第24話 転生JKミユキ Ⅱ



「シローナ……召喚!!」


「わわわっ、何ですかこれは……いきなり飛ばされてきちゃいましたぁ」


 いきなり召喚したから驚くのも無理はない。

 

 それにしても何て格好してるんだ。

 今にも外れそうなユルユルのキャミソールを着用して、とんでもなく短いスカートを履いてやがる。


 教会の神父は何をやっていたんだ。

 まあ神があの品のないジジイだから期待はしてなかったが……。

 

「シロちゃん、とにかく戦闘の準備に入るんだ!」

「はい。分かりました」


 シローナの得意技ってなんだっけ。

 全く思い出せない。

 

 ゲームでは使い辛かったから大して編成してなかったんだよね。

 攻撃力とか防御力とか壊滅的だったし、何かに特化した要素もなかったような……。


 などと考えていると、騎士が容赦なく襲いかかってきた。


『その女諸共切り捨ててくれるわ!!』


 騎士が突っ込んで来る中、ふと空を見上げると、上空には鎌を持った死神が存在していた。

 シローナがこの世に顕現させた死神だ。


 思い出した……。

 

 シローナは死霊術師。

 地獄から呼び寄せた死神を操る稀少な能力の持ち主だ。

 

 自身に宿る悪意や憎悪、嫉妬心、欲望、そういった物から生まれる負のエネルギーを餌にすることで、死神を呼び寄せ戦わせる能力。


 シローナには打ってつけの能力ではあるが、非常に扱いが難しく、大半のプレイヤーはパーティーから外してしまう。

 攻略サイトにも非推奨とされるキャラの一人だった。


 密会で堕落したシローナの負のオーラは半端じゃない。

 骨だけの死神ではあるが、非常に満足そうな顔をしているような気がする。



 ◇



「調教開始!!」


 騎士は片手に持っていたランスをシローナ目掛けて突き刺そうとしている。


 シローナが瞬時に手を振り下ろし、死神に命令を下した。

 振り下ろされた死神の鎌によって、騎士のランスと相殺する。


『何だコイツは……禍々しく悍ましい力だ』

「シロちゃん! バフをかけるぞ!」


 ————身体硬化!!


 シローナの基礎防御力は極めて薄い。

 万が一にも被弾すれば即死は免れない。

 俺は防御力上昇に徹して、死神が自由に行動できる環境を整える必要がある。


 騎士が体勢を立て直しランスを投げる動作を見せる。

 体を大きく仰け反らせ、その反動を活用しながら凄まじい勢いでぶん投げた。


 死神の横を通り過ぎたランスは、シローナの腕を掠めて背後の砂地に落下する。


「シロちゃん無事か!!」

「何とか無事です。危ない所でした」

「次は私からいきます」


 死神が騎士に向かって猛毒を撒き散らし始める。

 騎士を取り囲み徐々に範囲を狭めていく。

 体を毒に犯された騎士は、徐々に動きが鈍くなってきた。


『ぐっ、体が重い』

「今だシロちゃん! 全力の攻撃をお見舞いしてやれ!!」


 トドメを刺そうとした瞬間、ミユキが腕を大きく広げて庇っていた。


「シロちゃんストーーップ!!!」


 女に手をあげることは出来ない。

 俺は全ての女性を愛する男だ。

 

 しかしこの状況ではどうすることも出来ないな。


「私達の負けです。これ以上騎士様を痛め付けるのは止めてください」

「わかったよ。潔く負けを認めるならこれ以上攻撃はしない」

「く、悔しいですが、確かに貴方は凄い力を持ってるみたいですね」

「俺は勇者だから当然だ」


 シローナは死霊術を解除してビーチにへたり込んでいる。


「はぁはぁ……疲れました」

「よくやったよ! お前は凄い奴だ!」

「ありがとうございます……勇者様ぁ」


 抱きついてきた。

 そんなにくっ付いたら感触伝わってきちゃうでしょ。


「随分と仲が良いみたいですね」

「そりゃそうだよ。密会したんだから」

「み、み、密会?!!」

「意味わかる?」

「わかりません!!」


 俺の中に突如として邪悪な考えが浮かんでしまった。

 今この二人を引き入れたらどうなるんだろうと……。


「じゃあさ、試しに密会開いてみよっか!」

「???」



 ————————密会、発動!!



「寝室領域へようこそ」

「ここは……」

「心配しなくても大丈夫だよ。ただのベッドが置いてある部屋だから安心安全だ」


 俺はベッドに背を向けて胡座をかきながら座っているだけ。

 今回はなーんにもしないし、するつもりもない。

 勝手に声やら何やらが耳に入ってきちゃうのは仕方ないけどね。


「怪しげな場所ですね。気味が悪いです」

「————勇者様は私だけのモノ。邪魔はさせません」

「ひっっ……」


 やっぱりな。

 シローナがこの状況を黙って見過ごす訳がない。


「あ、あなた一体何を言っ……きゃぁ……ちょっと何するんですか!!」

「勇者様をNTRする人は許しません」


 シローナの暴走が始まったな。

 死神に与えてしまった負のエネルギーを補給する為にも、ミユキに協力してもらう他ない。

 俺は安全地帯に隠れるとしよう。

 3Pとかそういうプレイは望んじゃいないんだ。


「ちょ、ちょっとそれ外さないで……マントが……」


 シローナの奴、見境ないからな。

 折を見て解除はするつもりだが、しっかりと負のエネルギーが溜まるまでは続けなければ。


「勇者様に手を出そうなんて……罰として剥かさせてもらいます」

「勇者さん、この人何とかしてください!!」

「こうなったらもう止められない。俺が危険に晒されるしな」


 こうして新たなる宴が開催された。




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