジック様は自動的に迎えに来るって言ってましたが……」

「向こう、何日経ったのかな……」


 …………ミルクの言葉に、わたしは黙ります。

 少なくとも彼女たちの姿を見れば数日や数ヶ月なんて訳がありませんよね、やっぱり……。

 こちらと向こうの時間は違うと先に言われていましたが、まさかここまでなんて……。


「はやく、かえりたい……」


 ぽつりとココアが呟きます。

 ですがその言葉にわたしは返事を返しません。だってわたしも帰りたいですが、言ったらご主人様に会いたくて泣いてしまいますから。

 でも、同時に元の世界に帰ったら本当にご主人様にエッチなことをしてもらいましょう……。

 だってもう……我慢できませんからね。

 ココアとミルクも同じようですし……ふふふ。

 ――ギィ。


「「「え?」」」


 そんなことを思っていると懐かしい音が聞こえ、振り返ろうとした瞬間……何かに引っ張られました。

 そして気が付くと、わたしたちは久しぶりに見る景色に目を奪われていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る