第44話 病院から始まる現代生活 Ⅴ



 ふざけていた異世界生活から一変し、現代の過酷な社会生活が始まりを迎えた。


 奇跡的な再会を果たした俺と由香里は病院に戻ってきたのだが……今現在、俺は驚くべき光景を目の当たりにしている。


『ドクター! ドクターしっかりして下さい! ドクターぁぁぁぁっ!!』


 俺を見てくれていた医師は昏睡状態に陥り、目を覚まさなくなってしまった。脈拍や呼吸は安定しているが、未知のウイルスによって目覚めない体となってしまったのだ。


 看護師は泣いている。この病院で唯一の非感染者の男性を失い咽び泣いているのだ。この先の病院の維持に必要不可欠な医師を失くすことがどれだけの痛手だろうか……考えただけでも悲惨である。


 だが少ししてから、看護師は泣くのをやめて俺へと向き直る。


『私の唯一の……がいなくなってしまったわ』

「今なんて言いましたか?」

『私の唯一のセフレがいなくなってしまいました!』

「……」


 そう言うと、俺に向かって襲いかかりベッドに押し倒してきた。この様なことが日常茶飯事に起きてしまうのが、男性不足の致命的な部分である。


 ちっ、病むを得ないがオリハルコンの剣で少し動けなくしてやるしかない。女性を傷付けるのは本望ではないが、数分おきにヤッていては腰力がいくらあっても足りない。


「アルト、待って下さい。人間を傷付けてはダメですよ。彼女は私と同じで本能に従って動いているだけなのです」

「だけどヤバいってこれ! 三十代後半はさすがに対象外だって!」

「コレを使ってください。HPDヘルスポイントダウン銃です」


 説明しよう。


 HPD銃とは、我を失ってしまい、性欲の奴隷と化した女性の性欲を急激に下げる銃だ。装填された弾を打ち込むことで落ち着きを取り戻し、しばらくの間は性欲を抑えることが可能である。弾といっても細い注射針を打ち込むだけなので、傷が付かずに沈静化させられる便利なアイテムなのだ。


 俺は銃を打ち込んだ。


「いっけぇぇ!!」

『うっ……あ、頭が……』


 HPD弾を打ち込まれた看護師は麻酔がかかった様にその場でへたり込み、眠ってしまった。安らかな寝息を立てて眠る三七歳離婚歴有りの女ナースは無事静まったのだ。


「こういった方が最近増えてきているので、充分に注意してください。密会を使うのは自由ですが残量には気を配るように」

「肝に命じておくよ」


 近くに居合わせた母ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。


『拓ちゃん、やっと蘇生したのに冒険に行っちゃうのね』

「そうなんだ。世界の平和を取り戻すためには俺が動かなきゃならない」

『分かったわ。なら、頑張ってきなさい』

「サンキュ!」


 ウチの母ちゃんがまともな人間でよかったぜ。まあ、さすがに息子に手を出す禁忌は犯さないと思うが、とりあえず一安心だよ。


『……』

「ん? どうした夏美」

『お兄……気を付けていってらっしゃい』

「ああ、お前も気を付けるんだぞ」


 義理の妹の夏美は、寂しそうにしながらも後押しをしてくれたので、肩を叩いてお礼を返した。


 夏美は血の繋がらない兄妹で、俺が三歳の頃に実家へと引き取られている。その事実を知ったのは小学校の五年生くらいで、非常に驚いていたのは記憶に新しい。


 俺は、病院内の洗面所で顔を洗うためにトイレへと立ち寄る。鏡に映った顔は小森拓郎ではなく勇者アルトだった。だがしかし、母ちゃんも父ちゃんも妹も、何食わぬ顔で接してくれているのだ。親子兄弟の絆は見た目では左右されないってことだな。


「由香里、早いとこ一つ目の結界を破壊しに行こう。エリシアが処女を奪われるのは時間の問題だ」

「そうですね。一番近くの場所を知っているので、先ずはそこを攻略していきましょう。準備はいいですね」

「行こう。新たなる冒険の旅へ!」


 こうして、異世界帰りの俺は、魔王討伐に向けて病院を出発したのだった。



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 一貫性がなくなり訳が分からなくなってきたので、ここで≪完結≫と致します。ここまで僕の稚拙な文章をお読み頂いた方に感謝申し上げます。



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裏スキル『密会』をヒロイン達に使用してたら勝手にハーレムが出来上がったので、魔王は後回しにして好き勝手やります 微風 @0wc2k

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