プロジェクト・ナマノシン〜前編〜
冴吹稔先生作、軌道砲兵ガンフリントの二次創作となります。
本編に出てくるあのイカ天丼の創造主ことナマノシンにスポットを当てて、火星のテラフォーミングに触れた、ドキュメンタリー風……に見せかけたインタビュー記事となります。
芳川もたまにはまともなものも書くんです!
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天丼屋 菜種
それは火星軌道ステーションに存在する唯一の和食屋である。その人気は凄まじく、地球からわざわざやってくるグルメもいるほどだ。
では何故このような地球とは似て非なる過酷な環境で店を開こうとしたのか、また現在に至るまでにどのような困難があったのか、今回は店主であるナマノシンさんと妹のミリアムさんを混じえて紹介していきたい。
2153年 4月1日
火星軌道ステーション『シルチス』の港に彼等は降り立った。ナマノシンとその妹ミリアムである。
ナマノシン当時27歳。ミリアムは21歳。
現在の火星は皆さんも知っての通り、地表に埋設した
内惑星統合軍の統治も安定しており、民間企業の参画がここ二年で急速に増えつつある。
しかし、ナマノシンが降り立った当時の火星は、木星からの砲弾により地球が荒らされていく中、第二の故郷としてテラフォーミングが進んでいる最中であった。
さながら19世紀アメリカの開拓時代のようである。
Q「何故火星に来られたのですか?」
ナ「実は3年前まで私はプラント技術者でした。火星に来たのも動植物養殖プラントの技術顧問として派遣されたからなのです」
なんと、彼は元プラント技術者だった。
彼のバイオスフィア、模造生態系、ビオトープに対する造詣の深さはここからきているようだ。
Q「ミリアムさんは何故火星に?」
ミ「私は栄養士でしたので、職員達の健康管理やプラント食品の検査のために派遣されました。元々兄に付いて火星に行く事は決めておりましたが、二人同時に任命されたのはたまたまです」
兄妹揃ってテラフォーミングに従事できるとは、両者がいかに優秀で、類希なる才能に溢れているかがよくわかることだろう。
ここで、ナマノシンが火星に降りた話へ戻る。
彼は最初に緑化エリアへと向かった。そこは地中に埋めた保水ゲルで土壌の栄養を保ち、更に地下水を組み上げて水分の確保も行いながら植物を育てている。
現在も拡大を続けて、ゆくゆくは火星全土を覆う事を期待されている。
「最初にプラントへ寄っても良かったのですが、やはり最初は火星で育った植物を見ておきたいと思ったので」
緑化エリアは緑に溢れていると言っても、酸素濃度10%程の大気では植物が育ちにくい、ゆえに緑化エリアはドーム型の巨大グリーンハウスとなっている。
グリーンハウスのノウハウは181年前、2017年から蓄積された歴史ある技術だ。当時は550×200センチの小型のものしか作れず、用途も宇宙船で農業を行いながら滞在時間を伸ばすためでしかない。それが今では火星に一エリア築ける程の規模になった。
火星の緑化エリアはよく出来ており、足りない日射量はLEDで補い、また拡張工事計画が増える程に順調な成長を見せている。
Q「グリーンハウスでは何をされたんですか?」
ナ「当然、そこで作られる植物の具合です」
ナマノシンは緑化エリアの植物を見て驚いたそうだ。なんとそのエリアの植物は地球の植物と何ら変わりない質量、数、大きさにまで成長していたのだ。
ナマノシンはこう語る。
「この手の話は、21世紀初頭に行われた火星の土を再現した農作業プランを皮切りに、何度も実験がされたので頭ではわかっていたのですが、実際に目で見ると驚きますよね」
そう、彼は照れながら語った。
「しかしまだ問題がありまして、火星の土には過酸化水素や酸化鉄、ヒ素や水銀等の重金属に加え、場所によってはロケットの固定燃料酸化剤となる過塩素酸塩が大量に含まれているんです。そのため微生物が生きていくには過酷過ぎるので、表面の土(約2m)を盛り返して浄化しなくてはいけないんです。
それを火星全土となると途方もない作業となります。緑化エリアがここまで拡大するのに40年掛かりましたからね、土壌問題はテラフォーミング最大の課題となりますね」
今の状態に持ってくるのに40年は掛かりましたから、地球と同じ環境を見ることは我々が生きてるうちに拝めそうにはありませんね。
その後、ナマノシンは管理者のご好意で緑化エリアで作られた野菜を食べたそうだ。
Q「味はどうでしたか?」
ナ「鉄臭くて不味かったです。浄化したとは言っても、鉄分の多い事には変わりませんからね。血液を被ったような味、といえばわかりやすいかもですね」
非常に嫌な例えだ。
ではここで一旦CM入ります
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『軌道砲兵ガンフリント』好評連載中!
強大な力を持つ謎の敵勢力が猛威を振るう地球圏
人類は生き残るために引鉄を引く覚悟を決めた
「ガンフリント4、センチュリオン出撃する」
そして彼は出会う
「……何だ、このイカ。こんな分厚い肉を持つ奴がいるなんて」
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