04|『生みの苦しみ』がシアワセな理由
※先日、『スランプの突破口』という《企画》でエッセイを書かせてもらったとき、ふと、でもまてよ?『スランプ』になるって、本当はシアワセなことだよね?…と思ったので、今回は、マジメにそのことについて書いてみます。
***
結論からいうと―――
物語をつくっていく中で、うまく話がすすまなかったり、設定で悩んだり、演出に苦労したり、セリフの順番で悩んだり、はたまた、頭ん中で思い描いてるような文章が書けなかったり…そういうすべてのことを『生みの苦しみ』といいますが、いま、その苦しみで悩んでいるあなた(私)は、とってもシアワセです。と、いいたいのです。
どうしてって、いま、あなたは、小説とがっつり向き合って、がっつり苦しむ時間が与えられているからです。
作家にとって、いちばんの苦しみは、物語と向きあえない…向き合う時間がないことだと、私は思うからです。
私は1年前―――その苦しみにもだえて、息も絶え絶えになっていました。
このエッセイの第1話で書いてますが、ホテルの仕事が忙しすぎて、物語と向き合う時間がゼロになってしまったときは、本当に狂ってしまうのではないかと思うぐらいに、心が悲鳴をあげていて…どこにも抜け出せない閉塞感に窒息寸前でした。
じつは、そのとき私が思ったのは、
「自分が《物語を書く人》なんかじゃ、なければよかったのに…」
という、悲痛な思いでした。
物語なんか書きたいと思わなければ、いまも、私は、ホテルで働いていたはずです。
『パレスホテル』のエッセイ(※現在は非公開です)でも書いてるとおり、いまはビルメンテナンスの会社がホテルに入っていて、私もそこに所属していたんですが…そのとき、私は所長のアシスタント的な仕事をしていて(だから忙しかった!)、その所長と私は仕事仲間としても、なかなか相性のいい関係でした。(と、勝手に思っているが・笑)
所長は女性で、たまに『不思議の国のアリス』に出てくる《赤の女王》(ぷんぷんしてるワガママちゃん)みたいなところもあったりはしましたが、大雑把で、冗談好きな彼女は、いっつも「あっはっはー」と笑う明るいひとでした。
パソコンの調子が悪いときは必ず「あーら、画面がでなくてガメンなさーい」とオヤジギャグをとばし、私の冗談にも涙ながしながら笑ってくれて、私がなにかで失敗して落ち込んでても「そんなの気にしなーい。誰でもあるあるー」そういって励ましてくれました。ホテルマンの友達からは「ほんと仲いいよね?」といわれるぐらい、いい関係だったんですよね。
仕事は、慢性的な寝不足と、ドリンクの日付チェックをするので、軽い
きっと、それはそれで、そこそこ楽しい人生だったのではないかと思います。
ただ、私は、残念なことに《作家》なのです。
プロとして収入を得ようが、得まいが…《作家》という、つねに《自分の物語》をかたわらに
そのつらさ…
書けない絶望…
それは、じっさい、そういう経験をした人にしかわからない感覚であることは承知してます。でも、ほんとうに、それは、自由を求めながらも牢獄に囚われたまま死んでゆく囚人のような気分でした。
おそらく―――いまも、そういう思いで過ごしている人は、けっこう多いのではないでしょうか?
仕事、子育て、老人の介護、あるいはもっと別の理由…病気で思うように手が動かないとか、病状が悪化して書けないとか…とにかく、書きたい!表現したい!と思うのに、
私はそう思うのです。
いま、私は、ある小さなホテルで昼間だけ働いて、夜は小説を書いています。(※現在はマンション管理のサブマネージャーしてます)家に帰り、パソコンに向かい、キーボードで物語のつづきをつむいでいる瞬間…私は本当にシアワセだなぁと、しみじみ思います。
生活はとうぜんギリギリですが、そんなことはどうでもいいぐらいに、いま、自分の物語と向き合えるよろこび、主人公たちに会えるよろこびをかみしめる日々なのです。
物語と向き合えるシアワセ。
たっぷりと、時間があるシアワセ。
病気に苦しむこともなく、健康で物語を書けるシアワセ。
そして―――生きてるシアワセ!そのなんと、ありがたいことでしょう!
『生みの苦しみ』は、プロもアマチュアも、誰にでも訪れる苦しみですが…私はそれも全部ひっくるめて《創作すること》だと思っています。
苦しくて当たりまえ。
創作は『苦しんでなんぼ』の世界です。
「自分は苦しまずにサクサクかけるぜ!」という人は、よっぽどの天才か、素人さんのどっちかです。きっと。(笑
―――なので、みなさん!
苦しいときは、書く時間すらないひとを思い、そのぶんもがんばりましょう!
その幸運をかみしめつつ、思う存分《
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