046〜050
046話
#twnovel
桜花姫、と呼ばれた虎は、匂いを嗅ぐ仕草をした。コーヒーの香りを嗅いでいるのかな、と思っていると、こちらへ視線を向けた。バッチリ目が合う。射抜くような、鋭い眼光。僕は若干、恐怖を覚えた。「ヒトか。どうりで人間臭いと思うたわ」怒りのこもった、しかし美しい声だった。
047話
#twnovel
「あのー…。何かご用ですか…?」桜花姫は僕の元まで歩んでくると、じぃーっと僕を見つめる。いや、睨んでいる、と表現した方が正確かもしれない。今にも喰われそうで、背筋を冷や汗が伝った。「姫君、お客様で遊ぶのも程々にしてくださいな」ハルさんが困ったように微笑んだ。
048話
#twnovel
「ハルよ。儂は、大嫌いな人間共に、憩いの場を荒らされたくないだけじゃ」桜花姫は、ここをいたく気に入っているらしい。ハルさんは彼女の喉元を撫でた。姫は、まるで猫のように顔をすり寄せてハルさんに甘える。兎獣人が、虎を可愛がっている--なんとも、シュールな光景だ。
049話
#twnovel
「貴女の心の傷は、まだ癒えていないのね…。でも、この店に来る人達だけは、信じて。私の前では誰も、貴女を傷つけないから」哀しみを含んだハルさんの言葉に、姫から怒気が消えた。「…そうじゃったな。--そこの小僧よ、からかって悪かったの。詫びに、儂が一曲披露しよう」
050話
#twnovel
穏やかで心地よい歌が、店内に広がる。兎亭の客たちは、美しい歌声に酔いしれた。「桜花はね、私の旧友であり、うちの店の歌姫なのよ。いつもは哀しい曲ばかり歌うけれど、今日は違うみたい」ハルさんは、朗々と歌う桜花姫を見守りつつ教えてくれた。「きっと、貴方のおかげね」
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