第43話 病院から始まる現代生活 Ⅳ



 行為を済ませたことで、密会フィールドが解除され、脱ぎ捨てられた服は全て元通りになっている。


 元居た景色に戻ってきた俺は、ただひたすらに呆然と余韻を味わっていた。腰の上で激しく跳ねていた由香里が脳裏に焼き付いて離れない。


 由香里は元々変態メイドだったから、そこまで驚きはしなかったが……唐突に童貞を奪われてしまった。


「どうでしたか、初めての感想は」

「生きてきた中で一番気持ち良かったと思う」

「私も性欲が戻りました。感謝します」

「こちらこそ……」


 由香里は主に近接攻撃を得意とするアタッカーで、メリケンサックを拳に装着して戦闘を行う。服の内ポケットには小さな鉄球を仕込んでおり、若干遠距離にも対応可能だ。


 俺との密会を済ませたことで基礎戦闘力が大幅に向上している。攻撃力が千を突破しているため、大抵の雑魚敵は瞬殺出来るだろう。


 見た目は黒髪ロングのストレート。現在は都内の女子校に通う高校二年生だが、元はエリシアの従者のメイドである。おっぱいは小さいが顔は可愛い系で、とにかく卑猥な言葉が大好きな女だ。


 俺はエリシアの姿が脳裏に浮かび罪悪感に苛まれている。この現状を打開するには致し方ないとはいえ、現実に戻った直後にセッ●スをした事実は消えない。


「気に病むことはないですよ。この世界では子作りが最優先されますから、誰も咎めたりしませんので安心してください。私のパワーも補充してくれましたし、至れり尽くせりです」

「前向きに考えるしかないな。それで俺はこれからどうすればいいんだ?」

「魔王を討伐してエリシア様を救出してもらいたいのです」

「じゃあ今すぐに行こう」

「それは無理なんです」


 魔王の居城は強力な結界によって封じられている。七つの結界を全て破壊しない限り、魔王には近付くことすら出来ないのだ。先ずは一つ一つ結界を解除して周りながら仲間を回収していくのが無難だろう。


「アルトにもそろそろ武器が必要ですよね。私に着いてきてください」


 そう言うと、近くの駅まで歩き始めて、荷物を預けるロッカー室へと連れてこられた。百を超える大量のロッカーの中の一番右奥の鍵を開けると、中から強そうな剣が出てきた。


「これがディルナッド戦記の最強武器『オリハルコンのつるぎ』です」

「こ、この黄金色に輝く武器が、噂の剣なのか」

「ええ。この装備を持って戦いに参加してもらいます。前みたいに遊んではいられませんし、貴方とのセッ●スを待ち望んでる人が結構いますから、自慰行為は控えてくださいね」

「……もはやお前ただの痴女だな」

「ありがとうございます」

「褒めてねーよ!」


 俺の常識からかけ離れ過ぎていて頭が追いつけないのだが、現代社会においても勇者は最強だということだけは分かった。


 異世界ではハーレムを目指していたが、もう既にハーレム状態なので、目標を魔王討伐に切り替えて、麗しき姫君エリシア・モンテローズを救うとしよう。


「由香里、男女比はどうなっている」

「現時点では、約一対百ですね。これはあくまでも今の調査記録となりますので、徐々に増えていくかと思われます」

「好き放題密会使うことはできる?」

「無理ですね。さっきも言いましたが、自慰行為は極力控えてくださいね。腰力ようりょくを消費しますから」


 腰力とは即ち、行為を行うと消費される体力に近い数値にあたる。俺の最大値は100HPヘルスポイントだ。一回につき20消費するので一日あたり最高でも五人にしか使うことが出来ない。加えて自慰行為をした場合も同様に20HPを消費してしまうのだ。ちなみに24時間で全回復する。


「だいたい分かりましたか?」

「彼女いない歴=年齢から随分と躍進したもんだな。相変わらず彼女はいないんだけど……」

「そこはエリシア様と頑張るしかないでしょう」

「マジでめちゃくちゃだな」


 俺たちは一旦病院に戻った。


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