物語を作る力

この話も、きちんとストーリーだてて書けるほど整理ができていないので、断片を並べて書いてみることにする。


物語を創作する能力というのは、5〜6歳くらいの時に「お話づくり」をどれだけやったかで決まってしまう、という説を読んだことがある。

翻って自分はどうだったかというと、そのくらいの年齢の時には、毎晩寝る前に「夢」と称して空想のストーリーを頭の中で即興で作ってその物語の世界を楽しんでいた。

そして息子は、というと、どうなのだろうとずっと思っていた。人形遊びやトーマスの玩具で一緒に遊んでいる感じから、ストーリーのある遊びはできているのだけれど、その創作とか広がり具合はどれくらいのものなのだろうと思っていた。なにせ言語の表出が少ないので、言葉で組み立てる物語が彼の中にどの程度できているのかが分からない。


反復を行うことが多い。このぬいぐるみが「えーん」と言ったら「どうしたの?」「ごはん」「じゃあ食べなさい」「ばくばく」みたいなのを、「お約束」としてやる。多分子供は、「お約束」というのが好きで、安心するのだろうなと思うから、面倒ではあるけれど、付き合う。

一方で、この「お約束」は物語なのだろうかと考えていた。

単なるパターンであって、ストーリーの断片とは違うのではないか。

しかし、そのお約束が生まれた瞬間というのはあって、その時の息子の顔は「そういうリアクションをされたら次はどうしようかな」と思案しており、そうして作られたお約束のパターンは、やはり物語の断片と言ってよいのではないかと思う。だから、こういうのも物語を作る訓練になっているのではないだろうか。


ハロルド(トーマスに出てくる飛行機)が仲間になった。と言っても、マクドナルドのおまけのちょっと安っぽいやつ。だけど、プロペラは回る。

その夜、いつものようにすごろくをしていると、ハロルドが飛んできて、すごろくのコマをつれて飛び去ってしまった。コマはトーマスの車庫に隠されてしまい、しかたがないので僕はハナちゃんを連れてコマの救出に向かった。

なるほどね。

ハロルドは「飛ぶ」という機能を持つ。ゆえに、物を運ぶ、空中から探索する、といった「役割」(ロール)を持つ。新しい機能と役割を持ったキャラクターが追加されたことにより、物語は拡張された。

ということだ。

彼の内的言語によって物語がどのように構築されているかはわからないが、少なくとも物語の構築は実際に行われている。あるいは、人形やおもちゃを操作することが、彼にとっての物語の表出なのかもしれない。


これは、あれだ、箱庭療法だ。


トーマスがいて、しまじろうがいて、ハナちゃんがいて、お父さんもお母さんもいるこの家は、彼にとって楽しい箱庭で、ここからは沢山の物語が生まれてふわふわとどこかに飛んでいくのだろう。

今のままで、いいんじゃないかな。



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