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鯵哉

プロローグ



「もう来ないで」


右手に左手を重ねられた。

左は彼女の利き手だ。昔から手に触れられるのを嫌がった。

白く細い指は少し力を入れただけで折れそうで、平気でバラバラになりそうだった。それを感じたのはいつからだろう。


「次来たら、」


普段あまり笑みを見せないのに、微笑んでいた。今日は体調が悪くなかったようで、桜色の唇がそれを示している。

不健康なくらい白い顔がこちらの顔を覗いている。その瞳の奥を見られている気がした。


言われたことを思い出していた。

その唇で紡がれた言葉を。


もう来ないで。

次来たら、


「殺すよ」



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