第35話 火山地帯の攻防 Ⅰ
モンテローズ王国の南に位置する大きな火山地帯、
てな訳で、今日はヒロイン達を引き連れて灼熱の地へと冒険に行く予定だ。
まずはパーティーを編成しないとだな。エリシアとバニラのお嬢様コンビにしてみてもいいだろう。性格が真逆の二人で少々不安はあるが、火力的には申し分ない。
「エリシア、今からアーガイル火山に行こうと思うんだけど、一緒に行かない?」
「いいですよ。アルトとの冒険、楽しみです!」
「ありがとう! もう一人呼ぶから待ってて!」
————バニラをパーティーにセット!
数分後。
「勇者さん。わたくしをモンテローズ城に呼び寄せるなんて、一体どういうことなのかしら」
入ってきたバニラに対して、エリシアはビックリした表情で言った。
「貴女は……バニラさん?」
「ええ、あっ、エリシア様、久しぶりですわね」
「アルトの知り合いだったとは驚きました」
「まあ、そうね。一応知り合いですわよ」
エリシアにとっては、元々姉妹みたいな関係で、幼い頃はよく遊んでもらって世話になっていたんだ。あのバニラを見た後だとニワカには信じがたいが、ゲームでの関係性は良好だったはず。
「でもバニラさん、どうやってアルトと知り合ったのでしょう。接点がないように思えるのですが」
「わたくしとアルトさんは、主従関係を結んでおりますので」
話をややこしくするんじゃないぞ。どうせ俺が使いっ走りの手下で、お前が主人って構図なんだろうけど。この超が付くほどのドS女が、人の下に着くなど有り得ないんだ。
「わたくし知りませんでした」
「おーほっほ! エリシア様も知らないとは、何か言えない理由でもあるのかしら」
コイツが密会で犯した罪を暴露する前にフォローしなければ。
「正式な依頼を受けた過程で、バニラを仲間に引き入れたんだ。今日呼んだのは他でもない。エリシアに紹介しようと思ったからなんだ」
「そういった事情があったのですね!」
他の女に手を出したなんて言われたらたまったもんじゃない。いや、厳密には襲われたのは俺だがな。
「エリシア様、この勇者さんはわたくしが精神誠意ご奉仕して差しあげたのです」
「ご奉仕とは?」
「それがですね……アルトさんのち◯こを……」
「だああああぁぁぁぁっっああ!!」
何言っちゃってんのコイツは!
今思いっ切りち◯こ言ったよね!
純真無垢なエリシアちゃんに卑猥な隠語を口走るのはやめてください!
密会で変に刺激を受けたせいで良からぬ方向に進んじゃってるんだが。しかも一切の躊躇がないから遮るのも一苦労だよ。
「アルトがどうかしたのでしょうか」
「いや、何でもないんだエリシアちゃん。気にしないでね、あははは……」
(別に隠す必要ないじゃありませんの)
(普通隠すだろ! 言っちゃダメ! 絶対にダメ! バニラとは主従関係でもいいけど、エリシアとは恋愛関係なの!)
「まあいいですわ。で、今日は何か用事があるんじゃなくて?」
「ゴホンっ。そうそう。新しい武器を新調するために、アーガイル火山に行くつもりだ」
並み居る冒険者を苦しめてきた火山地帯。熱気に包まれた地獄の環境として恐れられた難所である。アーガイル火山を寝床としているブレイズドラゴンが生息しており、踏み入った人間を返り討ちにしているのだ。
「気温が高くて体力を奪われるから、クーラードリンクを買ってから行こう」
◇
俺たち三人は
少し前にエレナの魔法によって吹き飛んだアイテムショップだったが、店長の弟である梶進が新しく新設した店だ。
『いらっしゃいませ。梶進のアイテムショップへようこそ!』
「済みません。クーラードリンク六つください」
『ご購入ありがとうございます!』
よし、買う物買ったしさっさと出発して……。
『ところでお客様。そんな綺麗なお嬢様二人を引き連れてどこにお出かけで?」
「火山に行くつもりなんですよ」
『なんと。でしたらこのキャンプセットはいかがでしょう』
「キャンプしに行くんじゃないんですけどね」
アイテムショップ店長がニヤけ顔で進めるキャンプセットだから、何か裏がありそうだが……。
……そうだな。長い旅路になる可能性も否めないから一応買っておくか。飯も作る必要がありそうだし、一式揃ってれば困らないだろう。
「じゃあそれも買います」
『お客様の火山へ立ち向かう勇気に免じて、今回お代は頂きません!』
「この店長意外と太っ腹じゃない。遠慮なく貰っておきましょうか」
梶進は帰ろうとする俺に対して耳打ちをしてくる。
(代わりと言っては何ですけど……エリシア様とバニラ様の寝顔とか、ふとももとかお尻とか……できればでいいんですけど、おっぱいとか◯◯◯とか×××の写真撮ってきて僕にくれませんかぁ?)
はぁ。まあ予想通りの……屑である。大体そんな変態的な写真取れる訳ないだろ。エレナじゃあるまいし。バレたら親密度ゼロになるわ。
(一国の姫君の写真はまさにプレミア中のプレミア! 兄は魔女の写真が大好きでしたが……ふっ、時代遅れなんですよ)
「分かりましたよ。おまけで写真機も付けてください」
「毎度あり〜良い旅路を!」
クーラードリンク、キャンプセット、写真機を携えて火山地帯へと歩を進める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます