(nil)さん

息子は、なんでも「~さん」をつける。

僕がそうだからなんだけど。


「いぬさん」

「ねこさん」

「ばいきんさん」

「むしばさん」


ばい菌と虫歯にさんづけは必要ないかもしれないけど。


で、最近、トイレに入るとき(明かりが消えているので、誰も入っていないことは分かっている)に、ドアをノックして、「さん!」と言い、ついでにしまっている便座をノックして「さん!」と言うおふざけをしている。


誰もいないことが分かっているので、名前を呼ぶこともできないので、おそらく「空集合さん」と言いたいのだろう。


ゼロの再発見である。


nilでもいい。


Noneでもいいけど、やっぱりnilのほうがいい。


あるいは、ヴィトゲンシュタインの(以下略


そんなわけで、言語を発するのが苦手な彼ではあるけれど、彼なりに言えないものや概念を回避しつつ、それはそういうものとして、言えるところは言おうとしているのは、よいことだと思う。


そしてここまで書いて、記事件名の(nil)について、カッコをつけたら式になっちゃうから空じゃないじゃん、と思った。

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