03|AVの裏側に詳しくなってしまった理由
※今回は、ちょっと目先をかえて、漫画家時代に体験した貴重なシーンを、面白エピソードにしてお届けしたいと思います。未成年の方も、ふつうに読めるレベルですので、安心してください!(…たぶん)
***
とつぜんですが、みなさん、
いまはDVDだから、アダルトDVDなのかな?
ま、どっちにしても、レンタルDVD屋さんのすみっこにある、《のれん》のかかった《ひみつの小部屋》においてあるのがそれですよね。
はじめにいっておくと、私は、じつは、まったくそいう風俗のたぐいは好きでもないし、興味もありません。
第一話に登場した、カードゲーム会社の方と漫画の話をしてるときも「もし、《エッチもの》が描けるなら、出版社に売り込みやすいですよ?」と《エッチ押し》をされたとき「興味がないものは描けません!」と、きっぱりとお断りしたほど、ほぼほぼ興味がない人間です。
そんな私が、なぜ、ちょっぴりAVに詳しいのかというと、過去、2度ほど、AVの取材をしているからなのです。
1回目は、イラストレーターをしているとき「AV現場に潜入!おもしろ漫画ルポ」みたいな特集があり、漫画が描ける私に依頼が舞いこんできたのです。
それが1回目。
そして2回目――――それが、漫画家時代の話でございます。
《プチコミック》というOLさんが読む系の漫画雑誌で、『まちがってAV会社に就職してしまった女子が奮闘する話』を描くことになり「これは、取材しなくちゃね!」と担当さんの強い押しがあり、2回目のAV体験(体験はしてないか・笑)をすることになったのでした。
そもそも、なぜ興味もないAVの設定を考えたかというと、当時私は《非常識》というキーワードにはまっていて、二十歳のシングルマザーの話とか、二十歳のバツイチ女の話とか、エッチがしたくてたまらないのにお互いプラトニックを貫き通すバカップルの話とか…そんなばかばかしい話を描いていて、その一連のながれで、AVが出てきたわけなのですね。
この話を考えたときは「取材なんかしなくたって、資料(映画本とか)をみれば描けるだろ」と思っていて、いまでも「描けただろ」と思っていますが、なにしろ編集さんの押しがすごいわけなんですよ!(笑
「AVか!よし、これは取材しないとね!じつは、ぼく、AV監督さんのツテがあるんですよ!このまえ、別件で監督さんとお会いしてね!彼にお願いすれば、現場にも入らせてもらえると思うんで、ぜひぜひ取材をしましょう!行きましょう!」
まったく、男ってヤツは…って感じです。(笑
そんなことで、とんとんと話は進み、当日、機材が乗ってるバンに、AVスタッフさんたちと乗り込み現場にむかいました。
その現場は、閑静な住宅街の一角にある、洋風の一軒家でした。貸しスタジオってやつですね。
そこには、監督さんとスタッフさんが7~8人。
雑誌の取材記者さんが何人か…。(けっこうたくさんいました)
ヘアメイクさん。(すっごくやさしいお姉さん)
そしてメインのAV女優さん。(『モデルさん』と言ってました)
彼女は、歌舞伎町で《イメ・クラ》っていうんですかね?セーラー服の格好とかバニーガールの格好とかして接客するお店のホステスさんでした。
たぶんレズビアンの方で、彼女の弟がゲイ
私の印象としては、とにかく《性》に関して自由な人たちなんだなぁという感想です。
カメラマンの男の子も、話をきくとゲイ男子だということで、まぁ、とにかく、この風俗かいわいに集まってらっしゃる方たちの《性》の境界線はめちゃめちゃ曖昧で、なんでもありの世界で、それはそれは新鮮なおどろきでした。
いま、世間ではときどき《
この、ザワザワしちゃうところが、なんだかんだいって、日本はまだまだLGBTQが世間に溶けこんでいない証拠だと、実感する今日この頃です。
みんな一度、AV現場で働いてみたらいいんです、きっと。自由な性の中にいたら、そんなことどうでもよくなると思うのに…。
さて――――話は、AVの現場にもどります。
最初にまず、小芝居があるのでその撮影をしました。
ちゃんとドラマのような台本があり、監督さん、カメラマン、照明さん、それは、まるでテレビドラマを撮っているかのような本格的な撮影で、映画好きの私は、そこにちょっぴり興奮しました。
そしていよいよ本番(結合シーン)を撮るのですが…
そこで登場したのが、なんと、K・Tという、その業界では知らぬものはいない、《超》がつくほどの有名な男優さんだったのです!どどーーん。
(ちなみに彼は、その後AV業界を引退し、それまでの経験をいかした商売をはじめてらっしゃるようです)
彼は漆黒のフェラーリで颯爽と現場に登場し、その甘いマスク、その浅黒い肌、首元には金のネックレス――只者ではないオーラをまといながら「待たせたね!」ってあらわれたときは、さすがの私も
「煮るなり、焼くなり、もう!どうにでもしてッ!!!」
と心の中で叫んでました。(とんだカンチガイ…笑)
とんだミーハー女になりさがった私は、一緒に来てた編集Kさんのことなど、すっかり忘れてしまいました。
私の目はAV界のプリンスに釘付けです。
そして、例のモデルさんがバスローブを着て登場し、ちょっとあとに、腰にバスタオルを巻いた姿のプリンスが登場し、いよいよ本番の撮影がはじまったのでした。
そして、そのとき、私は、はじめて気づくのです。
「そうか!ここでは《ぼかし》がないんだったぁぁーーー!!」
…っていうことに。(笑
そうです。AVには《ぼかし》がはいってます。
大事な部分が見えないように隠すアレです。
もちろん、男性のあそこや、女性のあそこをナマで見たからって、多感な少女じゃないんだから恥じらいは、みじんもありません。(1ミリぐらいは恥らえ!)
AV取材もはじめてじゃないですし…ね。
しかしです。
思えば、1回目の男優さんは、普通のひとでした。
モノがすっごく大きいという理由で採用された、奥さんに内緒で、おこづかい稼ぎのためAVに出演されていた普通のサラリーマンでした。
(それはそれで、おもしろいが…笑)
しかし…今回は、プリンスです!
プリンスのあそこです。プリンスのあそこを《ぼかし》ナシでみるチャンスなんて、人生の中でいったいどれだけあるというのでしょうか!?
いや、ないでしょう!
これは、ぜひ、見ておかねばなりません!(どんな使命感だ?)
「モデルさん、はいりまーす」
「K・Tさん、はいりまーす」
「はい。みなさん、音を立てないようにお願いしまーす」
シンと静まりかえった室内。
20畳ほどの洋室の中央に、キングサイズのベッドが存在感を放ってどーんと置かれ、まわりには移動カメラと、固定カメラが一台づつ用意され、その横にレフ板、頭上にマイク、ベッドのうえに照明があたり、スタッフは緊張したおももちで、監督の合図をまっているのです。
私も、音を立てないように、壁ぎわに正座して、どきどきしながら本番を待ちました。
「はい。本番いきまーす!」
監督の合図とともに、カメラがまわりはじめました。
プリンスが、とてもたくみにモデルさんをリードしてゆきます。
やはり長いあいだAVの世界に君臨している彼は、1回目に拝見したサラリーマンの男性とは、意識もワザも(…ってワザはよく知らないけど・笑)見せ方も、本当にプロでした。
「ここだよ。いま、ここを撮ってよ…」みたいに、目でカメラマンを誘導して撮らせたり、まるでプリンスが監督であるかのように、その場をみごとに支配していたのには、本当に脱帽というか…ああ、これがプロなんだなと、そう思いました。
監督さんも、プリンスには絶大な信頼を置いてることがわかるんですよね。
そのたくみな連携プレイというか、あうんの呼吸というか…どんな仕事にも、仕事仲間だからこそ分かり合える瞬間ってあると思うけど、その瞬間って端からみていて、ほんとうにカッコイイなと思いますよねぇ!(ほれぼれ…)
そして、そんなプリンスにうっとりしてた私ですが、本当の本番(結合)がはじまったとたん、心の中で私は「ぎゃぁーー」と叫びました。
なぜって?
私がすわっている位置から、ふたりの、その、結合部分が丸見えだったからです!
つまり、私がいる位置は、ベッドの足のほうだったのね…。
頭のほうとか、横とか…たぶん、AVで映すカメラワークって、それなりに映画っぽいっていうか、ふたりのからみのシーンも、顔や顔に近い部分がほとんどで、足のほうって誰も撮ろうと思わないよね?
しかも、主役はあくまでも女優さんなので、プリンスの局部なんて、たぶん、みんなどうでもいいと思っている。
しかしです。
私は、その誰も撮らない、誰も関心がない彼の局部を、ナマで拝んでしまったのです!
その部分は、私のすわってる位置でしか拝めない…まさに絶景ポイント!!!
「な、なんだ、この迫力はーーっ!!!」
まるで、ナイアガラの滝を間近で見て「飲まれるぅぅーー」「滝に飲み込まれてしまうーーー!」と叫ぶ観光客の気分でした。
「ぎゃー、プリンスの尻の〇〇が、丸見えだよーーー」
「ぎゃー、プリンスの〇ニスがーーー」
「ぎゃー、プリンスの〇〇がーー」
「飲み込まれてしまうーーー…」
(ザザァーーーン…)
――――てなわけで。
まあ…ほとんどプリンスのことしか見てなかった私ですが。
こんな業界にいなければ、ぜったいに体験できなかったであろう貴重な体験をさせてもらい、結論としては、編集者K氏に感謝しましたとさ!
K氏、お元気ですか?そのせつはお世話になりました。(ここで済ますなって?)
ちなみに、その編集さんは、本番の途中、音をたててはいけない現場で咳き込みはじめ、あわてて外へ逃げだし、けっきょく半分も見られなかったみたいです。
よほど興奮したのでしょうねぇ…。
人間、
そーいうわけで――AVにちょぴり詳しくなった私ですが、いまだに、その経験をいかした物語は書けてませんし、アイデアすら浮かびません。
「なにしろ、興味ないからなぁ…」(ほんとかよ・笑)
ちゃんちゃん♪
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