第20話 神を名乗る変態ジジイ



 シローナの誘導により、生い茂る樹海が目前に迫っていたが、その前に何とか密会を解除することができた。


 脳内を駆け巡っているシローナのおっぱい。

 あの触り心地が頭にずっとこびり付いて離れない。


(大丈夫。揉んだのは一回だけ。ほんのお試しに過ぎないんだ。悪びれる必要はない)


 異世界にきて初めて直接触ってしまった。

 はっきり言って後になってしまえばどうということはないが……あの瞬間は、産まれてこの方感じたことがない感触だった。


 これがエリシアだったら失神してたと思う。


 シローナの異常な性欲は、寝室領域を離脱してから落ち着きを見せるが、腕に抱きついたまま離れてくれない。


「くっ付きながら歩いてるから、他人の視線が凄く痛いんだが……」


「勇者様を……取られたくありません」


 こりゃだいぶ厄介な事になっちゃったな。

 城まで着いてこられたら言い訳できなくなるよ。


「お前家に帰らなくてもいいのか?」


「私には最初から家なんてありませんよ。親の顔も見たことありません」


 劣悪な環境で育ってきたんだろうな。

 俺が完全に見離したら一体どうなってしまうんだろう。


 まあ出会った時よりは喋れるようになってるし、これ以上酷くはならないと信じたい。


 シローナの心の闇を綺麗さっぱり取り払うのは容易ではないと改めてわかった。

 今後密会に誘うのは止めておいた方が無難だな。俺が危ないし、むしろ悪化するまである。


 病み系淫乱女子のシローナは、一旦教会の神父に預けて事なきを得た。

 神は全てをお許しになるだろう。



 ◇



 翌日。


「あぁーーー暇だわー。何もやる事ない」


 エリシアちゃんと遊びに出かけてイチャイチャしたいけど、公務で忙しいんだよね。

 ゲーム世界でも働かなきゃいけないなんて……リアル世界と然程変わんないよ。


「いっその事、そこら辺の女の子に密会使って遊んでよっかなー」


 密会を使って遊んだとしても、外部の時間の流れは完全に止まっているから、あまり意味を成さないような……。


「シローナの相手してたら俺まで病んできたかも……平原に散歩でもしにいくか」


 暇を持て余した俺は、エリナス大平原へと向かう……この行動があんな悲劇を生むとも知らずに……。




 風が気持ち良い。

 この広大な景色はいつ見ても壮観だな。

 今日の空は雲一つなくて……。


 ん?


「キシャあぁぁぁぁぁあーーー!」

「馬鹿でかいドラゴン! こっち向かって来てる」


 今日はヒロイン達を連れてない。

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…………死っ————。


「ぐはっ……っ——————っ……」


 勇者アルトは巨大な竜にブレスを吐かれて死んだ。

 こうして、約一週間に渡る冒険の旅は終わりを迎えたのだった————。





 ————。

 ——。





「うっ……ここは……」


 一面真っ白な空間が広がる。

 前後左右上下、どこを見渡しても先が見えない。

 地面すらも存在せず、空中に浮いているような感じだ。


「そうか……俺とうとう死んだんだな。見た感じ天国っぽいし、俺のやってきたことは間違ってなかったんだ」


 いきなり異世界に飛ばされて不安だったけど、ここまで精一杯頑張ってきた。

 全力を尽くしてきたんだ。


 だからこそ……俺は悔しさで溢れている。

 悲しみに打ちひしがれているんだ。

 勇者として降臨し、偉大で崇高なる指名を授かったというのに……。


 神は可哀想な俺に対して質問をした。


『最後に言い残すことはあるか?』


 …………。

 …………。











「はぁ……最後にエリシアと●●●したかったな……」



 屑である。



『フォッフォッフォッフォッフォッっ!』


 目の前に突如現れたのは、白い髭を足まで伸ばし、頭に黄色い輪っかが着いてる爺さんだった。


『お主は……死んだのじゃ』

(知ってる)


『ここは天国なんじゃよ』

(知ってるって)


『ワシは神じゃ。驚くのも無理はない』

(アンタを見た瞬間分かったけどな)


『お主にもう一度復活のチャンスをやろう』

(そのセリフを待ってたんだよ!)


「えーっと神様、俺を復活させてくれるんですか?」


『……タダという訳にはイカん』


 見返り求めるの勘弁してくれよー。

 持ち合わせないし、無料で生き返らせてほしいってのが本音なんだが。


『フォフォっフォ。ワシが求める物は、エレちゃんの写真集じゃよ。アップの写真がええのぉ。出来れば水着の写真が入っておれば最高なんじゃが……あとは×××のどアップとか●●●のどアップとか——————』


(神ですら屑じゃどうにもならない。コイツを信仰しなきゃいけない神父って……)


「申し訳ないですが写真は持ってません。代わりと言っちゃ何ですが、エレナが使用していたほうきじゃダメですか?」


 アイテムショップ店長と同じ目してるわ。

 そんなに目を輝かせるほど欲しいのか。


『交渉成立じゃ。今からお主を転送する。次はしっかりと品を用意しておくんじゃな」


(何でこのジジイのために、俺がエレナの写真集作らなきゃならんのよ)


『ほれ、このcontinueボタンを押しなさい』


 ずいぶんと原始的なんだな……。




 ——————。

 ———。




「ぐっ……眩しい……ここはベッドか……どうやら戻ってこれたみたいだな———うわっ!!」


「アルト……! 生きててくれて……わたくし……本当に……心配で心配で……」


 急に抱きつかれた。

 神様ありがとう。


「エリシア……心配させちゃってごめんね。俺はこの通りちゃんと生きてるから」


 色んな意味で……もう絶対ゲームオーバーにならないようにしよう。

 そう心の底から思うのだった。


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