第12話 鼠の仁義なき戦い〜エピローグ〜


 月日は流れて。

 小島市より三ブロック離れた区画。ここは小島市程ではないにしても、比較的大きな街が栄えている。

 その街の外れにて、ポツネンと佇む小さな日本家屋があった。

 

 その家主は縁側で少し温くなったお茶を啜りながら、街から聞こえてくる鼠達の営みに耳を傾けていた。

 

 こうして街の音を聞きながら、ゆったりとした時間をすごすのが彼女の日常であり、生き甲斐だった。

 

 彼女……かつて先生と呼ばれ鼠を数え切れない程殺し、カーバンクルの分身までも切り伏せた龍殺しのエンジェロイドもどき、今やその片鱗すら見ることはできない。

 

 先生は剣を置いたのだ、最早戦う事に疲れ果てた。

 伍田平の切腹が終わった後、先生は街を出ていった。理由は色々ある、メリッサの顔が彷徨い歩いていると街の鼠が不安がる。またカーバンクル、又は旗下のステーギアが襲って来るかもしれない。

 云々。

 

 春紫、先生を作った子鼠は未だ意識が戻らずじまいだ。しかし三ツ矢が責任をもって必ず治すと言ってくれたのでひとまず任せる事にした。

 

 そして三ツ矢のツテを使い、新たな住居へ移住した先生。

 魔力を切る刃には、新しく柄が付いていた。といってもお粗末な材質で、とりあえず付けただけのシロモノだが。

 その刀は鞘に収めたまま、掛け軸と一緒に床の間に飾ってある。

 掛け軸には墨で『ふらいどぽてと』と書いてある。これは先生が書いたものだ。

 

「先生! てぇへんだ! てぇへんだ!」

 

 いつものように縁側でお茶を飲んでいた時、至福のひとときを邪魔する喧騒がやってきた。

 それは子鼠だった。この街には子鼠達による集団が幅を利かせている。

 どういうわけか、先生はこの子鼠達に気に入られたようで、ことある毎にお茶を邪魔してくる。

 

 先生は鬱陶しそうな目で子鼠を見つめる。


「大変なんだ先生! 変なのが来たんだ!」

 

 無言の訴えを無視して子鼠は続ける。

 

「今はガンさんが相手してますけど、なんかこう、打ち解けちゃったんすよ!」

 

 先生の目が怪訝なものを見るものになる。

 ガンさんとは、先生がこの街で出会った本物のエンジェロイド、とても力が強く、偽物に過ぎない先生は、やっぱ本物は違うなあと憧憬の念を抱いたものだ。

 そのガンさんがすぐに打ち解ける相手、少しだけ先生は興味を持った。

 

「おーい! せんせえー! いーるかーい?」

 

 噂をすれば何とやら、ガンさんがやってきた。

 

「ああ! 来たんですよ先生、さっき言っていた変なのが」

 

 とりあえず君は落ち着こう。ドウドウと手で落ち着くよう促す。とどいたかどうかは不明だ。

 

「ん? 庭から声がするな、こっちか」

 

「あっ、駄目だよアノイさん勝手に入っちゃ」

 

「と言いつつ入るラムさん」

 

 程なくして先生の庭に珍客がやってきた。

 それは先生とは似て非なる存在、カーバンクルから生まれ、カーバンクルへと反旗を翻す叛逆の徒、

 

 先生のようなジャンク品ではない、正規のエンジェロイド・デバイス達である。

 

 どうやら先生の元に静寂の二文字は訪れないらしい。

 

 

  〜to be Next Stage〜

 

 

 続きはスパ「」女本編で。

 

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