お父さんは心配性

子供を放置できるようになるのは、いつなのだろうと思うことがある。

放置というと言い方は悪いが、たとえば日曜日、勝手に出かけて遊んできて帰ってきてっていうのを、何の心配もなく送り出せるようになるのだろうか。


自分が子供の頃のことを思い出すと、幼稚園年長ともなれば、子供同士で遊びにいったり、ちょっと近所の店に遊びに行ったり、大人の目を離れてひとりでそれなりに行動していたように思う。

もっとも僕は近所が親戚や知り合いばかりで、幼稚園にあがる前から親戚の家を順番に回って上がり込んで遊んでいたらしいので、そういう意味ではかなり小さな頃から放置されていたのかもしれないし、そういう時代だったのかもしれないが。


僕は息子のことが常に心配である。心労である。保育園に預けていると、まあちょっと安心ではあるが、それでも何かやらかさないか心配である。

家にいても、何かやらかさないか心配である。

だから早く寝てくれるととても安心である。寝ている間は何もやらかさないので。しかしそういう時は早朝に起きたりする。そうすると勝手に起き出して何かやらかさないか心配であるが、こっちは眠いので起きれずにうーんうーん言っていたりする。


ストラテラとインチュニブを飲むようになってだいぶ落ち着いたと保育園の先生から言われた(その前はどんだけ落ち着きがなかったのかと)。

二種類も飲むのはどうなのかと主治医と相談し、インチュニブだけにしてみたところ、見事に落ち着きがなくなった。主治医と再度相談し、ストラテラ復活である。


ストラテラを中止している時に、それはもう落ち着かない時があり、保育園に向かう道での息子を見ていて気づいたのだが、道路を走る車の音、道端のでっぱり、生えている草、色々なものに反応してそわそわとしているように見えた。

ADHDのひとは大量の情報の海に晒されているような感覚のなか、わーっと思いながら生きていると聞いたことがある。それと同じことが、未発達な彼の脳と五感の中でも起こっているのかもしれない。だとしたら、ストラテラを中断したのはかわいそうなことをした。


そういった、「病気だから」という部分はあるのだが、それにしても僕は多分心配しすぎであると思う。これは子供側の問題ではなく、僕側の問題で、もしかしたら何かしらのノイローゼとか神経症とかそういう状態なのかもしれない。

これは僕が自分で解決するべき問題だ。他の誰のせいでもない、僕自身の問題である。


という「僕がおかしいんじゃないの?」という部分を差し引いて、ADHDの薬が落ち着いて息子も落ち着くようになったとして、安心して目を離せるようになるのは何歳くらいだろうかと考える。


普通の子供だと、小学生だろうか。小学一年生くらいになると、わりとひとりでうろついている気がする。鍵を持たせているかどうかは家の方針とか機構による気がするが。


かりに6歳とする。


息子は現在6歳だが、発達年齢は半分の3歳ちょいだ。6歳に到達するには、3年の倍、あと6年かかる。


6年は長いな。


いや、本当に長いな。


あと6年、僕は心配し続けるのだろうか。それとも、もっと手前で安心できるのだろうか、それとももっと先まで心配を続けるのだろうか。


以前、Eテレのバリバラで、ダウン症の高校生位の男子数人が自分たちだけで遊びに出かけるという、「はじめてのおつかい」ダウン症少年少女版というのをやっていた。その番組でお母さんたちが口を揃えて「ひとりで出かけられるなんて、思ってなかった」みたいなことを言っていた。

番組に出演したダウン症の男の子は、ちゃんと喋ることもできるし、ダウン症の中でも発達がよい子だと思う。それでもひとりで行動させるのは心配なのだ。


どうもダウン症の中でも言葉が遅めっぽいうちの息子は、迷子になっても自分のことを説明できないだろう(もちろんリュックにヘルプカードは入れてあるが)。言語の力は改めてすごいと思うと同時に、せめて言葉で周囲に助けを求められるようにならないと、放置できないなとも思う。


いつまで心配するのだろうということを心配しはじめると、心臓がカリカリと音をたてて削られる感覚になる。


先は遠いな。


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