大統領は男子高校生
ここは日本の東京都、
どこにでもあるなんの変哲もない普通の高校だ。
そのどこにでもある普通の高校に、先日、奇妙な転校生がやってきた。説明するまでもなくアメリカ合衆国の大統領である。
彼は、鎧のように盛り上がった筋肉のせいで、パツパツになった制服を心地良さそうに着こなしながら、開口一番こう自己紹介した。
「私が大統領だ!」
こうして大統領がやってきたのだった。
まあ驚く程のことでは無い。
さて数日が経った。大統領はすっかりクラスに溶け込んで、今じゃすっかり大統領だ。
そんな大統領の隣には、この物語の語り部である僕が座っている。自己紹介が遅れたね、僕の名前はファラオ、特徴は頭に被っているツタンカーメンの仮面。
見た目と名前から察する通り、僕は山梨県民だ。
「やあ大統領、今日も筋肉してるね」
「ファラオ君の頭も相変わらず光り輝いているさ」
これはいつの間にか始まった僕達の朝の挨拶、それはさておき僕は大統領の手に可愛らしい便箋が握られているのを見つけた。
ははぁ、わかったぞ、今時珍しいアレだ。
「ところで大統領、その手にあるのはひょっとして……
「よくわかったな、今日の放課後にグラウンドへ来てくれと書いてある」
「興味深いね、僕も行っていいかな?」
「もちろんだとも」
そういうことになった。
そんなこんなで放課後、昼休みに武装テロリストによる学校襲撃なんてものがあったが、とりあえずそれは割愛する。
僕達がグラウンドに行くと、そこには既に
そしてギャラリーの中心に手紙の差し出し人がいた。白い学ランをピッタリと着こなして眼鏡を掛けた男。
「来たか、大統領」
「君が、生徒会長か」
「そうだ、俺が生徒会長だ」
「私を呼び出した理由は何かね?」
「単刀直入に言おう、俺の恋人になってくれ」
「断る」
「ならば俺と勝負しろ!」
「よろしい!」
そういうことになった。
大統領の拳が音速を超えた速度で放たれる、鍛えぬかれた筋肉をもってすれば容易い事、この音速のストレートパンチを避けられる者は滅多にいない。生徒会長もまた避けることは無かった。
彼は大統領の音速パンチを眼鏡で受け止めたからだ。生徒会長の背後では拳圧によって地面が抉れて破砕されている、生徒会長はあの筋肉を眼鏡で受け止めきったのだ。
「ほう、生徒会長の名は伊達ではないという事か」
「舐めるなよ大統領、俺の眼鏡は
なんと! 生徒会長の眼鏡は
「次は俺の番だ! くらえ! 眼鏡ビーム!」
生徒会長の眼鏡からビームが放たれる、大統領はそれを紙一重で避け距離をとった。狙いの逸れた眼鏡ビームは背後にある校舎を焼き切って収まった。
「なるほど、
「その通りだ、さすがは大統領」
「あまり褒めるなよ、照れる」
再び眼鏡ビームが放たれる、しかし大統領はこれを避ける事をせず、拳で受け止めた。
「所詮ビームなど熱を帯びた光の塊、鍛え上げた筋肉には通用せん!!」
「やるではないか! ならば泥臭く殴りあおうか!」
その言葉通り二人は殴りあう、生徒会長は眼鏡を顔につけたまま眼鏡で殴り、大統領は両拳で生徒会長の眼鏡を殴る。
攻防は熾烈を極め、二人の間には拳圧と眼鏡圧で発生した乱気流によって、眼鏡の形をした筋肉のような竜巻が発生したのだった。
取り巻くギャラリー達も驚愕に打ち震えている。
「や、やべえ! もうじき強制下校時刻だ!」
「つまりこの戦いも終わる!」
「なんてこと! 私今めっちゃトイレいきたい!」
「俺がトイレになってやるよ!」
「トゥンク♡」
などと、ざわめきが絶えない。
「そろそろ終わらせようか、生徒会長」
「いいとも、ならば次の一撃で終わりだ!」
そして二人の懇親の一撃が宙空でぶつかる。
止まる喧騒、動いているのは頬を撫でる風と、グラウンドの片隅で性行為に
静寂の中、ピキっと音がした。それを認識した瞬間から生徒会長の眼鏡がパリパリと壊れていく、完全に砕け散った時には、既に生徒会長は地面に倒れていた。
「俺の負けだ、大統領」
「眼鏡を筋トレして出直してくるといい」
「一つ聞かせてくれ、何故俺の告白を断った?」
「国に
こうして大統領と生徒会長の戦いは幕を閉じたのだった。
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