第五章 暁天の城(二)
「急にどうしたの」
書面に目を落としたまま、さして驚いたふうもなく
前城輔、
「もうあの夢は襲ってこないよ。それに春明も知ってのとおり、いまは人手が足りない。阮之どのも頑張ってくれているけど全然追いついていないからね。春明にも手伝ってもらえるとありがたいんだけど」
「わたしは官吏ではありませんから」
「きみひとりの官職くらい、どうとでもしてあげるよ」
「結構です」
返答が思ったより冷たく響いて、
「お心遣いには感謝します。ですが、わたしは
「だから」
子怜は紙の束を卓に放った。
「あんなことをしたわけか」
その言葉の意味を悟り、春明はゆっくりと目を見開いた。
「……ご存知だったんですか」
まあね、と子怜はうなずく。
「先だっての
「唯一、まともに読めた文字は回答者の姓名だけだったとか」
子怜は春明をまっすぐ見つめて問いかけた。
「
鏡が見たいな、と春明は思った。いまの自分はどんな顔をしているのだろう。泣きそうな顔をしているだろうか。それとも笑っているのだろうか。
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