ウチの子デスゲーム 其ノ二
「俺はヨハンだ、こっちはスコッチ」
「よろしく頼む……ところで誰か煙草持ってないか?」
先程目を覚ました少年はヨハンと名乗った。どうやら考古学者をやっているらしい、自分と歳が変わらないのに凄いなあと宇佐美は心の底から感心した。
そしてペンギンの方はスコッチというお酒と同じ名前、ヨハンのボディガードをしているそうだ。
「煙草は無いなあ、学ランにされた時にそのての物は排除されたんじゃないのかな」
このペンギン、どうやらヘビースモーカーのようだ。
他の人達はどうしてるだろうか、宇佐美は他の目が覚めた人の元へ行こうと椅子から立ち上がったその時、激しい物音と争い合う声が教室全体に響き渡った。
「蒼本ぉぉぉぉっ!!」
「ははは、ヤーマ岡クーン、そんなに熱烈に愛さないでくれよお」
教室の後方、横倒しになった机の隣で男2人が組み合って……否、ヘラヘラと薄ら笑いを浮かべる男の首を、宇佐美と同じくらいの年齢の男の子が馬乗りになって締めていた。その顔は憤怒にまみれており今にも殺してしまいかねない。
実際殺すつもりなのだろう。
傍らにはかなり鍛えたのであろう、学ランでも隠しきれないほどの筋肉を持つ男が2人の様子を止めもせずに見守っている。
――なにこの3人、怖い。
「と、とにかく止めなきゃ……うわ」
流石にマズいと思った宇佐美は2人を止めようとするも、バランスを崩して周りの机を巻き込んで倒れてしまう。
杖がなかったのだ。宇佐美は右足不随ゆえに杖を探すも、その間にバランスを崩してしまった。
「あんた、もしかして脚が悪いの?」
「うん」
「仕方ねえ、俺が肩を貸すよ。身長差はまあ気にすんな」
「ありがとうございますヨハンさん」
ヨハンの肩を借りて2人の元へと移動する。移動中ヨハンが強い声で首を絞めている少年に語りかける。
「おいあんた止めろ、それ以上やるとそいつ死ぬぞ」
「殺すつもりだ! 放っておいてくれ!」
「尚更放っておけないよ! ダメだよ殺したら、人殺しは犯罪なんだよ!」
「こいつは殺人鬼だ! 殺せるうちに殺しておかないと!」
「それでも! 殺しちゃったら君も殺人鬼になっちゃうよ! それに裁判を受ける権利はある筈だよ」
「構うものか! 僕は警備兵だ、既に何人も殺して……」
「そこまでだ山岡」
最後まで言わせてもらえなかった。それまで成り行きを見守っていた筋肉質の男が突然割って入って首を絞めている少年を引き剥がしたのだ。
「頭を冷やせ、何も一般人の目の前で殺すことはないだろう」
「……あぁ、そうだな。すまなかった。僕は山岡泰知、君は?」
「上原宇佐美です。さっきは事情も知らずに生意気な事言ってごめんなさい」
「いや、おかげでまだ人間でいられてるよ。ありがとう」
続いて筋肉質の男が前に出る。いつの間にか首を絞められていた男の腕を掴んでホールドしていた。
「俺は若宮隆明、そしてこいつが」
「私は蒼本圭佑、殺人鬼さ。好きな食べ物は処女膜、愛用の抱き枕は手足と頭を切り落とした美女の肉体。よろしくね」
想像以上にヤバい男だった。
「俺はヨハンだ。しっかし宇佐美のような純粋少年は久しぶりにみたぜ」
「確かに」
「奇獣だらけの戦場にいたらまず出会えないな」
「なんか、褒められてる?」
それはさておき。
一旦落ち着いたところで残りの2人が前に出てきた。
一人は強面の青年、一人は小柄な青い髪の少女、アンバランスな2人が前に出て教卓の前に並ぶ。
「んじゃ最後は俺達だな。俺は未南雲優、稲山組若頭補佐をやっている。まあよろしゅうに」
――ヤ、ヤクザの人!?
言い様もしれない恐怖が宇佐美と枦々の身体を駆け巡る。周りを見ても他の面子は狼狽えた素振りはない。
「ほう、そこの障害者とちっこい娘の2人以外全員カタギじゃねぇな?」
「へぇ、よくわかるわね」
「まあな」
「ほな最後はウチやな、ウチはリーヤ、大魔法使いになる予定のリーヤや!」
エッヘンと彼女は胸を張った。
何はともあれこれで全員の顔合わせと自己紹介は済んだ。果たしてここはどこなのか、疑問は尽きないが、まずここにいる人達と仲良くなれるよう頑張ろう、そう決意して宇佐美は誰にも見られない用に拳を握った。
そしてその声は突然スピーカーから流れた。
「皆さんお目覚めですか? グッモーニン! では早速お伝えします。
あなた達は数ある平行世界からやってきた戦士です。
そしてあなた達は殺し合ってもらいます。
どうです? 素敵でしょ?
ではこれからゲーム説明を行います」
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