第30話 ドSな令嬢バニラ Ⅱ



「アンタは……勇者アルトね」

「俺のことを知っているようだな」

「当然よ。この地に降臨した変態ってよく聞いてるわ」


 もうお決まりのパターンだよ。

 考えてもみれば、まともに魔王と戦ったのって一回だけだし、後は女の子の裸体眺めて興奮してるだけだからな。


「よく分かってるじゃねーか! お前もすぐに楽にしてやるからよ! 大人しくその子を解放してやれ!」

「ふんっ、コイツはわたくしの従者ですわよ。自分から靴を舐めてるだけだわ」


 従者は泣きそうになっている。

 嫌がる女子を見捨てることはできない。


「調教発動!! 覚悟しやがれ!」


 バニラはモンスターを使役する猛獣使いの女だ。

 使役した猛獣を自由自在に操る能力を持つ。


「行きなさい。ワーウルフちゃん」

「ユカリ、猛獣を撃退したら、奴の鞭を奪え!」

「了解です! とりゃぁー!!」


 ユカリは突進攻撃を仕掛けるも、ワーウルフの俊敏な動きによってかわされてしまう。

 すかさずパンチ攻撃をするが、メリケンの拳は標的には当たらずに部屋の壁をぶち破った。


「なんて野蛮な娘。あれは少々危険ですわね」

「当てさえすれば私の勝ちです」

「どうかしら。わたくしが使役できるのは魔獣だけではないわ」


 バニラは持っていた鞭を振り下ろし、従者に向けて魔力を流し込む。

 泣きそうな表情だった従者は立ち上がり、こちらに向かって攻撃をしかけてきた。


『バニ……ラ……様、お前ら……死ね……」

「ユカリストップ〜!!」

「ちっ、厄介ですね」


 バニラは従者を操り盾にしているので、俺たちは攻撃をすることが難しい。

 やはりバニラ本体をどうにかして叩く必要があるだろう。


「ユカリ、なんか武器持ってないか?」

「一応ロープ持ってますが、使えそうですか?」

「よーし、従者を縛り上げて身動きを取れなくしてやるんだ!」

「分かりました」


 ユカリは隠し持っていたロープを掴み、従者に向かってぶん投げる。

 グルグルと巻きついたロープを思いっきり縛り上げて従者は完全に動けなくなってしまった。


『ぐぐぐっ……』

「これじゃ本当に足手纏いじゃない!」


 バニラは従者に流し込んでいた魔力を止め、改めてこちらに向き直る。

 ユカリと俺はその隙を逃さなかった。


 身体強化フィジカルブースト!!


「うわぁぁぁ、漲ってきましたぁ!! 色んな場所が立っちゃってますぅ!!」


 ユカリの性欲が限界に達し、渾身の一撃をバニラにお見舞いした。

 すんでの所でかわしたものの、ユカリのイカれたパワーによって建物の床が崩壊を始めた。


「な、何なのよアンタたち。ドレスが汚れたわ……」

「今の内に奴の鞭を奪え!」

「はい! うりゃぁぁ!」


 鞭を強奪されたバニラはなす術もなく膝を付いている。

 さて、そろそろ行かせてもらおうか。

 ドS令嬢バニラを密会に引きずりこんでやろう。

 射程範囲までジリジリと近付き……。


 密会……発動。


「キャァァァァっ!!?」


 ……。


「ようこそ、我が寝室領域へ」


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