「ことば」について

SF作家クラブのネットマガジンであるSF PrologueWaveにて、ショートショートを書かせていただいたのですが、これについて、補足というか本文からはみだした部分について少し。


タイトルは「消えてしまったメッセージ」です。


http://prologuewave.com/archives/6269


さて、オマージュの元ネタは、みんな大好きテッド・チャンの「あなたの人生の物語」。「メッセージ」という題名で映画化されました。


「あなたの人生の物語」は、宇宙からやってきた謎の物体から言語らしきものを教わるという内容で、そのあたりを僕の作品でもネタにしています。元ネタが扱う言語と僕の作品が扱う言語では、その役割がだいぶ違います。


僕の作品での「言語=ことば」というのは、おそらくよりプリミティブで原始的な「ことば」、それこそ言語が生まれたばかりの頃の役割とか目的に基づいた「ことば」なのだろうと考えています。


ことばというのは、実に不思議です。


息子はまだ、いくつかの単語とまれに二語文しか発語が出ていません。しかし、本人は自己主張や他人とコミュニケーションをとりたいという気持ちが強くあります。また、家の中や慣れている人との間では、ジェスチャーやサインなどを併用して、一定の意思疎通ができています。


正直、世界が自分たち三人だけなら、それはそれで成立するのに、とすら思います。


しかし世界は三人ではありません。なにより、息子は人間の中で生きてかないといけなくて、同時に彼はそれを望む種類の人間のように見えます。


だからやはり、彼は「ことば」を学ぶ必要があり、僕等はそれを教える必要があるのだろうと考えます。


時間はかかるだろうと思いますが。


この作品は、ことばをモチーフにしたSF小説であると同時に、今現実に僕等が直面している問題意識を切り取ったテキストでもあるのです。

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