第39話 現実世界への帰還



 気付いたら俺は天国にいた。


「またこの場所に来ちまったか」

『フォッフォッフォッ』

「うわっ、近い、近いって神様」

『スマンスマン。つい楽しみでのぉ」


 何故だか俺は死んでいた。結果的に会いたくもないジジイと再びの邂逅を果たしているのだが、目付きが怖いな。


「俺が何で死んだか分かりますか?」

『ふむふむ。ワシは神じゃからの、当然知っとるよ』

「教えてくださいよ」

『タダって訳にはいかんじゃろ』


 分かり切ってたことだから期待はしてなかったけど、ほんとガメつい神で困っちゃうよな。


「で、一体何が欲しいんですか」

『前言わんかったかのぉ』

「写真集ですかね」

『エレたんの写真集じゃ』


 やはり保険として撮っといて正解だった。これで復活させてもらえば帰れるだろう。


 俺は持っていた数々の写真を爺さんに見せてやったのだが、神である変態はアホみたいな笑みを浮かべている。


『ふむ、ほほぉ、うひゃひゃひゃ』

「……」

『ええのぉ、微妙に見えないのがエッチ過ぎるんじゃよ』

「……」


 三十分が経過した。


「満足しましたか?」

『おっぱいとか●●●のどアップはなかったようじゃが……これはこれで楽しめたわい』

「そんなもん撮れる訳ありませんよ。バレたらエリシアの母に打首にされますから」


 エレナの写真集を見てご満悦の様子。


 神は重い腰を上げて、ようやく死の原因を教えてくれた。


 そう。

 俺はどうやら魔王に殺されたらしい。


 火山に勇者がいることを聞きつけた魔王は、夜な夜なテントにやってきたみたいで、とある美少女を奪っていった。そしてぐっすりと眠っている俺に向かって魔法を放ち、逃走したのだ。


 寝込みを襲われた俺は呆気なく死亡してしまい、他のヒロイン達は魔王から逃げるべく帰っていった。


 エレナとバニラは何とか逃げ仰せたが……エリシアが魔王に誘拐されてしまった。


「悪いけど早く生き返らせてください!」

『まあそう焦るでないワイ』

「そんなこと言ってる場合じゃ……」

『お前さん、特殊でエロいスキル持っとるじゃろ』

「一応ありますけど……」

『そのスキル、覚醒させてやっても良いぞ』

「えっ、えぇぇぇ!!??」


 裏スキル密会の覚醒。


 寝室領域をフィールド上に具現化させることができる。範囲内にいる女性は性欲が急上昇し、とてつもないパワーを引き出しつつ戦わせることが可能となる。


「ここまでくると、もう調教とかいらなくね?」


 外部との繋がりが遮断されていた今までとは違い、時間の流れる現実空間に寝室を召喚する。


 本来の効果である女性との密会も問題なく使用できる。覚醒すると戦闘でも使用できるので、使い勝手が大幅に増すこととなるのだ。


「マジかよ、覚醒すれば魔王討伐できるかもしれないじゃん」

『可能性はゼロじゃないの〜』

「すぐに覚醒させてくれ!」

『それは無理じゃな。先にある場所に行って手に入れにゃならんアイテムがあるのじゃ』

「何処で手に入るんですか!」

『現実世界……お主が元いた世界じゃよ』


 まさか再び現実世界で社会生活をしなきゃいけなくなるとは……夢なくなるじゃん。


 戻るって言っても、小森拓郎死んでるし、どうやって元いた地球に帰るんだ。


『さて、あとはお前さんが決めるのじゃ』

「わかりました。元いた世界に戻って、そのアイテムとやらを手に入れればいいんですね?」

『そうじゃ。この地図の場所にアイテムは存在している。そこを目指すのじゃ』


 思いっ切り日本の東京都渋谷区なんだが、ここに何があるんだろ。


『では、検討を祈る』

「うわぁぁぁぁぁぁぁあああ……」


 目の前に現れた黒い渦に吸い込まれていく俺。


 神が何やらニヤついた顔をしていたのは気のせいだろうか……。


 現実逃避の極みであるファンタジー世界を抜け出して、再び日本へと戻った。



 ◆



『拓ちゃん! しっかりして! 拓ちゃん!』

「うぐっ……眩しい……」


 部屋中に響き渡るその声には聞き覚えがある。


 そりゃそうだ。

 だって声を張り上げているのは、俺の母親なんだからな。


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