15|漫画に学ぶ『プロローグ』のお約束。

 さてさて――

 みなさま、今日も元気に小説書いてますか?^-^


 私、一ヶ月まえくらいに、《七野りく》さんというプロの方が立てた『プロローグの切れ味』という自主企画に参加しました。そのタイトルのとおり、

「1話目が物語のプロローグとして、ちゃんと機能を果たせているか?」

 企画者が読んでまわり、アドバイスをいただき、勉強するという趣旨の企画でした。


 本当は、知らないで参加しちゃって、あとで「あ、そういう趣旨だったんだ…」と思った次第ですが、でも、改めて『プロローグとはなんぞや?』ということを考える機会ができて、よかったと思っています。


 私もコメントをいただき、一応「機能は果たしている」と書かれていてホッとしましたが…「案外、プロローグとしての機能を果たしている作品が少ないのです」とも書かれていました。


 私も、気になったので他作品を読んでみました。

「たしかに!」って感じでした。(笑


『プロローグ』の意味も知らないまま、見出しタイトルに「プロローグ」とつけている人、けっこういました。「いや、それ、ただの《出だし》やん!」と、突っ込ませていただきました。^-^;

 出だしは、どんな小説にもあるからね。ついつい、カッコつけて「プロローグ」とつけたい気持ちはわかる。でも、それは『プロローグ』じゃない。


 漫画は『プロローグ』が命です。冒頭の4ページで、勝負が決まります。

「運命の4ページ」…と、言ってるかどうかは知らないけど(知らんのかい・笑)

 とにかく…漫画における『プロローグの法則』を学べば、きっとダメダメなプロローグを書いている人も、1ランク上の出来栄えになるはずだと思ったわけです。


 てな、ことで――今回は、私が漫画投稿時代に自主的にこころがけたこと。そして、漫画家時代に、編集さんから「ここは、もっとこうするんだ!」ときびしく指導されて学んだ『プロローグのお約束』について、エラソーに語ってみます。



               ***



 さて――

 私が漫画投稿をつづけてた中で、編集さんの目にとまった作品(ラブコメ)は、じつは、何作も描いてた中で、はじめて、を意識して描いた作品でした。それは、ある少女漫画の入門書に…


「出だしからインパクトのあるシーンを作って引きつける」

「大ゴマをとって目立たせる」

「作者の個性(オリジナリティ)を出す」


 …そんなことが書いてあったので、それを実践してみようと思い立ったからです。

 そのラブコメの冒頭を紹介してみます。


 1ページ目の1コマ目:

 主人公(女子)の顔のアップに背景は玄関先、「ただいまー」というセリフだけ。

 2コマ目:

 お母さんが、いきなり「弟の危機です、すぐに学ランに着替えなさい!」といって、主人公の制服をバッっと脱がせる。「ぎゃーー!」と叫ぶ主人公。


 このシーンだけで、読んでる人は「え? いったい、どーゆーこと? なにがあったの?」と、思う。これを、漫画用語で《ヒキ》といいます。


 ストーリーとしては、双子の弟が病気になってしまい大事な期末テストを受けられなくなり、主人公が弟に成りすまして男子校へ潜入し、そこで気になる男子にであい、それが騒動に発展するという…ありがちといえば、ありがちな設定で…それを、どうオリジナルの演出で、いかに他作品との《差別化》を計るかが勝負ポイントになるわけですが…とりあえず、それはこっちへ置いといて…。


 入門書に書いてあった「作者の個性(オリジナリティ)を出す」という項目は、じつは、『プロローグ』を描くときに、とても大事になってきます。


 私、つい先日『メタファー』という言葉が気になって、検索してみたんですね。

「え? そんなことも知らないで、いままで小説書いてたの?」と、いま、思ったあなた…あなたは、知っておくべきです。私のボキャブラリーの貧困さを。(笑


 さて――その『メタファー』。

 その意味は…《例え話》《比喩的表現》《テーマ性》…そんな意味らしいです。

 わかりやすい例を書いてみます:

「それはまるで、水槽の中に一滴のインクを垂らしたように、彼女の闇は、じわじわと広がってゆくのだった…」

 この「まるで〇〇のように…」という部分がメタファーです。


 で――優れた物語には、必ず『メタファー』が存在し、『メタファー』を描くと、自然と作家のオリジナリティがあぶり出される…ということらしいです。

 その作家が、日常生活の中で、なにを考え、なにに関心を持ち、どんな生き方をしているのか…いままで経験してきたすべてのことが、ここに表れるということです。


 そこで、『プロローグ』の話につながるわけですが…優れたプロローグにも、メタファーは存在しています。『メタファー』と『オリジナリティ』は同義語みたいなものです。(たぶん…)


 漫画は絵なので、「まるで〇〇のように…」と書くわけにはいかないけれど、でも《比喩表現》はできます。漫画用語(あるいは映画用語)で、それを『シンボライズ』といいます。人物の心情を、なにかに喩えて表現するテクニックのことです。


 例をあげると:

 デートで花火大会に来たカップル。男が女子にプロポーズする。女子は舞い上がる。そのとき、頭上で花火がパーンとあがる。その花火が女子の気持ちを代弁してるというテクニックです。(ラブコメ作品によく使われるメタファーですね)


 そして、『シンボライズ』は小説でも表現できる。

 でも、あまり使ってる人、見かけません。なぜでしょう…???


 さて――話を、私の漫画にもどします。

 その、編集さんの目にとまったラブコメ作品に、メタファーがあったかどうかは、わかりません。(いや…十中八九、なかったでしょうよ!笑)


 でも、漫画入門書のおかげで、とりあえず、1ランク上に行けたのですから、ハウツー本をバカにしてはいけませんね。


 で。その入門書には、もうひとつ…物語にとって、基本的な《あること》を、アドバイスしてくれていました。

 それは――すべての物語の冒頭部分には、必ず『4つのW』が存在している、ということでした。それは――


『 Who 誰が?・ When いつ?・Where どこで?・What なにをしてる?』

 …です。


 これを冒頭で説明するのは、基本中の基本ですが…あんがい、描かれていない作品が多いらしいです。それが描かれていないと、読者は、「わけがわからん」といって、つぎのページをめくってくれません。


 読者は、冒頭では、作品の内容を知りません。

 だから、主人公に感情移入しながら、心のよりどころとし、その物語の中を歩きたいと思っています。それなのに、主人公が(作者が)不親切すぎて、なにも教えてくれなかったら不安になって「じゃあいいよ。もう読まないよ」って気持ちになる。


 逆に、親切ていねいに教えすぎても、「くどいよ。覚えきれねーよ」って気持ちになってしまうので、作者は、自分の手の中にある情報を、どこまで提示し、どんなタイミングで提示してゆくか…その見極めがたいせつになってくるわけですね。

 そこは、プロの漫画家さんでも、つねに頭を悩ませていることのひとつだと思います。むずかしいのです。


 カクヨムでも、見かけますよね。

 異世界ものに多いんですけど――冒頭から、まるでマシンガンのように(←これもメタファー)設定という名の弾丸(あるは登場人物という名の弾丸)を、容赦なく浴びせてくる作品…。これは…私、苦手で…。

「う、撃たれたーー。死ぬーーー!!!」ってなっちゃいます。^-^;


 作者自身は、物語の情報をすべて知っています。だから、つい「こういう設定考えたの! ね? すごいでしょ? 面白そうでしょ?」って言いたいんだよね。

「こんなキャラクターたちが登場するの! Aさん、Bくん、CちゃんにDにEにFに…」どんだけおるねん!(笑)…って感じです。

 でも、読者は、べつに、知りたくないんだよね。(いや、設定マニアは食いつくかもだけど、一般的にはね…)その世界の法則も、のちのち関わる人物たちも、冒頭では知りたくない。どうでもいい。


 冒頭部分で、読者に関心があるのは、主人公の気持ちだけです。これ、大事!

 主人公に案内されながら、じょじょに知ってゆくカタチがベスト。

 登場人物も、長編になればなるほど、さまざまなタイプの人間が出てくると思うけど…それは、のちのち、主人公とかかわることで、はじめて読者にも認識される…そういう登場のしかたがベスト。


 冒頭は、わかりやすく、簡潔に…です。


 ここで、私の小説『サクラ・イン・アナザーワールド』にふれてみちゃおうかな?

 と、思います。この物語は上でも書いてるように、プロの作家さんから「プロローグの機能は果たしている」とコメントいただいたヤツです。


 でも、自分でもわかっていて…この《1話目》は、方向性(テーマ・メタファー)が、最初の4行でわかるので、そのことに興味のある人は「お?なんか気になるテーマだぞ」と思って、つぎの2話目も読んでみようか?と思うはずですが…テーマ自体に興味のない人は、おそらく、その時点で去ってしまうはずだと分析します。

 PV検証では、2話目を読んでくれた読者は《3分の2》です。

《3分の1》は脱落してます。(さよーならー…)


 シーンとしては、『サクラ』という主人公が夢の中で、殺風景なコンクリートの通路を、ズキズキと痛む足をひきずりながら、ふらふらと歩いていて、最後にでっかい扉があらわれ、その向こう側に足を踏み出した…という、それだけのシーンなんですね。

 一応、「その一歩がサクラの運命を大きく変える一歩になるとは…」と、思わせぶりな文章で引きつけてはいるんですが、これだけではインパクトは弱いです。強烈な《ヒキ》で、読者を引きよせるというミッションは、失敗してます。


 この――《脱落した3分の1の読者》に2話目を読んでもらうためには、シーンでのインパクトが必要です。


 そこで『4つのW』が出てきます。

 この『サクラ…』の物語の冒頭を、『4つのW』に当てはめてみましょう。


 ・Who 誰が?( サクラという主人公が… )

 ・When いつ?( わかりませーん・笑 )

 ・Where どこで?( 夢の中で… )

 ・What なにをしてる?( 足をひきずって歩いている… )


「わからない」とか言っちゃってる時点で、成功とはいいがたいです。(笑

「サクラが、夢の中で、足ひきずって歩いている…」まんまですね。


 何のひねりもないし、そもそも、『サクラ』は夢見心地でふらふらしているので、感情の起伏がないんですね…。

 私のラブコメ漫画とくらべてみてください。漫画の主人公は、家に帰ったとたん、お母さんにいきなり服脱がされて「弟の危機」って言われるんですよ。

 そりゃ「ぎゃーー!」と叫びますよ。つられて読者も「ぎゃーー!」ですわ。

 それが《ヒキ》です。


 …で。結果として『サクラ…』の冒頭のヒキは(ないわけじゃないけど)弱いということで、理想の『プロローグ』とはいいがたい――というわけです。


 余談ですが――これが、もし、ある程度のファンを獲得してる人気作家の小説だったら、これでもいいんです。ネームバリューがあれば、どんな『プロローグ』だって読んでくれる。メタファーさえあればね。あくまでも、これから世に出ようとしてる新人作家の作品としては弱すぎるという話です。


 さて――

 長々と語ってしまいましたが…冒頭の《ヒキ》は重要だということ、理解していただけたでしょうか?(ガッテン・ガッテン…)

 そして、理想の『プロローグ』とは、どういうものか、理解していただけたでしょうか?(ガッテン・ガッテン…)←無理やり感、ハンパない。^-^


 つまり――「ヒキが強い」「わかりやすい」「メタファーがある」


 それが、理想の『プロローグ』です。それを実践できれば、きっと読者の80%ぐらいは、2話目をめくってくれるはずだと信じます。


 でも…どんな優れた物語でも、アンチの人はいて、賛否両論巻きこるのが、この世の常…。

 だから、PV数は、逆三角形、逆カースト表のように(←これもメタファー)尻つぼみになってゆくのは自然の流れなんですね。なので、そのことで、いちいち落ち込む必要はないですよ。(自分も含めてね・笑)


 …ってなことで――明日からベスト『プロローグ』を目指して、お互いがんばりましょう!


 ちなみに。

 上で《自己ダメだし》した作品、『サクラ・イン・アナザーワールド』の

 プロローグは、いまのところ、直す予定はありません。(ないんかい・笑)


 ちゃんちゃん♪

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