【06】城にて
~翌日~
少女「おはようございます!」
姫「おっ。来たね!」
王「ふぉっふぉっふぉっ。おぬしが少女か」
少女「えっ!……えっ!?お、王様!お、おはようございます!」
王「ふぉっふぉっふぉっ、そこまでかしこまらなくてよいよい。娘から話は聞いておる。ワシも興味があっての。勇者を目指しておるのじゃろう?」
少女「それなんですけど……わたし、嘘ついてました!」
王「嘘、とな……?」
少女「わたし、友だちとずっと一緒にいたいだけだったんです!……そのためには勇者にならなきゃだめなんですけど!……わたしの願いは勇者になりたいってわけじゃなくて!……でもえっと……それで、勇者を目指すために色々しているうちにずっと一緒にいたい人が増えてって!……ってあれ?わたし、やっぱり勇者を目指してますね……えっと……」
姫「ふふっ……落ち着いて?……やっぱり少女ちゃんは面白いね!」
少女「えっ?えっ?えっと!その!とりあえず!やっぱりわたし、この街を離れたくは、ないんです!」
王「ふむ。なるほどの」
姫「ねぇ、そのお友だちって森の方にあるっていう、地面に刺さってる剣のこと?」
少女「えっ……」
姫「あははっ、そんな顔しないで?大丈夫。撤去とかはしないって。兵士達の噂で聞いたんだよ。やっぱり本当なんだ。喋る剣」
少女「えっと、はい……あ!でも他の国に言ったりとかも……」
姫「うんうん、言わない言わない!兵士たちにも口止めしておくよ!……といってもきっとみんな分かってると思うけどね」
王「ふぉっふぉっふぉっ……その剣がお主の友、というわけか」
少女「おかしな話ですけど……そうなんです。友だちというか、恩人……恩剣?というか、とにかく、わたしには、とてもとても大事な……大切な、友だちなんです」
姫「ふむ。なんだか興味湧いてきちゃったなぁ。私、今度会いに行ってみようかな!」
少女「ぜ、是非!」
王「いつか、その剣を抜いたときはおぬしも冒険に出るのじゃろう?」
少女「えっと……はい、なくした勇者さんのところに届けてあげたいとは……」
姫「勇者に渡すとお別れなのに?……というか抜いた時点で勇者は少女ちゃんになるんじゃない……?」
王「ふぉっふぉっふぉっ……それに、勇者の武具と勇者は惹かれ合うのではなかったかね?ならば届けずともおのずと出会うことになろう」
少女「えっと……勇者は私になるのかな……?と、とりあえず、私、いてもたってもいられなくて!できることはやってあげたくて!」
姫「あははっ……ね?お父さん。少女ちゃんって、やっぱり面白いでしょ?」
王「ふぉっふぉっふぉっ。不器用じゃな」
少女「えっ……」
王「不器用じゃが、不器用なりに一生懸命なのはよく伝わってくる。……よろしい。ならば、私らはいつでもお主が冒険者になれるよう準備はしておこう。時がきたら来るがよい」
少女「えっと……ありがとうございます……?」
◆
少女「あ、ありがとうございました!」
ガチャッ
姫「お父さん、少女ちゃんがほんとにあの剣を抜けると思ってる?」
王「ふぉっふぉっふぉっ……さぁな。抜けるかもしれんし、抜けんかもしれん」
姫「それじゃあ冒険者証明の準備なんて……」
王「……ただ、そうだな。賭けるならば抜ける方に賭けてみたいかの。……そうは思わんか?」
姫「……ははは。なるほど。それならわかるかも」
王「勇者の剣とやらもよい友を持ったの……ふぉっふぉっふぉっ」
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