パソコンを与えてみた

ダウン症というか、言語発達遅滞とパソコンの話。


息子の言語能力について、整理しておこう。8歳8ヶ月時点のものである。

・こちらの言う事は理解しているが、ために落ち着いて話さないと理解できないことがある。また、話の内容に興味があるかどうかで理解度がかなり違う。

・発語は少ない。ただ、小学校に入ってから増えたし、8歳半あたりから急に発語できる単語が増えた。文章も、3語文を言ったことはある。ただ、まだほとんどの発語が名詞単体。

・ひらがなはだいたいと覚えているが、まだ発音と文字の結び付きが完全ではない。濁音・半濁音は半分くらいか。片仮名は興味がある文字については一部分かる程度。

・ひらがなを書くのは、下手ながらもだいたいかける。ただし、音と結びついていない文字があるので、こどもちゃれんじの付録の、50音表を押すと音と書き順が出てくる機械を使いながら。


そういう状況なので、もしかしたら仮名入力ならキーボードを見ながらひらがなの入力ができるんじゃないかと思い、パソコンを渡してみた。


渡したのは、クロームブックである、ASUS Chromebook Flip C101PA、ヤフオクで中古で買ったが、2019年のモデルなので中古といえども十分使える。

キーボードは日本語配列で、タッチパネルつき。CPUはOP1というARMのCPUで、Cortex-A72x2, A53x4というbig.LITTLE構成である。


キーボード入力をローマ字からかな入力にして、息子に渡したところ、妻の名前をタイプした(2文字なので入力しやすい)。その後、僕の名前も入力しようとしたが、一文字抜けていた。おしい。

その後、好きなお友達の名前を入力した。

あとは、ぐちゃぐちゃキーボードをいじっていた。


文章にはとてもならないし、喋れる以上の単語は打てないけれど、思ったより頑張るなと思った。


次に、息子のgmailのアドレスに、僕からメールをした。それをみせて、「返事する?」と聞いたら、うんと答えたので、ここを押して書けるようになるよと教え、返信のウインドウを出した。

するとまた、妻の名前と僕の名前(一文字抜けている)をタイプして、「返信」をクリックした。

だから僕が彼から最初にもらったメールの返事は、「妻と僕の名前」である。


しかし、この頃になると飽きてきていて、パソコンのキーボードを「カタカタ、ターン」としたい気分になったのか、適当にぐちゃぐちゃっと打って、「返信」をクリックした。


今年のうちには、メールでなにかしらのやりとりができると嬉しいなと思っているが、期待しすぎだろうか。


パソコンを選ぶポイントを挙げておこう。まずWindowsとMacという普通のパソコンは最初から候補になかった。アプライアンス的なものにしたかった。そのほうが(多少でも)安全だし。Linuxベースで自力で作ろうかとも考えていたが、いまやデスクトップ環境を自力でスクラッチから作るのはなかなか大変な時代である。そこで考えたのが、クロームブックだった。自分の仕事がG Suiteに乗っかるようになって、乗っかってしまえばかなり楽だし便利だと分かったからというのもある。


クロームブックといっても色々あり、高いものはGoogleのPixelbookでかつては10万円以上した。最近はPixelbook Goという600ドル程度のものがでているが。海外から購入すると英語配列のキーボードになり、個人的にはそっちのほうがいいのだけれど、子供に使わせるのは好ましくない。なぜなら、このキーを押せばこの文字が出るというのが目で見て分からないからだ。ローマ字入力は当然できないので、どうしてもかな入力になるので、JISキーボードは必須になる。

実は、キーボードの配列もどちらを使わせるか悩んでいたのだが、いざその段になってみると、選択肢の余地はなかった。


もうひとつ、タッチパネルである。最近の子供は、タブレットやスマホで画面タッチができるのが当たり前になっているので、タッチパネルはつけておきたかった。

大きさも重要で、15インチなんてのは8歳児にはありえない。


ASUSのC101はタッチパネルがあるクロームブックの中では一番ローエンドで10インチのものだが、実際購入してみると、クロームブックの場合、マルチウインドウ的な使い方をすることはほとんどなく、Chromeのタブでアプリケーションを切り替えるという、タスクスイッチ的な使い方なので、10インチでも不足な感じがしない。


速度に関しては、あくまで体感だが、同じハードウェアに素のLinuxデスクトップを動かした場合よりも速いように思う。やはりウインドウシステムの違いか。音の録音再生も問題なく、サスペンド・レジュームも高速なので、これ実は最強のLinuxマシンなんじゃないかという気がする。


キーボードについても、十分だと思う。ASUSのEeeBook X205Tを持っているのだが、こいつはキーボードがペコペコでちょっと心配だった。でもクロームブックについては、文教向けでも考慮されているのだろう、まあまあ問題のない品質のキーボードだ。


また、2019年発売のクロームブックは、標準でLinuxのshell環境が使える。これを有効にすると、色々ダウンロードしてrootfsを作成するようだ。debian互換の環境が使えるようである。もっとも、これをまともに使おうとすると、ストレージが16GBでは心許ないと思うので、64GB程度は積んでいて欲しいが、それはずっと先のことだろう。


そんな感じで、クロームブックがよい感じだったので、自分用にもASUSの11インチを購入したのだが(ASUSはACアダプタが小さいのがよい)、古い機種だったので、今年でアップデートサポートが切れてしまう。そのうちもっと新しいのを買うかもしれない。


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以前テレビで、自閉症の男の子が、発語の補助に紙に書いたQWERTYキーボードを指で押しながら(見たところローマ字だった)その音を発音するというのをやっていた。その例については、実は懐疑的な意見もあるものの、僕は是非を語る資格はないので、その点については触れない。

ただ、発語が遅れている子の場合、特にダウン症は言語理解はあっても発語が遅れていたり、口の構造的に発語が下手だったりするので、文字を覚えると文字のほうが得意な子もいるのかもしれない。ためしにパソコンを与えてみると、意外と使えたりするかもしれない。


妻が講演会で他の支援学校の先生から聞いたところでは、その支援学校では生徒にキーボードタイピングを教えるのにポメラを使っているそうだ。本当はパソコンをひとり一台にしたいのだけれど、予算がないので、とりあえずタイピングだけでも覚えられるように、そして自分用の機械を持てるように、ということでポメラ。苦肉の策だと思うが、案外悪くないのかもしれない。


ちなみに、フリック入力だが、気がついたらなんとなくできるようになっていた。スマホはほとんど触らせてないんだけどな。不思議だ。


最近は絵文字が気になるようで。お母さん宛てのメールに、ハートマークを入れたがって聞きに来る。

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