【02】街外れの丘にて
少女「ツルギさん、どうしてそんなに樹に囲まれてるの?」
剣「暑いのでな。日陰を作った」
少女「前まで何もツルギさんの周りにはそんなの生えてなかったよね」
剣「暑いのでな。少しばかり樹を生やした」
少女「わたしがせっかくそこの湖から水を汲んで!重いのにここまで持ってきたんだよ!」
剣「うむ。ありがとう」
少女「ツルギさんのために!かけてあげようかなって!」
剣「そうか、それはありがとう」
少女「なのに!……なのに!」
剣「……水、かけてくれるか?」
少女「うぉーーー!!えーい!!」バッシャーーンッ
剣「涼しい」
少女「えぇーい!!!!」バッシャーーンッ
剣「いいぞ」
…………
エーイ!!!エーイ!!!
兎「なんか、シュールだね」
少年「シュールですね」
兎「平然としてるけど、数日で樹を生やす魔力量は尋常じゃないね」
少年「そんなにすごいんですか?」
兎「少女ちゃんの魔法は少ししか見たことないけれど、初級魔法がいくつか使える程度だろう?それらの三百倍は魔力を消費するんじゃないかな」
少年「さ、さんびゃっ」
剣「そういえばそこの兎よ。喋られるようになったのだな」バシャーンッバシャーンッ
兎「うんうん、この街のマスコットキャラクターになるために教えて貰ったのさ。兎の姿、かわいいだろう?」
少年「何狙ってるんですか……」
兎「それはそうと、勇者の剣……ツルギさんと呼んだ方がいいのかな。キミはどの程度自然に干渉できるんだい?」
剣「さぁな。私も何度か地面に刺さったことはあるが、刺さる場所によって私の影響力は範囲も形も様々だ。やってみないとわからん。この樹だってやってみたらできた、というのが正しいだろう」
兎「なるほどねぇ。持ち主がいなくとも勇者の剣は勇者の剣というわけか……」
少女「この森の中を逃げてる泥棒さんがどこにいるのか調べたりもできるのかな?」
剣「ふむ。まぁできるかもしれんな」
兎「おいおい、まさか捕まえるつもりかい?」
少女「だって、街の人を困らせてるんでしょ?」
少年「でもボクら今日はそれらしい武器も持ってないよ……危なくない?」
少女「木刀ならある!」
少年「少女ちゃん、木刀じゃ厳しいと思うよ……」
眼鏡「……強盗ではないらしいから、位置さえわかればなんとかなるかも」
少年「眼鏡ちゃんいつからいたの……」
眼鏡「……さっき。追いついた」
少年「追いかけてたんだ……」
兎「うーん。よし。面白そうだし、ボクも参加するよ。勇者の剣の能力、一度見てみたかったんだ。ボクなら武器も持ってるし」
少年「武器、持ってるんですか?」
兎「魔装銃なんかをいろいろとね。……それに、強盗じゃないってんならそんなに危険ではなさそうだ」
眼鏡「……」ムッ
兎「そんなに怖い目で見ないでほしいなぁ」
眼鏡「……捕まえるのには、賛成」
少年「……仕方ないなぁ」
少女「じゃあ決まりってことで!」
剣「とりあえず、その泥棒とやらを調べてみればよいのだな」
少女「お願い!」
◆
…………
少女(木々が揺れて……)
少女(心地よい風が吹き抜けていきます)
少女(葉っぱが風に揺れてゆらゆら、ゆらゆらと波を描いて………)
ポワァァァアアアア
少女「ほわぁ………」
少年「へぇ……」
眼鏡「…………」
兎「ふむ」
少女(森の木々の葉っぱが緑に輝いて、ゆらゆらと揺れます)
少女(まるで、ツルギさんの魔力に反応するように)
少女(……いえ、ツルギさんの歓迎会を森が開いているような、そんな光景です)
少女(その景色は昔どこかの町で見た、冬の日のお祭りのようでした)
◆
剣「確かに、ここから南に向かった方角にある洞窟に何者かがひそんでいるな。……清き心の持ち主とは言えんが、あまり大きな悪意も感じとれん」
兎「ふむふむ。そんなことまでわかるのか。勇者の剣って便利だね。つい欲しくなっちゃうな」
少女「ダメですよ!」
兎「わかってるわかってる、冗談だよ」
眼鏡「……行こう」
少年「今度は崖とかないかなぁ……」
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