006〜010

006話

#twnovel

「ソメイヨシノになりたい」彼女が言った。それを言うならば、桜になりたい、ではないか?僕が疑問を口にすると、あくまでソメイヨシノになりたいのだそうだ。「あれは、接ぎ木や挿し木で増えるから。花は、どこかで咲くの。永遠に」桜を見るたびに、彼女を思い出してしまう。


007話

#twnovel

変わった名前の喫茶店に、ふらりと立ち寄った。微かに煙草の香りがする店内には、クラッシックだろうか、緩やかな旋律がBGMで流れている。初めて入る喫茶店では、ブレンドコーヒーを注文するのが私流だ。今回もブレンドをたのむ。美味い。久しぶりにブラックで飲みほした。


008話

#twnovel

地上の世界を旅していたある時のこと。「私は、いつも不幸だ」と、嘆いている人の子に出会った。君は、気がついていないのかい?そう尋ねると、人の子は首を傾げた。自身の肩に、小さな青い鳥がとまっているというのに。青い鳥の体重は、随分と軽いようだ。


009話

#twnovel

雨が、嫌いだった。冬の雨は冷たくて凍えるし、夏ならば湿気で肌がベタベタするし髪の毛はうねるし。でも、ある時に、貴方が雨が好きなのだと知ってから、雨の良いところを探してみた。私は貴方にはなれないけれど、貴方が好きなものを、私も好きになってみたいと思った。


010話

(お題『ノイズ』『ゆとり』『ワイシャツ』)

#twnovel

ハンガーからワイシャツをひったくる。夏服の制服に身を包み、若干ノイズ音が混ざるイヤホンを耳に差し込んだ。私たちの学年は、最後のゆとり世代と呼ばれているが、私はしっかりしている方だ。通学路を歩きながら、そう思っていた。が、前言撤回。……新学期、明日からだった。

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