第6話 従者ユカリ Ⅱ

 


 メイドのユカリと濃密な密会を終えた後、性懲りも無くエリシアに体をくっ付けて熟睡した。


 夢を見れないほどに体には疲れが溜まっていたようで、人生で最も深く眠りにつけた気がする。何しろ一度死んでいるのだから無理もない。


 現在の時刻は午前9時頃。


「エリシアがいないな。優しく起こしてくれるテンプレ展開はなかったか」


 全てを求め過ぎてはダメだ。紳士たるもの謙虚さを忘れてはならない。


 一人で起床した事に少々がっかりしていると、私服姿のユカリが室内に顔を出す。


「おはよう御座います。昨晩はよく眠れましたか?」

「おっ……おう。お陰様でぐっすり眠れたよ」


 慣れないことをしようとしたせいで、なんか妙に気まずい。これは明らかに俺の経験値不足だろう。彼女いない歴=年齢とは口が裂けても言えない汚点だ。


「エリシア様は女王陛下との謁見がありますので、一足早く起床しましたよ」


「本当は公務で忙しいんだよなーエリシア・・・・は」


 ユカリは何故か不機嫌そうな態度を示す。


「アルトはエリシア様とどういったご関係なのでしょう。呼び捨て出来るくらいの間柄……ということですか?」


 いや、アナタも俺を呼び捨てにしてるのは気のせいかな。


「だって……エリシア様のおっぱい……揉みしだこう・・・・・・としてたじゃないですか」


 うん。それは否定しないしできない。てか言い方改めなさい。意味合い変わってくるから。


「あれは事故だ。一緒のベッドに寝てれば事故も起きる」

「むむむ……私の胸も見たくせに……」


 密会中の言動を思い出すだけで恥ずかしい。鳥肌が立つ。


 まあユカリには指一本触れてないからセーフでしょ。言葉責めしたのは素直に認めよう。


「私のおっぱいなら……揉んでも良かったんですよ……」

「はいっ?」


 『密会』を受けた女は大抵こうなる。もはや性欲の奴隷だ。せめて揉めるくらいにはバストアップしてくれたまえ。


「今度ツンツンしてやるから我慢しなさい。それより、何か用事が合って来たんじゃないの?」


「はい。実は明日、魔王軍の幹部が王国に攻め入ってくるそうです」


 魔王……。あぁ、確か居たなそんな奴。完全に頭から抜け落ちてたわ。


「そいつを討伐するのを手伝ってくれって話か?」


「それもそうなんですが……今日お時間がありましたら、修行に付き合って欲しいのです」


 いやー裏スキル最強だわ。もう従順な美少女だよ。ゲームで死ぬほど苦労したのが嘘みたいだ。


「任せなさい! 俺が調教してあげよう!」

「わぁぁ、ありがとうございます!」


 すっごいニコニコしてる。こんなに笑う子だったっけ。印象違い過ぎて反応に困るな。


 俺とユカリは修行を行うために、王国の東に位置するダリア遺跡へと向かう。



 ◆◆



 5000年前に滅びた大都市の跡地として知られる太古の遺跡。


 遺跡には、無限に再生するストーンゴーレムが生息しており、冒険者や騎士の修行の場として重宝されている。


「ユカリ! ここで修行するぞ!」


「ストーンゴーレムの討伐ですね! お任せください!」


「では————————調教を開始する!!」


 主人公のアルトは、初期段階から所持しているスキルがある。それが『調教』だ。


 調教の合図と共に、一定範囲内にフィールドが形成され、フィールド内にいるキャラに対して様々なバフを付与できるようになる。


 修行効率を上げたり、戦闘に活用することもできる使い勝手の良いスキルだ。というかこれが全てだ。


 何故俺が、5000時間という膨大な時間をかけたかというと、親密度がとにかく上がり辛いからである。


 バフの効果量や効果時間は、全て親密度の高さに比例する。


 ヒロインと積み上げる親密度の重要性がお分かり頂けただろうか?


 改めて言おう。『密会』はこのゲームにおける究極のチート・・・である。


 ちなみに、親密度MAXの数値は10000・・・・・だからな! 100・・・とかそんな甘っちょろいもんじゃないんだぞ!



 ◇



「前方にゴーレムが現れました。ユカリ、行きます!」

「よし! まずは渾身の一撃をお見舞いしてやれ!」


 ストーンゴーレムの岩で構成された体は頑丈で、並の人間なら傷一つ付けることすら叶わない。



「はぁぁぁぁぁ!! とりゃぁぁ!!」



 ユカリはメリケンサックを両手に装着。助走をつけて突進し、ゴーレムの胴体を殴りつける。その凄まじい破壊力によって、ゴーレムは数十メートル吹き飛ばされた。


(バフ無しでこの威力……昨日殴られてたら確実に死んでたよ!)


 吹っ飛ばされて崩れた体が地面に転がっている。


 時を待たずして再構成されていくゴーレムの体。ムクっと起き上がり、再びこちらに向かって歩いてきた。


「強力なバフをかけるぞ!」

「はい! お願いします!」


「 身体強化フィジカルブースト !」


「あぁっ!! 力が漲ります!」


 赤いオーラが全身を多い尽くしている。身体の奥底から溢れ出る性欲と攻撃力。


 ユカリは破壊的なパワーを得て、ゴーレムに拳を振りかざす。


「これで最後です! おりゃぁぁぁぁぁ!!!」


 ゴーレムは打ち砕かれ、粉微塵と化した。


「よくやったぞユカリ! 今日の修行はここまでにしよう!」


「はい! 大変気持ちよかったです! お付き合い頂きありがとうございました!」



 変態メイド調教完了。



【 ユカリ 】

【親密度: MAX 】

【戦利品: ゴーレムの砂 】


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