第9話 吟遊詩人リディア Ⅱ



(ゴクリ……)


 俺は息を飲んで立ち尽くしていた。目の前には上半身素っ裸の女性。彼女すらできたことがない俺には刺激が強すぎる。


 背筋を伸ばし堂々とした姿勢で腰に手を添える女性。鍛えられた綺麗な腹筋と、モデルの様なくびれた腰がスタイルの良さを際立たせている。


 自分の裸を見られて焦りを見せないとは……俺を異性として見ていないのかもしれない。


 あまりに衝撃的過ぎたから、この女性のことをしばらく忘れていたが、一応紹介しておこう。



 ◇



【 リディア 】


 城下街で歌を披露している女性。エリシアと仲が良い。年齢二十歳。


 男勝りな性格で少し口が悪い。エリシアとは真逆のタイプ。一人称は『ウチ』。


 前髪のおくれ毛を肩付近まで伸ばし、バックの髪は短め。黒に近い紺色。青のメッシュが入っている。


 片耳に三つのピアス。


 身長は俺より低くて、エリシアより高い。大体165センチと言ったところか。


 バストは……デカくて張りがある。



 ◇



 見た目と性格が反比例している。比較的幼い顔立ちでこのスタイルと勝気な性格。このギャップに充てられた男は決して少なくない。


「おーい、兄ちゃん。いくらウチでもそんなに見られっと……少し恥ずいからな」


「わ……わかってる、なるべく見ないようにするって」


 若干顔を赤らめて恥じらいを見せたリディア。女の子としての一面は捨て切れてはいないようだ。


 俺は無理やり視線を左に逸らす。だが、その実りに実った二つの果実がどうしても視界に入ってしまう。入り込んでしまうんだ。


 もはや開き直るしかない。


「あのー、リディアさん? バスタオルを胸元まで上げればいいんじゃないかな?」


「ウチのバスタオルはこれ以上あげらんないよ」


「ん? なんで?」


 リディアは目線を元に戻し、自身のバスタオルを指差して言い放った。


「何でって……これ以上あげたら見えちゃう————言わせんな! 短いタイプのバスタオルなんだよ! よく見てみろ!」


(やっぱり恥ずかしがってるよな)


「うん。確かに短い。今度からはちゃんと全部隠せるタオルを用意しないとだな!」


 女湯に男が隠れている想定でタオルを用意する必要があるのか、甚だ疑問ではあるが……。


 さて、察しの良い諸君ならお分かり頂けるだろう。


 ここまできたらいくしかない。色んな人と親密度を上げて魔王を倒さないと。俺は勇者だからな。


「そろそろ、ここから出てった方がいいんじゃないか? 他の人間来ちまうぞ?」


「そうだな。だがその前に……」



 ————————密会……発動。



 禁断の宴が今……始まる。



 ◇



「うわっ!?」


「我が寝室領域へようこそ」


 リディアは辺りをキョロキョロ見渡している。外部に飛んだと思ったのか、両手で胸を覆い隠し恥じらっている様子。


「リディア! お前本当は恥ずかしいんだろ! 見られたくないんだろ!」


「なな……何を言っているんだお前は……別に恥ずかしくなんか……ないんだからな……!」


「安心するんだ! 解放しろリディア。思うままに女を解き放つといい!」


 性欲爆発は近い。いや、もう目の前まで来てしまっている。今まで女の部分をひた隠しにしてきたツケが回ってきたんだ。


「うぐっ……はぁっ……体が熱い」


(随分と早い。ユカリよりもちょろかったな)


 俺は、リディアの必死に隠そうとする腕に優しく触れ、静かに下ろすよう命じた。


「そうだ。もう隠す必要なんかないんだぞ。さぁ、俺の手と融合する時がきたんだ」


 赤ん坊の時以来、触れることのなかった未知の領域。果たしてどんな感触なんだろう。もはや俺の欲求は留まることを知らない。


 リディアは力なくベッドに座り込み、下を向きながら言った。


「兄ちゃんさ……そんなに触りたいのか? ほんとに……ほんとにちょっとだけだぞ……ちょっとだけだからな……!」


「あぁ、優しくプニプニしてやるから……」


 初めて見せた心の底からの恥ずかしがった顔。ある意味で純粋過ぎる彼女を……完全に堕落させた。


 俺はおっぱいと言う名の肉塊に手を伸ばしている。否! 向こうから寄ってきているのだ。


 少しずつ少しずつ、偉大なるおっぱいが近付いてくる。まさに至福。


 高鳴る心臓の鼓動。指を滑らかにウェーブさせながらその刻を待つ。




 解放の刻きたれり——————。


「あぅぅ、ぅぅ……ん」



 ◇



 儀式は終わった。


 リディアが本当に気絶しちゃいそうだったから、途中で解除してあげたよ。


 今度意識がちゃんとしてる時に触ろう。恥じらわないリディアを見ても仕方ないからな!


「リディア、お疲れ様!」


「うん……。こんなにたくさんご褒美してやったんだ……! 今度何か奢れ……」


 リディアは急いで服を着用し始め、誤魔化すようにコーヒー牛乳を飲んでいる。乳がデカいのは牛乳を飲み過ぎたからだな。


「いいぞ! 何でも奢ってあげよう。勇者は羽振りがいいんだ!」


「うん……わかった……絶対誰にも言うなよ……絶対だからな!」


(うわっ、デレてる! 可愛すぎかよ!)


 ゲームでは見せなかった裏の顔が垣間見えた瞬間。リディアの可愛らしい外見と比例した、正真正銘の女性の表情になっている。


 こうして、リディアは密会を受けたことで……ツンデレ化したのだった。



 ◇



 再び秘密の抜け道を通って書庫へ戻る。ユカリが慌ただしく駆けて来るのが見えた。


「こんな所に居たのですね。魔王の幹部がすぐそこまで来てます。急いで向かいましょう!」


「たっぷり英気も養ったし、いっちょやりますか!」


 新たに堕落させた仲間を得てご満悦。


 次はいよいよ幹部と相間みえることになる。魔王軍との決戦はもう目の前だ。



【 リディア 】

【 親密度 MAX 】


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