第5話 従者ユカリ Ⅰ



 夜中に突如現れたこの人物が誰なのか、俺は知っている。



 ◇



【 ユカリ 】


 モンテローズ家に仕えるメイド。清掃や洗濯、炊事といった城内労働を行う使用人。16歳。エリシアの身の回りのお世話も兼任している。


 黒髪。ゴムで後ろに一本で纏めたお団子ロングヘアー。メイドの被り物であるホワイトブリムを付けている。フリフリのスカートが可愛らしい。



 ◇



 メイド服に身を包んだ少女の名はユカリ。二年前からモンテローズ家に仕えている。


 午後11時になると、城の警備のため巡回を行うのが日課だ。


 巡回を任されている理由は、とにかく強いからという一点。メイド型サイボーグ、キリングマシーンと呼ばれるくらいにイカれた強さを誇る。武器はメリケンサック。


 パッと見は、可愛いメイド服を着た少女にしか見えないが、コイツの恐ろしさを俺は知っている。魔法こそ使えないものの、物理攻撃の強さは折り紙付きだ。


 ユカリは俺を睨みつけて言葉を発する。


「私見ました。エリシア様の胸を触ろうとしていたのを……同じ女として絶対に許せません……死刑確定です」


「まあ待て。これには深い訳があってだな……」

「問答無用です。お覚悟を」


 ヤバい事になった。本来ユカリと争いになることは一切ない。親密度を上げるのに苦労はしたが、最終的には心強い味方になる。


 だが、今の俺はユカリとの面識がない状態。完全に犯罪者と勘違いされている。まあ間違ってはいないが……。


 就寝中の女性の胸を揉むという、下劣極まりない行為を実行しようとした罪は重い。増してや相手は一国の王女様だ。


 さてこの窮地……どう乗り切るか。


 ユカリの手に握られた鋼のメリケンサックが怖い。今にも飛び掛かってきそうな勢いを感じる。



「————あっ、良い事思い付いた!」



 試し打ちには丁度いい。最初に使うのはエリシアちゃんと決めていたが……背に腹は代えられない。


 俺は射程圏内までジリジリとユカリに近付き、例のチート、もとい裏スキルを発動させた。



 ————————『密会』!!



 対象者であるユカリを寝室領域・・・・に引きずり込む。


「うわぁぁぁぁ!!!」


 ユカリが普段見せない叫び声を上げている。意外に可愛い所もあるじゃんか。


 以前簡単に説明したが、この領域は外部からの干渉を遮断する。時間の流れは止まり、誰かに気付かれることもない。


 俺が『密会』を解除しない限り、脱出することは不可能! これは男女が秘密裏に会う密会だ! 神聖な儀式だ!




 ◆◆




 ここは寝室領域。何人たりとも二人の領域を汚すことは許されない。


「部屋の壁が一面ピンク色ですね。何だか嫌な予感がします」


「ようこそ寝室領域へ。ユカリ……気分はどうだ?」


 二人が居る場所はラブホっぽい寝室。三人から四人用に作られた巨大なベットがポツンと鎮座しており、シャワールームまで存在している。


「体がムズムズしますね。それよりも……一体何なんですかここは。早く出してください。それともここで殺されたいですか?」


 強がってられるのも今の内だ。


 性欲は男性より女性の方が強いと聞く。増してや思春期真っ只中の少女ともなれば、この快楽には抗えない!


「ある意味殺されるのはユカリ、お前だ。 すぐ近くまで迫っている。大きな波が……!」



 ——————

 ————

 ——



 ユカリは苦しんでいた。否! 呑まれかけている、性欲の波に抗っているのだ。


「はぁはぁ……なん……ですか……これ……」

「ユカリ! どうだ! もう我慢の限界なんじゃないか?」


 俺の気分はいつも以上に昂っている。もはや誰にも止めることができない程に。


「もう……ダ……メ……」

「そうだ。もう我慢する必要はないんだぞ。気の赴くままに身を任せるんだ」

「……」



 ————————ついにユカリは快楽の海に溺れ———————— 暴発。



 ユカリは溢れ出す欲求に飲まれ、完全に堕落してしまった。



 ◆◆



 密会という名の儀式は閉廷を迎える。


 ユカリとの親密度はMAXとなった。


 あの空間にいると神にでもなったかのように気分が高揚する。


 成人男性が16歳の女子と営むのは流石に気が引けるよ。せめて後二年成長してからだな。


 別にやらなきゃ領域を出られない訳じゃないんだ。まあ、ユカリの恥ずかしーい、あんなのや、こんなのは色々と見れたよ?


「ユカリ! もうあんなアラレもない姿になっちゃダメだぞ!」

「あなたって最低な人です! ですけど……また誘ってくれると嬉しいです……」

「おぅ! また営もうな!」

「営んでません!」


 正直ちょっとビックリした。密会の力恐るべし。人間は欲求に抗うことが難しいと再認識した。



 ◇



 ユカリは何事もなかったかの様に部屋を後にする。


「それでは失礼致しました」

「おやすみ!」


 親密度がMAXになったヒロインは、基本的には俺に従順になる。


 まあ俺の目標はハーレム生活だから、ユカリ一人にゾッコンとはならない。


 何はともあれ、二人目の仲間をゲット。エリシアはメインヒロインの位置づけだから、一人目ってことになる。


 こうして、長い長い濃密な一日が終わりを告げた。



【 ユカリ 】

【 親密度: MAX 】


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