【09】街外れの丘にて

姫「準備はいーいでーすかー!!!!」


……「「「うぉぉおおおおお!!!!」」」……


少年「うわっすごい声量……」


眼鏡「……耳が、きーんって……」キョーカマホーキョーカマホー


商人「はっはっは。これも少女のアイドル力の力だな」


少年「アイドル力って……」



少女「さぁて、ツルギさん、覚悟はいい?」


剣「流石にここまで多くの人間に引っ張られるのは初めてだが……いつでもよいぞ」


少年「よーし、いくよ?」


姫「いきまーすよー!さーん!」


……「「「にーぃ!」」」……


……「「「いーち!」」」……




……「「「うぉおおおお!!!!!」」」……


エーイ!サァー!ホーイ!サァー!


「これちゃんと引っ張ってんのか!?びくともしねぇぞ!?」


ビリッバチバチッビリッ……


「足下見てみろよ、魔法結界は破れかかってるぜ」


「うぉっ!マジじゃねぇか!よぉーし!このまま引けばいいんだな!いっくぞぉおおお!!!」


……「「「うぉおおお!!!!」」」……



〈眼鏡の強化魔法!村人の攻撃力、防御力が倍加!〉


眼鏡「……キリがない」


怪盗「大変そうだねぇ」


眼鏡「……何やってるの?」


怪盗「見物かな。こういう泥臭いのは苦手なんだよ。そもそもボクはこの街の人間じゃないしね」


眼鏡「…………」ムッ


怪盗「まぁまぁ、そう睨まないでおくれよ。ボクはキミにこれを届けに来たんだからさ」キラン


眼鏡「……これは?」


怪盗「婚約ゆびwゲフッ」ドスッ


眼鏡「……これは?」


怪盗「いきなり蹴らないで欲しいなぁこわいこわい。眼鏡ちゃん意外と容赦が……ごめんごめん。それは魔法の全体化の指輪だよ。消費魔力もある程度抑えられる作りになっている。いいお宝だろう?それはちゃんと後で返しておくれよ?……そういえば前の指輪はどうしたんだい?ほら、魔力の……」


眼鏡「……まだ、使ってない」


怪盗「ふーん、そっか。つまんないな

。じゃあボクは他のとこも見回ってみるよ。体調の悪そうな人がいたら引き抜いておく。それだけでも役に立つだろう?」


眼鏡「……」コクン


怪盗「それじゃあね」


眼鏡「待って」


怪盗「……?どうしたんだい?」


眼鏡「……その、ありがとう」


怪盗「……ふふっ。どういたしまして」



〈眼鏡の全体強化魔法!全員の攻撃力、防御力が倍加!〉


〈眼鏡の全体強化魔法!全員の攻撃力、防御力がさらに倍加!〉


…………


「これ、ほんとに強化魔法効いてんのか!?最初から変わった気がしねぇぞ!?」


「いいからひっぱれ!!!!」


「くっそおぉおおおおお!!!!抜けろぉぉおおおおおお!!!!」


……「「「うぉおおおおお!!」」」……


…………


メリッバリバリッビリッバチビリッ


…………


少女「ツルギさんっ…………!わたし……気づいたんだ……!」


剣「何に……だっ……」


少女「わたしね、今まで自分の思いしか背負ってなかった……!」


少女「わたしは、わたしのやりたいことしか背負ってなかった!わたしは、わたしの道しか歩いてなかった!」


少女「……でもそれじゃ、ダメなんだよね!」


剣「……」


少女「わたしね!今、最高に幸せなの!……わたしひとりじゃなくて!みんなの思いも背負って頑張ってる今が!」


剣「……」


少女「だから、わたしはわたしのためじゃなくて……みんなのために……街を守りたい……!わたしの見えてる世界をぜんぶ守りたい……!」


剣「……私は…………」


ビリッバチバチッビリッビリバチッブブッ


少女「いや、違うかも。……えへへ。ちょっとヒーローぶっちゃったかな……」


剣「……!」ビビビッ


少女「わたしは、わたしの道じゃなくて……わたしだけの道じゃなくて!みんなで、みんなの道を歩いていきたいの!」


少女「わたしだけじゃなくて!!!みんなごと、世界ごと、幸せにしたい!みんなで幸せになりたい!」


少女「ずっとずっと!みんなで一緒に歩いていきたいの!」


少女「たぶん、それだけだった!!でも!それじゃ……!!!!」


ビリッビリバチッビリビリッ


少女「それだけじゃ……ダメかな……?」


ビリッバチバチッビリッ……ズッボォォオオオオンッッッ!!!!

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