そもそもダウン症とは何かっていう話

ここまで、つらつらと「うちの息子ときたらね」というテーマで書いてきたが、いやいやテーマなんてものは考えていなかったのだが、「ダウン症とは何か」という説明をしていなかった。


障碍児の育児エッセイだと、大抵その障碍はどういうものかという説明があるのがお約束なので、本稿でも書いておきたい。

ダウン症に対する読者の前提知識がまちまちなことは、当然想定しておくべきだ。


ダウン症とは、染色体異常の一種類であり、21番目の染色体が3本ある症候群である。19世紀にダウン医師がその存在を報告したため、ダウン症候群(英語ではDown's Syndrome)と名づけられているが、ダウン医師は「猛虎症」と命名して報告しており、阪神タイガースの勢いがあった時代の名残りを受けている。


違う。


蒙古症、つまりモンゴル人種みたいな顔をした症候群で、知的に劣ることから、あちらの人種にありがちな「黄色人種のように進化の途中で止まった状態」みたいな報告をしたらしく、当然のように批判を浴びたようだ。

そもそも、黄色人種にも同じ症状のひとは生まれていたわけで。

結局20世紀半ばになって、21トリソミーという先天的染色体異常であることが発見された。でも名前はダウン症。


覚えておきましょう、ダウン症の名前のもとになったダウン医師は、褒められるような医師ではない。


ダウン症は21番目の染色体の異常で、更に三種類のバリエーションがあったりするのだが、詳細はWikipediaを見て欲しい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4


うーん、見て欲しいと書いたが、この記事どうもちぐはぐというか、整理されていないな。色々文献を読んでいただくのがよいかと。


染色体が1本多いということは、それだけ遺伝子、すなわちたんぱく質の作成を発動させる命令が沢山含まれていることになる。この結果として様々な不都合が身体に生じる。

先天的なものもあるし、後天的にダウン症のひとに共通して発生するものもある。


たとえば顔つきが同じような傾向を示すのも、この過剰な遺伝子が原因である。


「顔つきが同じ」ってのは、ダウン症という特徴について幸なのか不幸なのか判断が難しい。多くの人でダウン症のことをなんとなく知っている人からすると、「ああ、あの同じ顔をした人のことね」という見方になる。しかし、実際個人個人を見ると、ダウン症の人でも顔や表情は全然違い、よくしたもので両親の特徴をよく受け継いでいる。


うちの息子なんかは、目元は僕にそっくりだし、耳や鼻や口は妻にそっくりだ。髪の毛のクセは僕のほうを受け継いでいると思う。


生命に関わらないところで、ダウン症の特徴として挙がるのは、主に以下の二点である。


1)筋肉の緊張が弱い。

低緊張と呼ばれる。通常の筋肉は、力を抜いている時でもある程度緊張しているらしいのだが(これは本当?)その緊張が弱い。結果的に力も弱く、運動能力の発達も遅い。また疲れやすい。


2)知的発達遅滞がある。

軽度から中度の知的障碍を伴う。正確には知能の発達が普通の子供の半分くらいのスピードで、発達指数が50程度。10歳になると、普通の子の5歳と同じくらい。


簡単かつそれほど否定的でない表現をするのであれば、「普通の子よりもゆっくり大きくなる子供」ということになる。


少し古い文献を読むと、ダウン症のひとの平均年齢は30歳程度と書かれていることがあるが、現在では医療の発達と早期療育の浸透により、老人と呼べる年齢まで長生きすることは珍しくない。平均という意味では、生まれた時の合併症で亡くなる率が減っていることも理由になるだろう。


いつもニコニコしていて、おだやかで人懐っこい性格。争いを好まない。

ただ、言葉の発達が遅れているため、他人とコミュニケーションをとりずらく、そのための処世術としてニコニコしているという側面もあるようだ。これは本人たちに聞いたわけではないけれど。


などと特徴を書いてみたが、実は個人差が非常に激しく、うちの息子のようにニコニコはしているものの、やんちゃで活発な子もいる。言葉の発達も個人差がバラバラなので、5歳でそれなりに会話ができるこもいれば、息子のようにほとんど文章になっている言葉が出ていない子もいる。


おそらく、今の時点でのダウン症の人のイメージと、これからのイメージとは若干変わってくると思われる。というのも、「早期療育」といって生後半年くらいから始める、運動機能や摂食、発語の訓練が行われるようになったのが、日本では1980年以降だからだ。


現在20代、30代のダウン症の人は、療育を受けて育っている可能性が高く、元気に活動する姿がテレビに映ることも増えてきたように思う。

ただし繰り返しになるが、個人差が激しいことは覚えておいて欲しい。


ここまで、当事者視点で気になりそうな「ダウン症は何か」という内容のうち、なるべく客観的に書けるものを選んで書いてみた。


最後に付記しておきたいこととして、ダウン症は染色体異常の中でもっとも数が多い。あるいみ障害児のマジョリティグループのひとつである。


それ故に、ある意味、分かりやすい。


先天的知的障碍の多くは原因不明らしいし、先天的障碍の種類は山ほどあるらしい。


ダウン症なんて簡単なものですよなどと言う気は毛頭ない。


しかし、僕が「自分の息子はダウン症である」と表明する時、脳裏には少数派の障碍の子供を抱える親のことが、どうしても浮かんでしまうのだ。




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