【02】商店にて
ワイワイガヤガヤ
少女「なんだか騒がしいね」
少年「ほんとだね。なんだろう」
商人「城に怪盗ってのが入ったらしい。……姫様のティアラを盗んだとかなんとか」
少女「え?お姫様も困っちゃうね……」
商人「姫様自体は今は別の街に行ってるらしく、留守なんだと。……その怪盗ってやつが問題でな。なんでもお宝ばかり狙ってるやつらしい」
眼鏡「……被害に遭っているのは、この街だけじゃ、ない」
商人「……だからうちの店は心配なさそうだと思ってたんだがな。ところで少女ちゃん、その兎はなんだ?」
少女「このうさぎさん、昨日の夜からツルギさんに引っついてばかりみたいで……とりあえずツルギさんが迷惑がっていたので連れてきたんです」
少年「最初に少女ちゃんがうさぎを抱えてるのを見たときはびっくりしたよ」
商人「ふむふむ、なるほどな。……眼鏡。こいつを調べてくれ」
眼鏡「……了解」ガサゴソ
兎「ブー!ブー!」
眼鏡「……確かに。これは変身魔法」
少女「え?え?どういうこと?」
商人「はっはっは。その怪盗の名前が"怪盗黒兎"って言うらしいんでな」
少女「えっ?ってことは?」
眼鏡「……その兎が、怪盗」
少女「えーーーー!!!!」
◆
眼鏡「……だめ、かなり高等な変身魔法。私の使える変身解除魔法じゃ通用しない」
少年「なんにせよそのウサギは泥棒なんでしょ?それなら……
ボワンッ
???「そこの少年、泥棒とは失礼だなぁ、ボクは怪盗だよ怪盗」
((((!?!?))))
怪盗「はぁい。どうも、怪盗黒兎でーす」
商人「おい、なんかめちゃくちゃどうでもいい弁解で魔法解除したぞ」コソコソ
眼鏡「……魔法使いには変人が多い」コソコソ
商人「……確かにな」コソコソ
眼鏡「……私を見て納得しないで」コソコソ
怪盗「そこの少年。泥棒と怪盗じゃあ大違いだよ?ボクを泥棒扱いは心外だなぁ……兎はメンタルが弱いんだよ?もっとこう、優しく扱ってほしいね。全く」
少年(どうしよう。めちゃくちゃめんどくさい)
怪盗「いやぁしかし"怪盗黒兎"ってのはネーミングを間違えたね。知ってるかい?兎ってのは声帯を持たないんだ。ぶーぶー言ってるの、鼻を鳴らしてる音なんだよ。……つまりね、喋れない!もどかしい!魔法変身状態でも喋られる黒猫とかにするべきだった!かわいさを優先したのがダメだった!」
少年(わざわざ黒兎に変身しなきゃいいんじゃ……)
少女「えぇと、なんで変身解除?したんですか?」
怪盗「ボクのことを泥棒とのたまうそこの少年に説教をするためだよ!ボクは泥棒なんて野蛮なものじゃない!ボクはね!夜と夜を掛け!お宝あらば月明かり照らす闇夜の街を駆け巡る"怪盗"!なのさ!……明かりをくれる月に敬意を示して、ボクの名前は怪盗黒兎なんだ。月といえば兎だからね」
少女「…………かっこいい!!!!」
商人「いやいやいやいや……」
少年(ぼくには……泥棒と怪盗の違いがわからない……)
怪盗「なーんてね、いやね。ボクは本当はこの城のこのティアラもボクにはどうでもいいんだよ」キランッ
少女「わぁ……これが……綺麗……」
怪盗「そうだろう、そうだろう?これこそ"お宝"と呼ぶにふさわしい」
少年「どうでもいいんじゃなかったんですか……」
商人「この店もあまり閉鎖的とは言えないからな、そう見せびらかしていると捕まるぞ」
怪盗「そうそう簡単に捕まるボクじゃないさ。……それはどうでもいいんだ。ボクが聞きたいのはあの剣のことだ。丘に刺さってるあの剣」
少女「……?ツルギさんのこと?」
怪盗「……そう呼んでいるのかい?まぁいい。アレは勇者の剣だよね?」
眼鏡「……確かに、そう」
怪盗「へぇ、やっぱり。それは大したお宝だ」
少女「!!盗っちゃダメですよ!ツルギさんは、私が盗るんですから!」
商人「張り合うのかよ」オイオイ
少年「今思えばツルギさん、勇者さんのものだから少女ちゃんがやろうとしてることも怪盗さんと大して違わないんだね……」
怪盗「まぁそう怒らないでよ。安心して。盗りはしないさ。……いや、正直に言おうか。ボクにはアレは盗れそうにない。今までのボクの人生ではあの剣を含めて5つだけだね。盗れそうにないものはさ」
眼鏡「……確かに。常時結界が張られている」
商人「その結界ごと持ってくことはできないのか?」
眼鏡「……意思があるから、反射的、あるいは能動的に……防御魔法が展開される。……つまり、盗るのは難しい」
怪盗「そうそう。"モノに意思がある"ってことの意味を思い知らされるよ」
少女「あれ?……ということはツルギさんも魔法を使えるの?」
怪盗「勿論。抜けないのだって魔法の一種さ」
眼鏡「……常時展開される結界も含めて、当人の意思ではなく自動的に展開されるもののよう」
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