第11話 魔女エレナ Ⅱ
襲いくる鉄球を間一髪で避けるエレナ。負けじと鉄球を投げつけるユカリ。
戦力はユカリが圧倒しているが、ユカリの服に仕込まれた鉄球は残り僅かだ。他にも武器を仕込んではいるものの、いずれも近接武器のため役には立たないだろう。
ユカリとの親密度がMAXとなっている今、発動しているバフ効果は半端じゃないが、命中率には若干の難がありそうだ。ほうきに乗ったエレナを捉えるのは容易ではない。
「ちっ。あのサイボーグ女の鉄球が尽きるのを待つしかないわ。このまま回避に専念しましょう」
このままでは時間と共に劣勢となる可能性が高い。やむを得ないが例の作戦を実行させてもらうとするか。名付けて、パンツ丸見え作戦だ。
スカートを履いて空中に浮いている以上、常に見えてしまっている。俺だって見たくて見てる訳じゃないんだ。
「エレナ聞こえるか! お前————紫のパンツ見えてるぞ」
「……はっ」
エレナは茫然とした顔をしている。フラフラと空中を彷徨いながら、遂には地面へと降りてしまった。
「バカ……」
「エレナちゃんって、意外とスケベなパンツ履いてるんだねぇ。うわぁー恥ずかしー嫌らしいー」
などと揶揄うと、エレナは泣きそうになりながら暴言を吐き散らかす。
「馬鹿! 変態! 痴漢! 豚野郎! エロ勇者! 元の世界に帰れ!」
「おぃおぃエレナ。何を言っているんだ君は。これは不可抗力だ。たまたま空を見上げたら、紫のTバックが見えちゃったんだよ?」
「はぁー?! アンタ……マジでばっかじゃないの! 気持ち悪い奴! 変態死ね!」
飛び交う罵詈雑言。戦場はまさに修羅場と化している。張り詰めた空気の中、僅かな休息を取りつつ、待機をしていたユカリがポロりと言い放った。
「アルト、今しかありません。私たちを……密会へ招待すればいいかと思います」
言われてみれば、千載一遇のチャンスだよねこれ。魔法少女エレナもヘタってるし、引きずり込める。
「ユカリ。念の為なんだけど、もう一度同じセリフ言ってくんない?」
「わかりました、復唱します。
うん。聞き間違いじゃなかったみたい。
——————二人同時!!?
落ち着け俺。落ち着くんだ。
俺の腰力は現在60HP。今二人に密会を使用すれば、単純計算20HPしか残らないじゃないか。
加えて、ユカリは既に親密度MAXだから、蓄えている性欲も尋常ではないはず。下手したら0HPになる可能性も否めない。
くそっ。腰力回復には一週間もかかるんだ。ここでロリ魔女と変態メイド二匹相手に、一気に消費していいものだろうか。
俺は頭を悩ませた。近いうちに美女とお戯れになれる日がくるかもしれない。
————これは国の平和のためだ。民衆が勇者の活躍を心待ちにしている。
「ユカリ! 一気に距離を縮めて奴を捕まえるんだ!」
「了解しました! やぁぁぁっ!」
地上に降り立ったエレナを取り押さえるのはそう難しくはなかった。ユカリはエレナの腕を強く掴み離さない。
「ちょっ、アンタ何すんのよ! はーなーしーなーさーいー」
必死で足掻くもユカリの馬鹿力の前には為す術もなく、その努力は無駄骨となってしまう。二人はもう密会発動の射程圏内。人生初となる乱れたパーティの開催だ。
———————— 密会を始める。
◆◆
さて、今夜の宴は賑やかそうだ。気分が昂るぜ。なんたって、複数のパーティは初めてだからな。
「皆さん、我が寝室領域へようこそ」
「何この気持ち悪いピンクの部屋! ここどこなのよ! 帰しなさい! 帰しなさいってばー!」
苛立ちを見せるエレナを他所に、ユカリがベッドに座りながら口を開く。
「私…………もう限界です。体が火照って、暑くなってきちゃいました」
「なっ?! アンタ……何脱ごうとしてるわけ?! 頭おかしいんじゃないの?」
そうだ。ユカリの頭のネジはとうの昔にぶっ飛んでいる。俺の奴隷と化している今ならどんな命令でも聞き入れてくれるだろう。
「ユカリよ! メイド服は暑いだろ? とりあえずそこに脱ぎ捨ててしまえ!」
「この部屋暑いですもんね。脱がないと汗かいちゃいますよ」
メイド服を脱いで、インナーとふわふわしたカボチャパンツの姿となったユカリ。
「エレナ。お前もそろそろ暑くなる頃合いだろう。遠慮しないでスカートを脱ぎ捨てちゃおう」
「ア……アタシがそんな恥ずかしいことするわけないじゃない! 何考えてんのよ……このド変態……」
(意外と手強いな。押しが足りないみたいだ)
「アタシ……アタシだって本当は暑いのよ。でもスカートの下は……下着だから……脱ぐわけにはいかないの……」
「ふふっ、大丈夫だよ。さっき空で見せてくれたじゃん。ほら、自分の気持ちに素直にならなきゃ」
誰もが拒絶するであろう、その気持ち悪すぎる俺の囁きに、エレナは徐々に性欲が増加している。堕落への階段を一歩ずつ突き進んでいるんだ。
「そ……そうよね。汗かいて風邪でも引いたら大変だもの……仕方がないわよね……」
黒っぽいスカートに手をかけ、ホックを外し始めるエレナ。手が小刻みに震えているのが伺えるが、俺は別に強制しているわけじゃないんだ。
(マジで脱ぐのこの子。やばいどうしよう。刺激強すぎておかしくなりそうだ)
ここにきて小心者のゲーマー小森拓郎が顔を出しそうになる。拓郎、逃げちゃダメだ。しっかりと目に焼き付けろ。
「恥ずかしいから……あんまり見ないでよね……」
少しずつ下ろされていくフリフリのスカート。腰回りの肌が徐々に曝け出されていき、何やら紐が蝶々結びされている部分が露見する。
(うぉぉぉぉっっ! 紐パンだよ! 魔王もひっくり返るよ!)
そして、紫色のいやらし過ぎる下着姿を完全に曝け出してしまった。黒のタイツも相まってエロさが極まっている。
(ぐっ、これは強烈だ。想像の遥か上をいっている)
エレナは両手で必死に隠そうとするが、前後左右を同時にフォローするのは難しい。
(エレナってこんな魅惑的なお尻してるのか。外からじゃわからなかったぜ)
「前の方はあんまジロジロ見ないでよ……恥ずかしいじゃない……」
浮遊中は遠目だったからわからなかったが、本当にギリギリのラインを責めている。
魔王と男を籠絡する気しかないんだろう。
そんなどうしようもない魔女に対して、少しだけ臆してしまった俺は言う。
「エレナさん。誰に見せるつもりなの、そのパンツ……髪の毛がはみ出しそうなんですが……」
「うぅっ……これは……違う……うわぁぁぁん……ぐすッ……っっ」
———————— 閉廷。
泣き出してしまったので解除してあげた。俺に泣きじゃくる子供をいたぶる趣味はない。次は向こうからすり寄ってくることを期待しよう。
わかったこと————意外とムチムチしていた。
「エレナ! 気分はどうだ?」
「ぐすっ……アンタはどスケベで変態野郎だけど……案外見られるのは嫌じゃなかったわ……」
—————— 魔王軍幹部、撃退完了。
【 エレナ 】
【 親密度 MAX 】
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