遍在的アホ男子

成長や発達について、ダウン症の特徴を簡単に言うと、普通の子供の半分のスピードで成長するという一言につきる。


これを、「可愛い期間が長い」と肯定的に言うひともいるが、イヤイヤ期が長かったり、同じ歳の子ができることがなかなかできるようにならないという事実もある。


どんな子供でも手がかかる時期というのがあるのだが、それが倍の時間かかるということになる。


ただ本稿で強く強調しておきたい点があり、それは実は多くの母親はあまり知らないことであり、それでいてとても重要なこと。


「男子とは、基本的にアホである」


事実かどうかは知らないが間接的に聞いた話として、知的障碍を持つ子供の母親が、子供が排泄物(もうちょっとカジュアルな表現をすれば、ウン=チである)を手で持って食べたのを見て、「ああ、知的障碍だからこんなことをするのか、もう駄目だ」と思って心中した事件があったとか。


だけど、子供ってわりとこのレベルのことするんですよね。健常児でもアホな奴はする。うちのアホ息子は、最近トイレでウンチしたあとお尻に指つっこもうとするし。多分本人は拭く練習なのかもしれないし、フロイト的肛門期なのかもしれないが。


母親からするとびっくりするようなアホなことを、男子はします。

ダウン症の男子だと、それがちょっと長く続くかもしれません。この先は僕は目下絶賛アホ男子と格闘しているので、まだ分からない。


たとえば、「児童館に行くから着替えよう」と言ったら、ものすごく喜んでパジャマを脱ぎ始めたので、はてさて今日は何を着ようかなと服を選んで振り返ったら、全裸で仁王立ちになった息子がいたりとか。


隙間があったら、カード的なものをつっこんでみたりとか。


棒を持ったら無敵になった気分とか。


僕はまあ一応男子を経由しているので、アホ男子の行動を見ても、「うん、まあ、気持ちは分かる。分かるだけに、無下に叱れない」と思うのだが、妻はどうしてそういう行動をするのかがまったく理解できないらしく呆然とすることがあるらしい。


だから、ダウン症の男の子を育てていて、「この子はどうしてこんなことをするんだろう、やっぱりダウン症だからなのかしら」と悩むお母さんがいたら、あえて強調しておきたい。


あなたの息子さんがアホなことをするのは、ダウン症だからではなく、アホ男子だからです。そして男子は基本的にアホです。


これはもう、ダウン症とは関係なしにしょうがない。


「じゃあいつまで続くのかしら、小学校に入ったらまともになるのかしら」と思ったお母さん、甘いです。


僕は小さい頃、段ボールで工作するのが好きで、しかも自分が中に入れるくらいのもの(ロボットとか)を作って遊んでいた。小学校を卒業するまで、そんな遊びをしていた。当時、女の子が家に遊びに来た時に自慢げに見せたりしてた記憶があるが、あれって女子からするドン引きだったのではないだろうか。


あと小学校五年生の時に、友人とふたりでゴムボートに乗って近所の川を下っていき、最終地点の貯水池まで行ったことがあった。川の長さは1.5kmくらいか。今考えると、無茶苦茶だなと思う。


というわけで、僕は小学生の息子がゴムボートに乗ってそこらの川を流れていき、多摩川に合流して東京湾に到達するところまでやらかすのではないかと心配しているのだが、もっと心配なのは僕はそれを怒れるだろうかということだ。


むしろ自分がアホだったことを忘れている父親がたまにいるような気がするのが不思議なのだが、考えてみれば僕が生息している技術職とか研究職とか小説家とかそういう世界は、アホのまま大きくなっている大人が(自分も含めて)沢山いるようにも思うので、普通の男性(モテ系)はアホであることを忘れてしまうものなのかもしれない。


だいだい女子のほうにも責任の一端はあると思っていて、小学校高学年くらいだと「男子ってホントバカ」みたいな態度をとるくせに、中学後半とか高校生くらいになると、そのバカでアホな男子と恋に落ちたりするわけだ。


僕の息子はアホのまま大きくなる系男子だろうとは思うが、そんなアホ男子がそのうち彼女とか家に連れてくるんだろうなあと思うと、今から複雑な心境である。


とりあえず何かの時のために、全裸で冷蔵庫を漁っている息子の姿はデジカメで撮影して保存してあるので、覚悟しておいて欲しい。



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