やさしい雨

雨のなか子供が独りで泣いていると、雨女がさらいに来るよ。
そんな言い伝えが残る農村で育った少年《セン》。

穏やかな暮らしを育んでいたその村を災害がおそう。貧困と飢餓に耐えかねたセンの家族は、人減らしのために末の弟を手放すことにした。

悲しむ母と幼い弟の姿を見かねたセンは、自ら森へ行くことを選んだ。

雨に濡れる深い森のなか、さ迷うセンの前に雨女が現れる。一緒においでと白い手が差しのべられた。

年齢よりも少し大人びた処のある少年センが、雨女につれられて天界と人の世の狭間に浮かぶ世界、《四宮》でそちらの住人になるまでお話。

＊前作『白嶺に懸かる月』の世界観を共有しております。
　後半に兎の姉妹も出てきます。物語自体は完結しております。
１２月１５日に最終話を公開予定です。
『雨音く』へ続きます。