STEP00:〈始まりを紡ぐためのエピローグ〉

【01】街外れの丘にて

怪盗「ということでだ。本当なら祝賀会くらいは開いてやりたいところなんだけど……」


商人「私と眼鏡は街に近づいてくる魔物を返り討つ。それくらいならどうにかなるからな。きついのはゴーレムだ。少女達にはそっちを誘導してもらいたい」


少年「誘導って……」


姫「ほら!騎士団から馬を借りておいたよ!乗り方はわかる?」


少女「……」ヒューヒュー


少年「乗れないんだね……」


姫「少年くんは?」


少年「親の手伝いで馬車に乗ることもあるので……一応乗れますけど……」


姫「よし、じゃあ少年くんは馬をよろしくね!それとー、これ!」スッ


少女「これって!もしかして!」


王「用意しておく、と言ったであろう?冒険者証明の手形じゃ。それを見せれば大抵の街や国に入れる。同行者である少年くんも問題ないはずじゃ」


少女「あ、ありがとうございます!」


少年「でも、どこに向かえばいいんでしょう?」


商人「魔王軍は北から南下してきている。ここより南に行ってもここが途中経路になるし、逆に北に行けば鉢合わせになる確率が高い」


少年「つまり、西か東へ?」


眼鏡「……東に、魔装具の研究が進んでいる大きな街がある」


怪盗「あぁ、あそこなら周りも大きなバリケードに囲まれてるし安全かもしれないね。なんせそのバリケードすら魔装具技術の結晶とすら呼ばれているらしいし……」


眼鏡「……私たちも、後から追う」


商人「眼鏡、魔装具に興味があるだけだろ?」



鍛冶屋「やったな」


少女「はい!」


鍛冶屋「ほら、これ。渡そうと思ってたんだ」カチャッ


少女「……剣?」


鍛冶屋「あぁ、自信作だ」


少女「あっ、これ!マゼンタベリーの!」


鍛冶屋「あぁ、あのときに持ってきてくれたやつを使った。ちなみに装具のランク的には……Sだな」


少女「S?」


鍛冶屋「最高傑作ってことさ」


少女「そ、そんなすごいものを!」


鍛冶屋「いーんだよ。俺はお前にあげたいと思った。そいつは作ってるときからそう思いながら作ってたんだからお前のもんだ。……それとな、これはサイズが合うかわからないんだが……」



少女「えへへ、おしゃれになったねぇツルギさん」


剣「ふむ。私もいくつもの鞘に収まってきたが……これは良い鞘だな」


鍛冶屋「あ、ありがとよ。……とは言ってもうちにあったもののなかで合いそうなもんを引っ張ってきただけだからジャストフィットってわけにはいかないだろうけどな」


少女「何から何まで……ありがとうございます!」


鍛冶屋「ははっ。お礼に帰ってきたときはそのツルギさんをじっくり見せてくれ。ついでにツルギさん用の鞘も作ってやるよ」


少女「……はい!」



少年「……準備はいい?」


少女「うん!お父さんやお母さんにも会ってきた!」


少年「ぼくもだよ……ついでに大剣も持ってきた」


少女「八刀流はどうするの?」


少年「流石に大剣と一緒に持ってくるのは……重いかなって……」



…………


「うぉー!しょーじょちゃーん!寂しくなるよー!」


「さっさと帰ってこいよー!」


「少女ちゃーん!結婚してくれーー!!!」オイバカッダカラヤメロッテ


「またねー!」


「寒くなるまでには帰ってきなよー!」


…………


少女「……照れくさいね」


少年「……うん」



少女「さてと、相棒さん?」


剣「相"棒"ではなく愛"剣"と呼べ」


少女「えー。かっこいいのにぃ」


少年「そういう意味ではないんだけどね……」


少女「よぉーし!じゃあ思いっきり魔力を解放しちゃおー!」


剣「うむ」キュインキュイン


少年「じゃあ……」フフッ


少女「うん!」ニコッ


「「行ってきまぁす!!!」」


……「「「いってらっしゃい!」」」……



パカラッパカラッ……


ポワァァァアアアアア…………


眼鏡「……通った後に、花畑」


怪盗「そういえばあの剣、初夏の頃に自分の周りに樹を生やしていたね。魔力がそのまま自然に影響してるのかな」


商人「案外魔力とは関係なくて、自然もあいつらを送り出してやってるだけなんじゃないか?」

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