第1話 鼠の仁義なき戦い 〜前編〜

 こちらはながやん先生作、『スーパー◇ボット少女「」ー誰も知らない日常詩篇ー』の二次創作となります。


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 リジャスト・グリッターズ

 複数の世界と宇宙を守るため、人種や損得の壁を超えて集まった超法規的組織。

 そんな彼等が身を投じる戦いの裏では、エンジェロイド・デバイスがカーバンクルという魔獣からリジャスト・グリッターズを守るために戦っていた。

 

 そしてその更に裏側、カーバンクルによって知性を授けられた鼠達による、小さな戦いがあった。

 

 後にそれは『小島抗争』という名で伝聞される事になる。

 

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 宇宙戦艦愛鷹、第二食料貯蔵庫直上二百メートルの地点に鼠達の街があった。

 

 小島市と呼ばれるその街は、食料貯蔵庫が近くにあるおかげで他の街より一歩進んだ繁栄を見せていた。

 

 その小島市を仕切るのは『芦刈組あしかりぐみ』、古くから街の元締めとして親しまれてきた昔気質むかしかたぎの極道一家である。

 

 小島市は芦刈組の管理の下、平和に繁栄してきた。しかしその繁栄に石を投げる者が現れた。

 

 それは『箕輪組みのわぐみ』、歴史は浅いものの、近代的思想に満ちたその組織はあらゆる街を統治下に置き、急速に発展してきた。

 

 現在、小島市は箕輪組と芦刈組がシマを奪い合っている。

 

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 芦刈組の札が掲げられた古い日本家屋、板張りの床をドタドタと足音を立てて駆ける鼠がいた。

 鼠は一際多く襖障子のある座敷の前で立ち止まり、その場に膝を付いて深く頭を下げる。

 

「オヤジ! 三ツ矢です、ただいま戻りました」

 

「おう、入れ」


 三ツ矢は頭を上げて襖を開く。膝を付いたまま中に入り、振り返って襖を閉じる。

 そして中腰で立ち上がって部屋の奥、『組長』が座している前まで小走りで近寄る。

 そして再び膝を付いて頭を下げる。

 

「よう帰ってきた。エンジェロイド・デバイスはどうやった?」

 

 老齢であるものの、その声には衰えを感じるどころか一種の畏怖を覚える凄みがあった。

 

 三ツ矢は頭を上げる。正面には歳を取ってくたびれた髭と垂れた皮膚の組長こと左近さこんがいる。


「へい、負けはしませんでしたが、勝ちもしませんでした。うみってアマが惚れ惚れするような戦術を次から次へとだすもんで」

 

 この三ツ矢なる鼠は直前までエンジェロイド・デバイスと戦ってきた。芦刈組若頭として一個小隊規模の若いものを引き連れて。

 

「ほうかい、確かそいつは参謀のような立ち位置の筈じゃい。普通の鼠では勝てんて」

 

「仰る通りで」

 

「まあそれはええわ、三ツ矢……心してよお聞けよ、おめえが留守ん間に兄弟がタマとられおった」

 

「叔父貴がですかい!?」

 

「せや、下手人は箕輪組の伍田平ごたべいて野郎や」

 

「伍田平といや箕輪組の若頭でねえですか」

 

「その伍田平が兄弟にサシの勝負を吹っかけおった」

 

「つまりそれで叔父貴は負けたと」

 

 左近は返事をせず、ただ頷いた。

 奇襲を受けたのなら今頃カチコミを行っていたかもしれない、しかし相手は正々堂々と一対一サシの戦いを挑んで勝ったのだ。悔しがる事はすれど怒りをぶつけるのは仁義に反する。

 

「後で叔父貴を供養しに行かせてもらいやす」

 

「ああ行ってやってくれ、それと箕輪組の奴らな、隣街の『鈴原組すずはらぐみ』の奴らとも手を組みおった」

 

「確か、ウチらより資金力の強い極道モンやなかったですかい?」

 

「こりゃ近々戦争が起きんで、兄弟の件は前振りにすぎん」

 

「肝に命じておきます」

 

 三ツ矢は座敷を後にして叔父貴の供養に向かった。

 

 そして数日後、芦刈組を震撼する事件が起きる。

 

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「ありがとうございました!」

 


 店員の声を背中にして芦刈組組長左近が子分を連れて酒屋の暖簾を潜って外に出た。低めに設定された空調が身に染みる。

 

 これは早目に帰らねばと思った矢先、目の前に長ドスを剥き出しにして立ち塞がる謎の鼠が現れた。

 

「芦刈組組長だな」

 

「せや、おめえは?」

 

 左近を守ろうと子分が懐から短ドスを取り出して前に出る。

 

「ワシは箕輪組若頭の伍田平、ワシとサシで勝負してもらいたい」

 

「ふざけんな! 誰がてめえに!」

 

 吠える子分の一人が短ドスを振りかぶり伍田平に斬り掛かる。伍田平は表情を変えず、短ドスを躱して無防備な横腹に長ドスを突き刺した。

 

「ぐぇっ」

 

「甚八!」

 

 仲間を殺されていきり立った他の鼠が伍田平に襲いかかろうとする。

 しかしそれを遮るように組長が前に立ちはだかった。

 

「よせ、おめえが敵う相手じゃねえ、下がれ」

 

「しかし組長!」

 

「下がれゆうとんのがわからんのか!!!」

 

 左近は子分をそのドスの効いた声音で持って強く恫喝した、子分はというと恐怖のあまり手にした短ドスを落としてしまう。

 

「待たせたな、ほなやろか」

 

 左近は腰に差していた長ドスを抜いて青眼に構えた。

 その双眸はまるで天敵である蛇のように鋭かった。

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