第42話 病院から始まる現代生活 Ⅲ



「アルトですよね」

「お、お前は!!」


 そこに居たのは、メイドとしてモンテローズ城で働いていた『ユカリ』こと中谷なかたに由香里ゆかりだった。


「ユカリ、お前どうしてこんな場所にいるんだ?」

「気が付いたら、この変な世界に居ましたね」

「いやいやいや、意味分からん。お前ってメイドだったよな? 何で制服着て街うろついてんだよ」

「私の年齢は16ですよ? 別におかしなことじゃありませんよね?」

「まあ……それはそうなんだが……」


 パラレルワールドにでも迷いこんだ気分だ。


 驚いたのも束の間、気が付くと多くの女性型ハーピーに取り囲まれている。ディルナッド戦記から溢れ出した魔物だ。背中に羽を生やして人間に近い体付きをしている。


「アルト、下がってください。私が対処します」

「任せた!」


 ユカリは鉄球を取り出して応戦する。しかし前と違って力が全く出せていないように感じた。


 そう、今の彼女は異世界転生した普通の女子高生に過ぎない。俺との親密度が解除された今、戦闘力が大幅に下がってしまっている。


「ぐっ、結構強いですね」

「調教を使って強化してやる!」


 ……ここは現実世界、そんな都合の良いスキルなどある訳がないのだ。


 ユカリは何とかハーピーの群れを撃破したが、疲れ切って膝を付いてしまった。


「お前ずいぶんと非力になったんだな」

「ええ、だいぶ力は失われてしまいました」

「てか、何でこんな夜中に出歩いてるんだ?」

「フラッと散歩してただけですよ」


 こんな夜中に制服で出歩いてたら襲われてもおかしくない。見知らぬ男に連れ去られる可能性だってあるのだ。


「夜遅いから、良い子は家に帰って寝なさい」

「大丈夫ですよ。今この世界で女性を襲う人なんて魔物しかいませんから」

「はっ?? どういうこと?」

「アルトは来たばかりだから慣れないかもしれませんが……男性が少ないので、わざわざ襲う必要がないんですよ。むしろ逆の方が危ないです」


 実情が段々と分かってきたかもしれない。


 今の日本は圧倒的な男性不足に陥っている。故に、女性が夜中にフラフラと出歩いても対して危険はない。逆に男性が外を歩いていると襲われる可能性が高い……そんな状況だ。


「あれだけ女性を弄んできたんですから、しっかりしてください」

「いや、言う程弄んでいないんだが……」


 どちらかと言えば、性欲上昇によって興奮し始めたヒロインに問題があるのでは……。


「スマホ出してください」


 スマホのホーム画面を開くと見慣れないアプリが存在することに気付いた。『スキル』と表示された場所をタップすると、まさかの『密会』の二文字が目に飛び込んできた。


 密会だけはしっかりと引き継いでいる。


 【密会】≪女性との関係性を築くために誰にも邪魔されないフィールドを展開する。密会に引き入れた者の性欲が上昇し、眠っている力を呼び覚ます≫


「嘘だろ……」

「女の子に使いまくってたスキルありますよね」

「はい。ありました」

「先ずは私に使っておさらいしてみましょう」

「えっ??」

「時間がありませんから早く」

「分かった」


 密会をタップすると、大きいベッドが置かれている部屋に引きずり込まれた。時間の流れは止まり、外部との接触を完全に遮断された空間、『寝室領域』を展開したのだ。


 怪しげな雰囲気に包まれたピンク色の壁に囲まれたフィールド。大きなベッドは三から四人が寝れるくらいのサイズ感があり、余裕のある広さとなっている。


「あの、中谷由香里さん?」

「ここは相変わらず気味が悪いですね」

「もしかして、もう高揚し始めた?」

「ええ、徐々に身体が疼いてきてます」

「ちょ、ちょっと待って」

「アルト、いきますよ」


 再び由香里の性欲は上昇を始めた。

 由香里は俺を押し倒して馬乗りになる。

 溜まりまくった性欲を発散させんと、無言のまま下半身のスカートと下着を全て脱ぎ捨ててしまった。


「嘘でしょ……」

「現実です」

「ちょ……もう入っちゃっ……」


 もう由香里の暴走は止められない。


 俺は流れる様に由香里に身を任せ、あろうことか……。



















 シテしまった。


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