【SS】ろーどとぅゆーしゃ!

ゆきの

STEP01:〈あこがれのスタートライン〉

【01】街外れの丘にて

少女「おにぎり食べる?」


剣「食えん」


少女「そっかぁ……」


剣「うむ」


少女「ツルギさんはいつまでそこに埋まってるつもりなの?」


剣「勇者が現れるまでだ」


少女「ワガママだなぁ。なんならわたしの家に連れて帰ってあげるのに」


剣「娘がいきなり剣を持ち帰ってきても家族は怪しむだけだろう。……ことさら私は喋るのだぞ」


少女「でもお母さんのスープ暖かくて美味しいよ?」


剣「食えん」



少女「ところでツルギさんは何を食べて生きてるの?」


剣「何も食わん」


少女「そもそも生きてるの……?」


剣「それは私にも分からん。魂が宿っているものを生きている、というのなら私も生きているのだろうな」


少女「へー……」


剣「絶対わかっていないだろう」


少女「えへへ……」



少女「んー!んー!」


剣「私は勇者でないと抜けんぞ」


少女「わたしが勇者になるよ!」


剣「おぬしは勇者ではない」


少女「どうしてわたしが勇者じゃないってわかるの!?」


剣「こう、びびびと来る」


少女「びびび」


剣「びびび」



少女「勇者ってどんな人なの?」


剣「"ユウシャ"とは"勇ましい者"と書く。そう呼ばれる者は勇敢だったり……いや、臆病な者も……うーむ。思い返してみれば個性は様々かもしれん。総じて言えるのは、ヒーローのような者ばかりだな」


少女「へぇ……わたしも強くなれば勇者になれるかな?」


剣「なれるかもしれんな」


少女「よーし!頑張る!わたし、強くなってツルギさん引っこ抜くよ!」


剣「そうだな、頑張ることはいいことだ」



少女「……ほっ!……ほっ!」ブンブン


剣「何をしているのだ?」


少女「素振り!」ブンブン


剣「手に持っているのは……?」


少女「そこにあった木の枝!」ブンブン


剣「そうか、頑張れ」


少女「うん!がんばる!」ブンブン



少女「ツルギさん、わたしこれじゃダメだと思うんだ」


剣「おぬしが素振りを始めてからもう一週間だぞ。やっと気がついたか」


少女「やっぱり修行といえば師匠だよね」


剣「単純すぎるが……まぁ確かに王道ではあるな。道場は街にはないのか?」


少女「あるのかな?……帰ったらお父さんに聞いてみる!」


剣「親御さんは娘がこんな街外れの丘まで毎日でかけていて怪しんでおらんのか……」


少女「ツルギさんのことはお父さんとお母さんには話してあるから大丈夫だよ」


剣「頭の心配はされなかったか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る