第23話 転生JKミユキ Ⅰ



 エレナとの撮影タイムが終わりを告げ、城へと引き返そうとした直後に事件は起きた。

 馬に跨りビーチの端から颯爽と駆けてくる女性。

 どうやら俺を狙っているみたいで、横幅数十センチにも及ぶ大剣を振り回しながら襲ってくる。


 俺を睨み付ける表情から察するに、相当の恨みを抱かれてることは一目瞭然だ。

 全く身に覚えがないし、会ったこともない相手だから弁明のしようもない。


 それになんだろう。

 そこはかとなく懐かしい雰囲気を感じている。

 漂うオーラというか、自分に似た何かを持ち合わせている謎に包まれた少女だ。


「勇者アルト! お覚悟を!」

「いきなり何だお前!」


 すれ違うと同時に容赦なく切りかかってくる。

 背中にはマントが装着されており、悪を許さない正義の味方的な佇まいだ。

 何より真面目な人間臭が漂っている。

 

 俺とは正反対だな!


 謎の少女は一旦馬を降りて、俺を軽蔑の眼差しで見つめてくる。

 一体俺が何をしたというのだろう。


「まあ待ってくれ! お前は何者だ?!」

「私は冒険者のミユキよ」


 なるほど。

 この女子が例のJK転生者だな。


 ミユキってことは日本人の可能性が高いが、何故俺のことを知っているのかが分からない。

 リアルで女子と仲良くなったことはないし、顔を見ても同中とか同高ではない事は明らかだ。

 

「何故俺を襲うんだ? お前の恨みを買った覚えはないぞ!」

「はぁ……貴方の糞みたいな生活スタイルを耳にしたからですよ」


 数々の功績を残した俺に対して、糞とは大変不名誉な言い草だな。

 見ず知らずの人間にそこまで言われる筋合いはないぞ!


 密会を見られた訳ではないだろう。

 時間の流れが止まるから絶対にない。


「貴方、次々と女の子を弄んでいるそうですね」


 何で知ってるんだコイツは。

 間違いではないんだが、弄んでいるとは少々過剰過ぎやしないか!


「私は……エリシア様が大好きなんです。美し過ぎるその美貌に、女ながら引かれてしまいました。ですが……今は貴方と暮らしてるそうですね」


 大体このゲームをプレイしてた理由はわかってきた。

 確かにエリシア目的で女性がプレイする可能性は十分にあるだろう。


「訳あってこの世界に降り立ちましたが、貴方の噂は街中に広まってますよ? 女の子を誑かして仲間に引き入れているとか何とか……」

「何を馬鹿なことを! 相手から寄ってきてるだけだ! 強制はしてないぞ!」


(魔王軍幹部を退かせた噂じゃなくてソッチ?)


「答えなさい!! 一体彼女らに何をさせたのですか!!」

「えーっと、おっぱい見せてもらった!」


 ミユキは沈黙中……。


 気付くと顔を真っ赤に染め上げ、手で覆い隠している。

 まるで自分のモノを見せたかのように恥ずかしがる様は新鮮だ。


「お、お、おおっ、おお……おっぱい?!!」

「呂律回ってないぞ」


 自分にもしっかりと肉付けされているおっぱいでここまで動揺するとは、純情すぎて可愛いな。

 いいだろう。

 少しばかりおちょくってやる。


「み、見たとは……な、な、生で見たのですか?」

「うん! 全部見た! 乳首も見たよ!」


(生って表現自粛しなさい。教育に悪い)


 俺の言葉責めによってミユキはたじろいでいる。

 肌の露出はほとんどないし、しっかりと服を着ているにもかかわらず、自らの胸部を隠す素振りを見せた。


「ちく、ち、乳首…………はわぁぁっっ……」


(おっと、純粋なJKには少し刺激が強すぎたかな)


 フラフラと蹌踉めくも体制を立て直し、こちらに剣を向けながら話す。


「貴方って……変質者ですね。勇者としての自覚はないのでしょうか?」

「魔王軍幹部撃退したよ? ちゃんと働いてるから! 功績しっかりと立ててるから!!」


 ゴミを見るかの如く、蔑んだ目でこちらを見つめるミユキ。


「エレナさんでしたっけ? 確か今は貴方の部下になってるそうですね」

「うん。俺に寝返った魔女だよ」

「魔女すらも誑かすとは……なんと下劣な方でしょう」

「誑かすとは穏やかじゃないなぁ。向こうから『奴隷になってあげるわ』って言ってきたんだから」


 耐えかねたミユキがジリジリと俺に近寄り、得意の剣技で攻撃を仕掛けようとしている。

 剣で切り付けられる前に口撃で対処せねばな。


「現実世界で彼氏はいたのか?」

「いましたが……それがどうかしたんですか?」

「どこまでやったのか教えなさい」

「どこまでって……何をでしょうか」


 ディルナッド戦記のヒロイン達よりもだいぶ純粋だな。ユカリに同じ質問したら確実に『●●●しましたよ』とか言い出すから。


「手は繋いだの?」

「はい……一応何回かは……」

「キスはした?」

「まだしてません!!」


 うん。これ以上は野暮だわな。

 でも聞いてみたくなっちゃうじゃん。

 どんな反応するんだろうねー。












「エッチな事はしたのか?」

「……うっ」


 瞬時に気絶した。

 ショックの余り気絶するとは、冒険者としての修行が足りんな。

 魔王戦はもっと過酷な戦いなんだ。

 サキュバスと夜な夜な密会するような敵だから、お前の手に余る相手だろう。


 ……ふっ。

 密会を行使するまでもないな!!


 俺は気絶中の元JKの顔を覗き込む。

 よく見てみると……可愛い。

 黒髪ロングのサラサラヘアーで真面目さが滲み出ているタイプの人だ。

 この世界ではある意味珍しいな。


「ミユキ様!! ……おのれっ貴様ぁーー!!」


(ちっ、俺の能力は男には効果がない。ここはアイツの持つ能力を確かめる為にも……シローナを召喚しよう)


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