【02】街外れの丘にて
剣「珍しくへこんでおるな」
少女「道場はあったんだけど……入れるの、男の子だけなんだって……」
剣「それは仕方ないな……。では私が……」
ガサゴソ……
剣「…………少女。そこの草むらに誰かがいるぞ」
少女「悪い人かな?」コソコソ
剣「ふむ……私は悪意をある程度感知できるのだが、今は何も感じられん。むしろ……」
少女「ごちゃごちゃ何言ってるかわかんないや、つまり?」コソコソ
剣「……悪いやつではなさそうだぞ」
少女「そっかぁ。……スゥーッ……だー!れー!だー!」
剣「うるさい」
ガサゴソ……
少年「えっと……その……」
少女「あっ、道場の一番強い人!」
少年「えっ。知ってたんだ……」
少女「道場長さん、わたしが入るのは断られちゃったけど、ずぅーっと!"自慢の息子です"ってきみの自慢ばっかりだったからね!」
少年「うぇ……それは恥ずかしいな……」
少女「それで、えーっと……何しに来たの?」
少年「その、よかったら、これ」
少女「木の……剣?」
少年「木刀っていうんだよ」
少女「ボクトウ……ボクトウ……名前はなんだかあんまりかっこよくないね!……ありがとう!素振りが捗るよ!」ブン!ブン!
少年「……はは。元気だなぁ」
少女「あの、本当にありがとうね!ええと……」
少年「少年だよ」
少女「少年くんね!覚えた!わたしは少女!今度アップルパイ持ってくね!」
少年「うん、楽しみにしておくよ」
剣「少年とやら」
少年「!?……剣が喋った!?」
剣「……うむ。その反応が正しい。いきなり喋りかけてすまない」
少女「えー。ツルギさんかわいいのにー」
剣「少女は私が喋ったとき目を輝かせていたな」
少年「ある意味……大物ですね……」
◆
剣「……ということでだ、少年よ。よかったらそこの少女に剣を教えてやってはくれないか?おぬしも少女に何か思うところがあってその木刀を持ってきたのであろう?」
少年「それは……ええと……ぼくと似てたから……」
少女「似てた?」
少年「少女ちゃん、一目見て、何か目指すものがあって道場に来たんだなって気がして。ぼくも、そうだから」
少女「少年くんも何かを目指してるの?」
少年「えっと……世界一の、剣士……」カアァ
少女「……かっこいい!!」
少年「へ?」
剣「少年よ、そんなに恥ずかしがることではない。世界一の剣士。立派な夢ではないか。かつて私と共に旅した勇者の中には同じ志を持った者もたくさんいたぞ」
少女「うん……うん!素敵な夢だよ!世界一の剣士!かっこいいし!」
少年「…………ぼく、こんなこと言ったら笑われると思ってた。でも、きみたちは笑わないんだね」
剣「夢は恥ずかしがるものではない。誇るものだ。胸を張って目指すことは何も恥ずかしいことではない。笑われることでもない。もしも笑われたのなら、笑い返してやるといい。……"お前には夢もないのか"とな」
少年「……ありがとう」
剣「例には及ばん。勝手に聞いたことだ。……少年。よかったらそこの少女を世界一の剣士の、初めての弟子にしてやってはくれぬか?何、教えるのは基礎だけでも構わんさ」
少年「……ぼくでよかったら、よろこんで」ニカッ
少女「ほんと!?えっと、えっと、ありがとう!私も世界一の剣士になる!」
少年「……それじゃあいつか競争することになっちゃうね」
少女「あ……ほんとだ」エヘ
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