【02】街外れの森にて

ガバラッガバラッ


少年「ということで森に行くの?」


少女「うん。そういえばおじさんが"曲芸師のぼっちゃんによろしくなー"って言ってたよ」


眼鏡「……私は迷わないように着いていけって。この馬車の魔装具で街までの道を記録できるから」


少年「とりあえずぼくは曲芸師ではない」


少女「街中で八刀流の練習するからだよー」


眼鏡「……でも今は大剣」


少年「残念ながら八刀流はまだ実用段階じゃないからね……大剣ならギリギリ扱えるから獣に襲われたときのために持ってきたんだよ」




ガバラッガバラッ……ヒヒーン


少女「……!?」


少年「崖……」


眼鏡「……"日光がよく当たって"、"高度のある場所"」


少年「え……じゃあ……」


眼鏡「だから……馬車……」


少年「この馬車、薬草を運ぶためじゃなくて……崖登りの道具を運ぶためか……!」


眼鏡「……崖に襲われたときのために」


少年「残念だけど眼鏡ちゃん。崖は襲っては来ないんだ」


少女「えへへー、このおっきな袋はそれだったんだねー」


少年「なんで少女ちゃんはちょっと楽しそうなの……」


眼鏡「……少年の浮遊魔法で飛んでもいい」


少年「ぼくの浮遊魔法は八刀流同様、実用化できる状態じゃないよ……」


少女「眼鏡ちゃんの浮遊魔法じゃだめなの?」


眼鏡「……この高度を三人は帰りの魔力が保たない」


少女「迷子にはなりたくないねー」



少女「えっさーほいさー」ガッガッ


少年「なんか気の抜けた掛け声だね」ガッガッ


少女「これも勇者になるための修行だよ!えっさー!ほいさー!」ガッガッ


少年「本当に必要かなぁ……」ガッガッ


眼鏡「……」フワフワ


少年「一人だけ浮遊魔法なのずるくない?」ガッガッ


眼鏡「……一人ぶんなら……どうにかなる……」フワフワ


少年「絶対嘘だよ……」ガッガッ


少女「えっさー!ほいさー!」ガッガッ



少女「あともう少しだよ!」ガッガッ


眼鏡「……がんばれー」フワフワ


少年「なんで疲れ果ててるのぼくだけなの……」ガッガッ


ガッ……


少女「えっさー!ほいっ……さー!」


…………


三人「「「わぁ」」」


少女(登りきった景色。そこは、色とりどりの、花畑でした)


少年「花は色とりどりだけど……葉っぱは綺麗な赤色だ。透き通るような赤色……ルビーハーブだね」


少女「うん……あれ……でも……」


商人『……とはいえ元々大量に生えるものでもないから、少ししかないだろうが』


少女「大量に生えるものでもないって……」


眼鏡「……私も、いままでこんな景色は見たことが、ない」


少女「これもツルギさんの力なのかな?」


眼鏡「……大地そのものの生命力も増大している?」


少年「ほんとに神様めいてきてるね」


少女「とりあえずこんなにいっぱいあるなら……町のみんなの病気もよくなるんじゃないかな!」


少年「馬車があるとはいえ、ほどほどにね」


眼鏡「……採りすぎると、生えなくなる」

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