マカトン講習会に行ってきた

マカトンについては、以前も少し書いた。今回、正式なマカトン講習会(ワークショップという名前だったが)に参加したので、記録として整理しておこうと思う。


マカトンとは!?

から始めよう。


マカトンは、主に聴覚・知的・身体障害者によるコミュニケーションを促すための手段として、イギリスで生まれた。手話の簡単なものという表現をよくされるが、実際手話と共通のサインも多い。特徴としては、通常の言語でのコミュニケーションと併行して用いられることである。マカトンでは助詞、助動詞に相当するものはほとんどない。その部分を口頭で補う。


ちなみに、マカトンという名前は、3人の考案者、Margaret Walker, Kathy Johnston, Tony Conforthの名前の先頭部分をつなぎ合わせたものである。AWKと同じだな。


マカトンの歴史は実はそれほど長くはなく、1972年に145語のサインが作成され、1976年に350語に拡張され、1985年にシンボル集が出版された。日本では、1989年に日本版のサインが選定、1997年に日本版のシンボルが選定された。


手話と異なるのが、マカトンの対象者は、音声言語の表出が弱い知的障害・自閉症スペクトラム障害・運動障害・重複障害などである点だ。このため、自然なジェスチャーに近いサインを使い、細かな動きや、複数の動きを組み合わせたサインは用いず、音声言語を同時に提示することで利用者の言語発達そのもの補助しつつ促すために使われる。


現在、核語彙として330語が定められている。これに加えて、学校生活や、その人の生活に合わせて必要なサインやシンボルをオプションとして追加していく。


マカトンでは、サインとシンボルを併用することが推奨されているが、僕らについては生活パターンを考えてシンボルを利用するケースは少ないと考え、サインを主に熱心に学習した。


次に、どうすればマカトンの学習ができるのか。


公式にマカトンを教えている機関は、日本マカトン協会のみである。事務局は旭出学園にある。それ以外、たとえばNHKやYouTubeでも教えればいいのにと思うのだが、駄目らしい。おそらく、変なアレンジバージョンとかサインが崩れるのを忌避してのことだと思うが、今回教わった旭出学園でも、先生ごとに微妙にサインが違っていたりしたので、変なこだわり捨てて誰でも勉強できるようになればいいのにと思う。


旭出学園では、マカトン法のワークショップとして、基礎I、基礎II、応用の三段階のワークショップを、それぞれ年に2〜3回開催している。関東と関西の二箇所で開催しているのだったかな。細かなことは、申し込みをした妻は知っているが、僕は把握していない。自分で調べて欲しい。ネットで検索すると、21世紀とは思えないホームページが出現する。


で、そのワークショップに、今回行ってきたわけだ。今回は、基礎Iと基礎IIが2日連続で開催されたので、その両方に参加した。


あまり詳細なレポートをするつもりはないのだが、もし受講しようと思っている人は、是非とも基礎IとIIは両方受けたほうがよい。このふたつで、最低限が学べ、応用までやると核語彙が学べるという仕組みだ。また、前述のような理由なのか、DVDなどは存在しないので、実際に動きを学ぶにはワークショップに参加するしかなく、そしてやっぱり動きを見たほうが覚えられる。ゲリラ的にYouTubeに違法動画作って上げようかなと思うくらいだ。


10時から16時まで、二日間、やりましたよ。がっつり勉強してきた。結論としては、受講して良かった。覚えるには、これが一番の近道だ。本で覚えられないかについては、核語彙集のテキストが現地で販売しているので、それは買っておいたほうがいい。というか、現地か通販じゃないと買えない。AmazonでもAli Expressでも買えない。


せっかく覚えて来たので、家で使ってみるわけだ。


一番よかったこと、そしてうれしかったことは、子供としゃべるのが苦手な妻が、ちゃんと子供を前にして相手のペースで会話しようとしてくれたこと。外国語と同じで(彼女は英語だとちゃんと交渉とか人並みにできるらしい)、使える言葉が少ない分、ゆっくりと分かりやすい表現を選んで使う。子供のほうも、自分に伝えようとしてくれていることが分かるので、ちゃんと聞こうとする。会話ができれば、お互い嬉しい。よいことずくめである。


これまでも、親子セミナーなどで教わった簡単なものは使っていたけれど、ワークショップに参加して表現できることが増えたことと、「なんとなく」から「これでよい」に知識が変化したのがとてもよかった。


また、日本手話と共通する表現も結構あると聞いて調べてみたら、やっぱり普段使っているマカトンのいくつかは日本手話と同じで、同時に手話にも興味が出てきた。僕の行きつけの美容院は、耳が聞こえない人たち(と聞こえる人もいる)がやっているのだが、そこでのやりとりでマカトンと共通する手話を使ってみたら通じたので、嬉しかった。言語を覚える醍醐味である。だから、そのうちモチベーションが維持できたらNHKの手話入門をやってみようかと思っている。


そして、親がマカトンを使うようになって、子供のほうもそれを理解できるようになると(息子は、聞く方はだいたい理解できているのだが、発語が遅い)、するりとマカトンを覚えて使ってみせたりする。子供、すごい。そして、言語、不思議。口からは出ないのに、手で表現できる。概念としては、この子の中にはちゃんと言葉があるのね。それを少しでも引き出せてあげれてよかったよ。


まとめとしては、

・子供の言語発達に遅れを感じたら、マカトンは効果的だと思う

・マカトンを覚えるのなら、ワークショップにがっつり行ったほうがいい

・でも今の時代に現地に行けというのはどうかと思うので、テレビ、DVD、ネット動画で独習できるようになって欲しい


そんな感じ。



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