第38話 火山地帯の攻防 Ⅳ



 正体不明の人物が放った水魔法によって、ブレイズドラゴンは怯んでいる。炎を纏った翼が鎮火しており、空へと飛翔ができなくなっていた。


「アンタ達がヤバそうだったから来てあげたわよ」

「エレナ?!」

「たまたま通りかかっただけよ」

「それでも助かった!」


 丁度タイミングよく空を飛行していた魔女エレナが水魔法で助けてくれた。新たなほうきを購入したそうで自由自在に乗り回している。


「新しいほうき買ったんだな」

「ええっ、やっぱりこれがないと移動が不便なのよ」

「ふーん。今日の下着は水色っと」

「アンタねぇ、いつもそんなことばっか考えてると、脳みそが豆腐になるわよ」

「なるべく自重する」


 エレナは立て続けに水属性魔法を放つのだが、少々威力が足りていないみたいで、致命傷にはならないようだ。


「エリシア様から凄い魔力を感じるけど」

「そろそろ溜まり切ると思う」


 エリシアの体から神聖なオーラが解き放たれている。光と炎の二重に連なった色を帯びながら、目を見開いて言い放った。



「————エンブレイズ・ホーリー!!!」



 とてつもなく大きな光のビームがドラゴン目掛けて一直線に飛んでいく。その炎属性を宿す光が巨大なドラゴンを丸ごと飲み込んで、空の彼方へと吹き飛ばしてしまった。


 チートクラスの大魔法をお見舞いしたエリシアは、魔力を使い果たしてへたり込んでしまった。心配になった俺はすぐさま駆け寄って声をかける。


「エリシアごめん。無理させ過ぎちゃって……」

「いいえ。わたくしが勝手にやったことですので」

「本当に凄かったよ!」

「ふふっ、隠れて特訓してますからね」


 俺は一緒に生活をしておきながら、エリシアのことを知らなすぎるのだ。努力を繰り返して頑張った結果が、今の状況に繋がっている。


 今回は三人の力が合わさって何とか勝利することが出来た。


 ブレイズドラゴンは討伐出来たが、肝心の武器は何処にあるのだろう。ゲームでは、確か宝箱っぽい金の箱が山頂付近に合ったと記憶している。


「アタシが空中から見てきてあげるわよ」

「助かるよエレちゃん。今度なんか奢ってやるよ」

「ふ、ふん! まあ、アンタの為に仕方なくやってるだけだから」

「相変わらず素直じゃないなぁ」


 可愛らしいパンツをチラつかせながら、山の周りをグルグル回って調べるが、一向に宝は見当たらない。


 この火山で手に入るはずの武器がないとすれば、誰かが既に持ち去った可能性が高いな。


「くそっ、先を越されたっぽいな」

「これはもう諦めて戻るしかありませんわよ。そろそろクーラードリンクも切れる頃合いですし、使役魔獣達を回収しなければ」


 俺たちは仕方なく元きた道を戻って下山することにした。エリシアが辛そうにしているので、お姫様抱っこで連れてってあげよう。


「ちょっとアルト……こんな端ない格好……」

「もう限界なのは分かってるから、無理しないで」

「……バレバレでしたね」

「それにエリシアは軽いから余裕余裕!」

「もぉ、またそうやって茶化すんですから」


 近くには高熱のマグマが流れているので、エレナの魔法の支援を受けながら進む。


「このフィールドはエレナが打って付けだったな」

「いや、アタシもう限界よ? 熱くて熱くて死にそうなんだけど」

「え、そうなの?」

「体力低めだから、長旅はゴメンだわ」


 確かにエレナは体力が低く設定されたキャラクターだったから、この気候は厳しかったみたいだ。


「やっとテントが見えてきたな」

「これだけ歩いて結局収穫なしですわね」

「ああ。まあ修行だったと思って帰るしかないかな」


 俺たちは残りのクーラードリンクを全員で飲み干し、テント内で休憩を取った。


「もう大丈夫ですわ。運んで頂き感謝致します」

「ふっくらしてて持ちごたえがあったよ」

「ソレって褒めてるのでしょうか」

「もちろん!」


 そんなこんなで、皆はどっと疲れた体を横にして、すぐに眠りに入っていった。



【 エリシア・モンテローズ 】

【 親密度 : 6100 】

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