まとめ3 二日目・1

 鳥の鳴き声が聞こえる。

 どうやら君はいつの間にか眠っていたようだ。

 軽い欠伸をしながら、顔を起こすと……恥かしそうに君を見るフィンの姿があった。


「あ、あの、その……も、申し訳……ありませんご主人様」


 どうやら昨日自分よりも先に寝てしまったことを謝っているようだ。

 そんな彼女に気にしないように言いつつ、立ち上がると背を伸ばす。

 パキパキと君の体が音を立ててから、君はフィンを見て良く眠れたか尋ねる。


「そ、その……はい、眠れました。ありがとう、ございます。ご主人様……」


 そう言ってフィンは君に頭を下げる。

 そんな彼女に気にしないように言いつつ、立ち上がると背を伸ばす。

 パキパキと君の体が音を立ててから、君はフィンを見て良く眠れたか尋ねる。


「そ、その……はい、眠れました。ありがとう、ございます。ご主人様……」


 そう言ってフィンは君に頭を下げる。

 気にしなくても良いよ。君はフィンに笑いかけて立ち上がると朝食にしようかと言う。

 フィンは断るわけには行かないと理解しているようで、頷くと君の後ろをついていく。

 付いてきた彼女を席に座らせ、君は簡単に朝食を作り彼女とともに食事を取る。

 食事を終えて、少し休憩してから君は言う。

 それじゃあ、服を買いに行こうか。と。

 君の言った言葉が理解出来ていないのか、フィンはポカンとした表情を浮かべながら君を見る。

 だがようやく頭が追い付いてきたのか、彼女は驚いた。


「ご、ご主人様。わたしに服なんて……!」


 戸惑う彼女へと君は手を向けて制止させる。

 これは自分がしたいことだから、気にしないで欲しい。君は彼女にそう言うが、彼女は納得していない様子だった。

 そんな彼女を連れて君は雑貨屋へと向かって歩く。……フィンの足を見ると、裸足だったことに気づき、靴下と靴も与えることを決めた。

 そして2人が移動をして、辿り着いたのは一軒の店。

 雑貨屋『クレセントムーン』、そこは猫の獣人の店主ネコさんが経営をする雑貨屋だ。

 そこは冒険者のための武具や回復薬が豊富で、一般人のための服なども取り扱っている。

 ……顔見知りの裏の人には理不尽なアイテムも容易出来るらしいが君はまだ勧められたことがない。

 入口の扉を開けると、チリンチリンと扉に付けられたベルが鳴る。


「いらっしゃい、珍しいねこんな朝に……おや、その子は?」


 店主のネコが君に笑いかけたが、すぐ後ろにいるフィンに気づき、君に尋ねる。

 君はフィンを昨日買ったことを告げ、服と着替え……それと日用品が欲しいと言う。


「見たところ、使用人として購入している。ってところだね? それじゃあ、要るのはメイド服か」


 客の考えを即座に理解し、ネコは満足に頷くとメイド服を3点取り出してきた。


「とりあえず、今の所用意出来るのはこの3着だね。ああ、試着は構わないよ」


 そう君へとネコは言う。


「下着はあんたのことだから、純白とかボーダーとか考えてるんだろ? 用意するからその間に着せるなりして考えておきな」


 そう言って奥に引っ込むネコを見てから、出された3着のメイド服を見る。

 1つは基本的なロングスカートのメイド服。

 1つは動き易いミニスカートのメイド服。

 最後は……。

 黒色の水着と呼ばれる物だ。

 どう見てもこれはメイド服ではないだろう。

 そう思っているとネコが戻ってきて、君に言う。


「ああこれは極東のほうで流行ってる水着タイプのメイド服らしいよ。でも、これってどう考えても着てるほうも着せてるほうも恥かしいよね?」


 呆れたようにネコは言う。

 それを聞きながら、君はフィンがこれを着た姿を夢想し……いや、待て。

 試着はしてもいいと言う話だ。

 ならば一度着せてみるべきだろう。

 着てみない限り着心地は分からない物なのだから。

 そう考えながら君はフィンに……。


  →全部のメイド服を試着するように言う。

  →ロングスカートのメイド服を試着させる。

   ミニスカートのメイド服を試着させる。

   メイド水着を試着させる。


「あの、ご主人様……?」


 黙ってメイド服を見続ける君に心配そうな表情でフィンが声をかける。

 しまった。どうやら想像し過ぎていたようだ。

 そう考えながら君はフィンを見ると、優しい声で……ここにある3着全部を試着してくれないかと言う。

 そんな君へとネコは笑みを向ける。


「流石だね。それじゃあ、更衣室が奥にあるからそこで着替えてくれて構わないよ。あと、はい下着。んじゃ、お楽しみに~♪」


 ニヤニヤと笑いながらネコが君を見ながら手を振る。

 その笑みから逃げるかのように君はフィンを連れて店の奥の更衣室へと入る。

 更衣室の中は、着替えのためのカーテンと椅子が数脚と小さな台、それと大きめの姿見がある簡素な物だった。

 けれど着替えのために用意されているためそれで十分だろう。

 そう思いながら、君はフィンへと下着を差し出す。


「あ、あの、これって……下着、ですか?」


 彼女の言葉に頷いた君だが、エルフは下着を穿くのだろうかと不安になり尋ねる。

 すると彼女は顔を真っ赤にして、


「は、穿きます! エルフだって、下着は穿きますから!!」


 と自分たちはちゃんと穿くことを告げる。

 それを聞き、君はホッと安堵すると彼女に下着とメイド服を差し出した。

 下着を穿いてから、順番にメイド服を着てその姿を見せてくれないか?

 君が言うとフィンは微妙な表情を浮かべたが、頷いた。


「わかりましたご主人様。それでは着替えますので、少し待っていてください」


 彼女は君にそう言うと、メイド服を持ってカーテンの向こうへと入る。

 そして、ぱさりという音とともに足首が覗くカーテンの下にフィンが着ていたワンピースが落ちるのを見た。

 光を浴びて映るカーテンはフィンの体の影を映し出し、彼女の動きを表す。

これは……パンツを穿いているのだろう。次に下に着るシャツを着ているのか両腕を上に伸ばしている。

 それが終わり、今度はメイド服を着始めていた。

 直に見ずにカーテン越しに見るその光景はとても素晴らしい。そう君は満足していると、カーテンの向こうからメイド姿のフィンが出てきた。


「あの、ご主人様。どう……でしょうか?」


 着慣れていない格好だからか、彼女はモジモジしながら君を見る。

 君はよく見たいから、台の上に立つように指示するとフィンは物凄く恥かしいようで、か細い声で「わかりました……」と言って台の上に立った。

 それを見てから君は、フィンのメイド姿をマジマジと見始める。

 彼女に一番最初に着てくれるように頼んだロングスカートの一般的なメイド服だ。

 黒いエプロンドレス、白色のエプロンと金色の髪に乗っているホワイトブリム。

 まごうことなき正統なメイド姿だ。

 その姿に満足しながら、ゆっくりと回ってくれるよう頼むとフィンは何も言わずにゆっくりと君にその姿を見せるように回る。

 それを見ながら、美しい、素晴らしい。と君は彼女を褒める。

 背中の結ばれたエプロンリボンは結び慣れていないのか、かたがっている。

 だがそれが良い。

 最高だ、フィンが可愛い。


「~~~~~~っ!!」


 君が興奮しながら言うに連れて、フィンは顔を真っ赤にして何とも言えない表情を浮かべていた。

 しばらくマジマジと見続けていたが、限界がきたのだろう。


「つ、次のメイド服を着ますっ!!」


 そう言って、彼女は逃げるようにカーテンの奥へと逃げていった。

 彼女のメイド姿を見て興奮し過ぎたかと君は反省する。だが、可愛かったのだから仕方ないだろう。

 そう思っていると、着替え終えたフィンがカーテンから顔をだした。

 だが、顔だけだ。


「あ、あのご主人様……その……ぜったい、絶対に下から覗きこまないでくださいっ、お願いします!」


 君に念を押すようにフィンは君にお願いする。

 その願いを聞き届けながら、君は頷く。

 君の頷きにホッとしながらフィンはカーテンを開いた。

 瞬間、君は彼女の下半身に視線が行ってしまった。

 当たり前だ。綺麗で長く白い足が君の目に飛び込んできたのだから。

 恥かしそうに歩くたびに脚から少し上に見えるスカートがヒラリヒラリと揺らめく。

 ミニスカートタイプのメイド服に身を包んだフィンの姿は、とても魅力的すぎた。

 君の視線を感じているのか、フィンは頬を染める。

 その視線に耐えるようにしながら、フィンは台の上に立つ。


「あの、恥かしい……です」


 モジモジしながらフィンは君の視線から隠れるように体を曲げる。

 けれど遮る物が無い台上は彼女の仕草をアピールへと変える。

 そんな彼女を見ながら、先ほどのメイド服との違いを君は見る。

 先ほどのメイド服は可憐、清楚といった表現が良いように思えた。

 それに対しこのメイド服は活発、やんちゃといった感じに感じられる。

 エプロンドレスのスカートが短いぶん走り易いように見えるし、エプロンもヒラヒラとした飾りが付いている。

 所謂酒場の店員が着るメイド服だ。


「あ、あの……ご、ご主人、さま……」


 他にも違う点がないかと探していると、上のほうからフィンの恥かしがる声が聞こえ、上を見ると……彼女の純白の下着に包まれた股間が見えた。

 素晴らしい、としか言いようがなく……最悪なことに君はそれを呟いてしまっていた。


「ご、ごごっ、ご主人様のバカァァァァァァァッ!!」


 無意識の反応だったのだろう、君の言葉に反応したフィンの膝が君の顔に命中した。

 良い膝だ。そう呟きながら君は倒れた。


「あぁ!? も、申し訳ありません。ご主人様、ご主人様ーーーーっ!!」


 慌てるフィンの声を聞きながら君の意識は落ちた。

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