あなたの子供はどういう子ですか?

「さんさんさん」という本を読んだ。息子が1歳7ヵ月くらいの時だ。

ちなみにこの本である。

https://www.amazon.co.jp/dp/4101343853/


三人の息子が皆障害を抱えている母親のエッセイである。

長男が一番重く、寝たきりで、養護施設に入って介護を受けている状態だ。成人してしばらくして亡くなったらしい。


この長男について、「この子はどういう子か」と問われる箇所があった。

著者である母親は、答えに悩む。ずっと施設に入っているし、面会しても反応が乏しいくらい重度の障害なので、「どういう子か」という問いに困ったのだ。


しかし施設の人は、「この子はケーキが好き」とか「○○するとこういう反応をする」などと教えてくれる。それを聞いて母親は、「この子はこういう子です」と言えるようになる。


自分の息子はどういう子か、という問いに、自分なら何と答えるだろうかと、これを読んで考えた。

ゆかりご飯が好き、納豆が好き、アンパンマンが好き、足の力が結構強い。

語れることは沢山ある。

でも、それで全部だろうか。この子の全部を、僕は見れているだろうか。

とりあえず今の時点で、この子はこういう子ですと語れることが沢山あることは幸せなことなのだろう。でもそれは表層でしかないのではないか。

まだ言葉を喋れない彼の心の中まで、僕は説明できるだろうか。


院生時代に自分の研究テーマを簡単に紹介する必要に迫られる機会というのは沢山あった。今でも自分の仕事や書いている小説について端的に説明する必要に迫られることは多い。

自分の子供に対しても、この子はこういう子ですという紹介をする必要に迫られることがあるのだろうか。いやしかし、それは子供を枠の中に単純化することにならないだろうか。本人が自己を単純化して説明するのはいいのだが、それを親がやっていいのだろうか。


などという、七面倒くさいことを色々と考えたりしたのだが。


そういう面倒な話は全部とっぱらって、この子はこういう子ですって「良いところ、好きな物」を沢山挙げられることができたら、それはやはり幸せなのだろうと思う。

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