08|「本気で小説家を目指している人へ、7つの質問」

※このページは、以前『本気で小説家を目指している人へ、7つの質問』という自主企画に参加させてもらったときに回答したものです。それに加筆修正して、ここに移動させました。興味がありましたら、どうぞ。^-^


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◆質問1:何故、作家を目指そうと思ったんですか?また、どの作家になろうと思いましたか?(ラノベ、純文学、ライト文芸など)


【答え】

自分が目指してる文体が、どのカテゴリーに属するのか、いまだよくわっていません。でも、読みやすい文章をめざしているので《ライト文芸》なのかな?と思います。

「疲れた頭でも、サクサク読める、わかりやすい文章」

「それでいて《ライト》すぎず、深みがあり、ひねりも効いている」

そういう文章をめざしています。


で。作家を目指す理由はというと…

私は漫画家だったんですが、そもそも、なぜ、漫画家(作家)をめざそうと思ったかといえば、その答えはひとつです。


「自分の心の中に、大きな穴があいていたから」


作家になる人は大なり小なり、心に《闇》をかかえています。

その溝をうめたくて、物語がうまれるんだと私は思っています。

本当に、なんの心の傷もなく、ただただ幸せに暮らしている人は、そもそも物語なんてつくりたいと思わないでしょう?

心の傷は、作家になるための通行手形です。みんさん、大切に見つめてください。


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◆質問2:プロットを書く際、工夫している事はなんですか?


【回答】

工夫というか…まず、最初に考えたプロットを、私は信用していません。

書いてるうちに、物語のほうから「これはちがう」と、私に警告してくるので、そのつど、全体をみながら、なんども調節したり書き直したりしています。

それも、すべて、創作の一環だと思って、とにかく、自分と物語のあいだで《折り合い》がつくまで、対話し、納得するまで微調整をします。


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◆質問3:文章力を上げる為にどんな勉強をしていますか?


【回答】

これは―――

ひたすら、小説(プロの作品)を読み込むことしかないでしょう!(笑

そして、書く!!!!!


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◆質問4:魅力的なキャラを書くためにどんな工夫もしくはどんなことを気をつけていますか?


【回答】

基本は、キャラクターがかぶらないように、それぞれ特徴をつけるということはやります。 これは、漫画でも小説でも、エンターテイメント作品においては基本中の基本!

魅力的なキャラクターは…どうしても作家の好みが反映されるので、一概に「これ」と言えないですが、自分が好きなら、その情熱は必ず文章に反映されると思うので、とことん惚れ込むことが大切なのではないでしょうか。

あとは、小説や漫画や映画を観たり、読んだりしていて、「こいつ、カッコイイ!」というキャラクターを見つけたらパクってみてはどうでしょう?(私はやります・笑)


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◆質問5:風景描写、心理、人物描写において大切にしている事や読者により的確にイメージさせやすくするためにしている事はなんですか?


【回答】

私の場合、すべて映像で頭の中に流します。

脳内VRですね。^-^

そこで、演出・セリフ・アクション・心理描写・カメラワーク…すべてやってしまって、文章に書くときはそれらを《実況中継》してる感覚で書くので、まるで自分がつくった物語VRに自分自身がはいりこんで楽しんでる感じになります。

つまり、映像化する。

そうすると、くどくどした説明文がすくなくなり、描写が増え、読者も映像をみてる感じになり、わかりやすくなるかと思います。


風景描写は…よく、比喩を使うかな?

『バベルの塔のような形の…』とか。『中世の闘技場のような広場に…』とか。

みんなが知ってる共通のイメージに落とし込むよう心がけてます。


心理描写は…よく、カッコで表現してます。


(なんだ…そうだったんだ…)

(でも…)

(それって、本当なの…?)


…みたいな。^-^いわゆる《モノローグ》ってやつですね。

これは、私の師匠『栗本薫』氏が『グインサーガ』でよく使う手法で…漫画チックといえば漫画チック。とても便利な手法ですが、多様しすぎると《ラノベ》みたいになっちゃうので要注意! 前後のバランスを考えて使いましょう。ちなみに師匠のモノローグは、もっと、とんでもなく長いです。(笑


あと、すごく気をつかうのは、微妙な心の変化を、しっかり細かく描写すること。読んでて、いきなり怒り出したり、笑い出したりすることがあってはいけません。(笑)それが狙いなら、そのあとで説明をつける。そういう細かいことをしっかり配慮する。それが読者ファーストです。


人物描写は…心理描写と同じで、そのキャラクターが言わなそうなこと、しなさそうなことをさせてはいけません。もし、させるなら、『なぜそうしたか?』っていう理由をかならず、ストーリーにそって説明する。


ようするに、『読者を置き去りにしてはいかん!』ということですよね。

「この表現で、わかってくれるかなぁ…」

「ここは、わかりづらいんじゃないかなぁ…」

「このへんは、物語的に平坦すぎて飽きさせちゃうかなぁ…」

…と、つねに読者の立場で、読者の気持ちを配慮することが大切です。


自分も、もちろん、まだまだです。

たまに読み返してみると、

「ええ!? いきなりこの子なに言ってんの??」とか、

「うわ…ここの表現、わかりづらッ…!」とか、けっこうあります。(泣


プロの場合は、つねに編集さんが、意地悪く目を光らせていて「ここ、もっとこうしたほうがいいんじゃないか?」とアドバイスをくださいますが、プロでもそうなんですから…編集さんがついていない私たちは、自分で自分の作品を客観的にみる努力をしないといけません。


なんどもなんども読み返して、ほころびを最小限にとどめる努力は、しないより、したほうがいいでしょうね…と、思います。


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◆質問6:長編を書く際、同じ物語を書き続けるコツはありますか?


【回答】

コツは…考えたことなかったですねぇ。

『なぜ、飽きずにモチベーションを保ちつづけていられるか?』ってことですよね? うーん…たぶん、ですけど…《こだわりが強い性格》なのかな?


それは物語にかぎらず、ひとつのことにハマったら、ずっとハマってる性格なんです、わたし。(笑)そして、あまり目移りしないんです。『これ好き!』って思ったらそればっかり。大好きな映画やドラマは一生観続けるし、好きな人は一生好きだし、好きな色、好きな食べ物…あまり変化がありません。


ひとつの場所にとどまって、その場所の地面を、ひたすら深く深く掘りすすめる!…みたいな、そんな研究者的な作業が好きなんですよね。


いま、ここで書いてる『サクラ・イン・アナザーワールド』って作品があるんですけど。

じつは、この物語…当初は計画もなにもなく、とつぜん生まれてしまったものですから(笑)行き当たりばったりで書きはじめてしまって――始まったはいいけど、終わるのか、終わらないのか…あるいは途中で書けなくなっちゃうのか…そもそも物語の長さもわからないし、いったいどうなってしまうんだ? と、思っていたんですが。

いま――第二章が終わりに近づいてきて、おぼろげに物語の輪郭が見えはじめて、「これは、そう簡単に終わらない大長編物語になるな…」という確信とともに、「自分は完全に長編向きなんだな…」ということがわかってきました。(※その後、アクシデントにより、ここで言ってる『サクラ…』は消滅しました。いま書いてる『サクラ…』は改訂版です)


書き続けていると、途中でいきなり進みが《停滞》してしまうことはあります。

面白そうな《演出》や《アイデア》が思いつかなかったり…微妙な心の変化を書かないといけないシーンでは、キャラクターの深層心理にもぐりこむ作業が、なかなかシンドかったりして…ついつい現実逃避に走って、延々と2ヶ月ぐらいスマホの《脱出ゲーム》に逃げてしまったりすることも…あります。

(※てか、逃避から脱出しろよ!ってハナシですよね…^-^;)


でも――それでも「もう、この物語は書けない」と思ったことはないです。「いつかは完成するだろう」と思っていて、完成させる《確信》もあります。

逆に、そのときが来るのが怖くもあって…じつは、「終わらせたくない」というのが本音なのかも…?

いつまでも、この物語の中で主人公たちと遊んで(?)いたい。もしかしたら、ただそれだけなのかもしれないです。


なにはともあれ、作家には、短編向き、長編向き、いろいろなタイプがあって、それぞれに合ったものをきわめればいいんだと思います。《コツ》とかいうよりは、性格に合ってるかどうか…なのかな? と、最近は思ったりしています。はい。


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◆質問7:この作家やこの作品は、物語を書く上で勉強になる。という作家や作品を教えてください。


【回答】

すべて《私の場合は》というカッコつきになりますが、栗本薫氏の『グインサーガ』です。この作品は、まず、彼女が「100巻の大長編小説を書く!」と明言して始まった物語で、じっさいは、130巻まで続き「これは終わらない物語になるかも…」という雲行きになったころ、彼女はすい臓ガンで亡くなってしまい、けっきょくは絶筆になってしまった物語です。


執筆中、彼女はいっていました。

とにかく、この作品は、自分がいちばん最初の読者であり、自分が書いてるというよりも、物語のほうから「書け!」といわれて書いてるという感覚であり、とにかく、一行たりとも迷うことなく、一心不乱にパソコンに向かって書き続けている作品であると。

(※当時『月刊グイン』と言われるほど、文庫本が毎月刊行されていました! しかも、毎回ベスト3以上にランクイン。すごくないですか?)


そのバイタリティもさることながら、筆が止まることがなかったという、驚異の集中力! 文章力! 作家力! まさに天才だと思います。

私が知っているかぎり、迷いなく、サクサク作品を描き続けた天才は、漫画家の《手塚治虫》と《栗本薫》以外におりません。

(※このおふたりは、生前、面識があり、お互いのモンスターぶりを対談されていましたが、いったい、天才同士って…どんな感じだったんでしょう?笑)


そして、その『グインサーガ』ですが―――

いまでも、ずっと、くり返し読みつづけていて…テンポのいい文章が心地いいのと、なんといっても、ほんとうに、思うがままに、自由奔放に楽しんで書いてる《気分》がこっちにも伝わってきて、その《気分》は、いま、自分が書いてる物語にも、そのまま反映されています。

彼女の文章を読んでいると、ああ…物語って、こんなに自由なものなんだ!

それこそが、本来、物語をつくる意味なんだ!と…私に教えてくれるのです。


そういう、テクニック以外に、小説を書く《楽しさ》を教えてくれる彼女の小説は、いまでも宝物ですし、私の先生です。


気になった方は、読んでみてください。


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以上です。

すこし長くなっちゃったけど、読んでくださってありがとうございます。

なにかしら、創作のヒントになったなら幸いです。(押羽)^-^

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